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第92回 道 -目的-

「孫子」では、勝利するためには5つの条件を確認するよう説いています。
それが、「道」、「天」、「地」、「将」、「法」です。
これらは、今でいうところのタスクと考えて良いでしょう。
「孫子」は、このタスクを重要度が高い順に並べています。
そこで最上位に来ているのが、「道」です。

「道とは、民をして上と意を同うし、これと死すべくこれと生くべくして、危わざらしむるなり。」と説明されています。
つまり、「道」の意味は、国民全員が、為政者と考え方を同じにして、死んでもやり遂げようと思い、疑わないようにすること、ということです。

- そういう意味では、第二次世界大戦時の日本の為政者たちは優秀だったんだ・・・ -

多くの国民が自らの命を投げ出したのですから、「孫子」の「道」的には成功だったのでしょう。
但し、負けてしまってますから、総合的には無能の極みです。
「道」はあくまで勝つための条件、手段なのですから、目的が達成できなければ意味がありません。
だから「孫子」は、「risk management」を確実に行うには、目的の明確化と周知させることが必要だと書いています。

例えば、簡単な例として、会社での地震対策を考えてみましょう。
社長が、全社を挙げて地震対策に取り組もうと号令をかけている時に、従わない人たちがいます。
彼らが単にヤル気が無いだけなら、強制的に従わせるのも一手です。
ところが、彼らには彼らなりの言い分があった場合は、話が別です。

それこそ、倉庫に雨漏りがしていて、それを直さなければ早いうちに倉庫の中の商品に被害が出る。
だから地震よりも、雨漏り対策をする方を優先するべきだと・・・・。

また、地震の対策に費やすお金があるなら、生活苦なので先ずは給与を上げて欲しいと・・・・。

実は、このようなことは良くあるのです。
地震などの大きな災害の発生確率は、高くありません。
ですから、より発生確率が高い、身近な小さな問題の方に注力して欲しいという意見です。

特に戦争などと言う人類史上で最も愚かな行為に、いつの時代の人たちも進んで協力しようとは考えません。
協力しようと考える人たちは、単に自分以外を犠牲にして、自分の欲望を満たそうと考える人たちです。

さて、そんな戦争でも、相手から攻められれば戦う外ありません。
しかし、攻められると言うことは、自国の領内が焦土と化し、自国民が虐殺されることを意味しています。
だから、攻められる前に攻めて、敵国領内で戦うことこそが最上の作戦だという考えが成り立って来る訳です。
ただ、攻められる前に攻めるのは、国民たちがなかなか理解してくれません。
ですから、戦争と言う「risk management」をする為には、「道」が最上位の条件となってくるのです。

さて、これを投資で考えると、「目的の明確化」です。
「投資で稼ぐ」ことが目的だと考えている人は、まだまだ曖昧です。
「投資で稼ぐ」だけでは不充分で、「投資でどう稼ぐ」かまで考えなければなりません。

まずは、「稼ぐ」の意味です。
簡単に言えば、「年間でどの程度の利ザヤを稼ぐ」かです。
種銭の5%なのか、10%なのか、15%なのか、その目標とする利回りです。

次に、利益を得るには、「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」があります。
「キャピタルゲイン」なら、成長銘柄中心に選ぶ必要があります。
「インカムゲイン」なら、高配当や好優待銘柄中心に選ぶ必要があります。

「キャピタルゲイン」を選んだとして「長期投資」と「短期投資」の違いがあります。
「長期投資」を選べば、事業拡大が期待できる銘柄中心に選ぶ必要があります。
「短期投資」を選べば、理想買いし易い銘柄中心に選ぶ必要があります。

更に、本当に投資で稼ぎたいのかということです。
多いのは、単に仕事を辞めたいから不労所得を得たいと考えている人です。
このような人たちは、なかなか成功しません。
それは、仕事を辞めたいのが目的であって、「投資で稼ぐ」ことは目的ではなく、手段だからです。
この裏には、仕事を辞めるためのお金が手に入るなら、別に投資で無くても構わないという考えがあります。
そうなると、投資で必要な選択が曖昧になり、つい楽な方に流れてしまい、しっかりとした「稼ぐ力」が身につかないからです。

本気で投資だけで生きて行くことを目的とするなら、もっと突き詰めて考えないとだめです。
それこそ、円形脱毛症になる、血尿が出る、くらいまで真剣にならないとダメでしょう。
その為には、一度大損してみるのも良いのではないかと、私は本気で考えています。

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