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【#読書感想文】「地下アイドルとのつきあいかた」を読んで、自分のオタ活と向き合ってみた

異常か、異常じゃないかくらいは、自分で決めさせてほしい。

地下アイドルオタクのかべのおくです。


大型連休に読んだ本の読書感想文を書いてみます。とはいえ普通の本じゃつまらないので、なんなら「noteで感想話せそうな本無いかな〜」と当てに行ったまであります。

「地下アイドルとのつきあいかた」は、アイドルの書評でありながらも、地下アイドル、しかもその人間関係に焦点をあてた売る気があるのかないのか分からない作品です。2023年3月31日発売の新刊でKindle版はなく、しばらく紙の本と行動をともにすることになりました。そこまでさせられたんだから、これはちゃんと感想を話さねば、と。


本の内容

まずは、この本の内容を軽く紹介します。ちなみに、本の内容はこちらの記事で公開されているものです。ただ、結果的にそれを知ってても本として持っておく価値はあるように思いました。


概要

著者のロマン優光さんは、バンドマンでありながらアイドルオタク。そんな著者が2010年〜現在付近までの地下アイドルオタク現場でのリアルを語る本。

メディアで取り上げられる「画」としてのオタクではない多様なオタク達、中でもアイドルとの共犯関係すら感じる、地下アイドルのリアルな「現場」を描いた本です。


現場ベースの色濃い体験談は、オタクとしても興味深いものばかりです。前書きを読んだ途端に、「あ、この人はちゃんとしたオタクですわ。しかもDDですわ。」と分かります。そうしてそれらの体験に立脚した、著者なりの視点や分類も興味深いものでした。

正直、どんな地下アイドルオタクにとっても、何かしらの学びがあるんじゃないかなと思います。


各章まとめ

1章 アイドルとの出会いかた

〇地下アイドルオタクの敷居は低い・・・好みのアイドルを見つけるには、「アイドル 初恋サイダー (地域名)」などでYouTube検索

〇オタクはどうやって地下にたどりつくのか・・・距離の近さ、成功体験、ヒエラルキー

〇アイドルはなぜ地下を選んだのか・・・売れるための過程、地下アイドル現場での活動がアイデンティティー、自己表現


2章 オタク同士のつきあいかた

〇地下アイドル現場のリアル・・・距離感、オタ活費用、高齢化、女オタク、グッズ価格

〇オタク社会の行動原理・・・TO、生誕マウンティング、対バン、純化された人間関係

〇オタク同士の出会いと交流・・・
ライブ頻度、グッズ交換、ライブの興奮、親しくはないが心地いい


3章 アイドルとの触れあいかた

〇「接触」のリアル・・・暗黙の了解を踏まえたロールプレイ、共犯性を帯びた悪ふざけ、普通の「好き」とアイドルに対する「好き」

〇接触を楽しめないオタクたち・・・自己愛型と地位優先型

〇ひとりよがりな「愛情」が与える苦痛・・・愛すべき奇人と嫌われるオタク、オタクのホモソーシャルとアイドル


4章 アイドルの作りかた

〇運営になるオタクたち・・・アイドル運営の種類(芸能事務所系、ミュージシャン・クリエイター系、アイドルオタク上がり系)、オタク時代のこだわりと運営スタイル

〇運営とオタ活の両立は可能か・・・オタクや他のグループとの距離感を間違えやすい、オタ活と運営のトレードオフ

〇イベンターを目指すオタク・・・オタク心とイベントのオリジナリティー


5章 アイドルとの離れかた

〇オタクの他界、アイドルとの別れ・・・「他界」と「オタ卒」の違い、オタ卒できない磁力

〇コロナ禍があぶりだしたオタクの業・・・物理的理由(やむを得ない、現場スタイルの変化、現場自体の消失)、内的要因(気づいてしまったから)

〇現場で通じあうことでしか成立しない関係・・・アイドルであることの責務、オタクとアイドルはルパンとクラリス、「場」の記憶


感想

「地下アイドル」の人間関係が好き

僕がこういったオタク論評を読む目的は、オタクとしての自分を客観視するためです。「地下アイドルとのつきあいかた」はオタクの入門書にもなりうるかもしれませんが、ある程度経験を積んだオタクが自分のオタ活を見つめ直したり、新たな視点を獲得するのにも有効と思います。特に気になったのは「2章 オタク同士の付き合いかた」と「3章 アイドルとの触れあいかた」です。


まずは、オタク同士の付き合いかたについてです。地下アイドルオタクの不思議なところは、身分も年齢も異なる人間が、同じアイドルが好きというだけで週に何度も現場で顔を合わせ、関係性を構築していることです。これを著者は「純化された空間」と呼んでいます。

