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#2 コーヒーに麦茶をブチ込まないたった1つの冴えたやり方
僕は発達障害という診断を受けていて、発達に関する障害ってなんだろうよく分からないなぁと思っていたのだけれど、簡単に言うと注意力や集中力に関する問題、あと他にも色々あって人生がやり辛いということらしい。
そう言えば、と思い当たったのは、あの不味い飲み物のこと。
僕は家でよくインスタントコーヒーを飲むのだけれど、マグカップに粉末の茶色い粉・砂糖・お湯、そして最後にミルクを多めに注ぐ。
この最後の過程にアクシデントが発生しがちで、具体的に言えば麦茶がブチ込まれる。
何故、かような出来事が発生するのか僕は色々と考えてみた。ただミルクを混ぜて飲みたいだけだというのに、どうして麦茶が我先にと飛び込んでくるのか。
ちょっと自己主張が激し過ぎませんか。もうちょい控えめにできませんか。そう思考を深めていたのだけれど、どうもそれは麦茶サイドの責任ではなく、僕の注意力に起因しているらしい。
夏の暑い日、コーヒーに最後の仕上げを施すべく冷蔵庫を開けると、真っ先に目に飛び込んでくる、汗をかいた透明なボトルを並々と満たす茶色い液体。
すると次の瞬間、不思議なことに僕の右手が流れるような動きで麦茶をマグカップにポコポコと注いでいるの。
己が所業に呆然と立ち尽くし、どうして僕はいつもこうなんだ。嗚呼、已んぬる哉。窓の外は黒々とした雲に覆われて、今にも降り出しそうな空模様が広がっている。