オタクは推しメンを応援するため、ライブを盛り上げたり、チェキを積んだり、時にはレンタカーに乗り合わせて遠征先に向かったりもします。しかしオタクが同じ推しメンを応援する理由は様々ですし、それに触れることはめったにありません。ただ「推しがいる場所に行きたい」という意志だけで成立する関係性なのです。

僕が無意識に求めるのはこんな純化された空間なのですが、現実はそうもいきません。見たくもないグループの最前を張ったり、ライブ中も隣のオタクの顔色ばかりを気にして、目立つためだけに奇をてらった行動をするオタク達は、自己承認やプライドのためだけに一緒にいるように見て取れます。それはそれでいいんですが、そのダシにされて、全然自分たちを見て貰えないアイドル達は可哀想にも感じます。

しかしそれらを含めたカオスが地下アイドル現場であり、あるがままなのです。むしろみんなが同じ方向を向いている現場に行くと、彼らの内輪ノリすらも恋しくなってしまうこともあります。結局、僕の中にも厄介オタクの精神は居着いていて、普段は受容していなくとも心のどこかで認めているんだと思います。



次にアイドルとの触れあいかたについてです。著者は地下アイドル現場での接触について、「アイドルとオタクはロールプレイを行っている」と語っています。確かに僕自身も、アイドルとの接触の時には生身の自分ではなく、オタクの自分という役割を演じている気がします。もちろんその役柄は接触するアイドルによって異なっていて、新しいアイドルと話しに行く時もレパートリーの中から一番合いそうなものを選んでいる感覚があります。

たとえば、容姿を褒めてもらうのが好きなアイドルならずっと「可愛い」を連発するだけのロボットになっていたり、ライブやパフォーマンスを褒めて欲しいアイドルなら「この曲のここが良かった!」という評論家的な顔つきで行くことになります。とにかく話を聞いてくれる子なら、限界オタクみたいな役柄を演じることになります。

ロールプレイの利点は著者も述べている通り、アイドルとオタクの間に一線を引き、それを踏み越える危険性を下げる「安全弁」としての機能です。アイドルにもオタクにも、あまり触れてほしくないポイントは確実に存在します。たとえば「アイドルはそのオタクのことを人間としてどう見ているのか」、「オタクがDDの場合、そのアイドルの優先順位はどれくらいなのか」は聞きにくいポイントでしょう。

だからこそ、オタクもアイドルも距離感を保つ努力が求められます。とくにオタクにおいては、「どれくらいの頻度でライブに行くのか」「何枚くらいチェキを積むのか」などを見極めて、自分と推しメンの距離感には注意を払う必要があると考えられます。


僕は、こんなオタクとアイドルの取り繕った不健全な関係、そしてオタク同士の純化されすぎた関係も含めて、「地下アイドル」によって紡がれる人間関係が好きなんじゃないかなと思います。


「かべのおく」としてnoteを書く理由

普段、僕がこうしてnoteを書くのは、オタクをする中で時が経てば忘れ去られてしまう思いを残しておくためです。今回「地下アイドルとのつきあいかた」を読んで、その思いを新たにしました。

この本はあくまで著者の経験談とはいえ、地下アイドルシーンのあらゆる局面を網羅しているように感じました。地下アイドルに関する論評をしたいなら一度は読んで見るといいでしょう。しかし、アイドルの分類をしたり業界のことを語るのなら、普通のオタクはかないっこありません。実際、こんなにちゃんとした本が出ているのですから。


ちゃんとした本によって詳しい情報はいくらでも手に入れられる中、普通のオタクがnoteで出来ることは何なのか。それは一人称視点で経験を語ることであるとあると考えています。つまり「どんなアイドルを、どう応援して、どう感じたか」ということです。それがどんなにたわいないものだとしても、そこに含まれているドラマを世界は待ちわびています。それが「好き」だと発信することが、同じ思いを持つ人に勇気と希望を与えるからです。ときには、読み返した時の自分自身をも奮い立たせます。

そのために僕は「かべのおく」というもう一つの人格をnoteに飼いならしています。リアルな人間ではなくてオンライン上に存在する、自分の中にあるオタクとしての思いを語る人格として。リアルとオンラインの人格を分けているのは、オタク以外の要素にオタクの要素が影響されたくない(もしくはその影響をも自分で制御したい)と考えているからです。


というわけで、これからも特に今までと変わることはないんですけど、

  • ときどき考えたことをnoteに載せる

  • ライブレポも載せる

  • 季節もの、企画ものにも乗っかってみる

みたいなところを基軸に、自分の気が向くままにnoteを書いていきたいと思います。そういった、色んな形で「好き」を発信できるのがnoteのいいところだと思っているので。


おわりに

まとめます。

オタクである以前に、人間なわけで。

以上です。

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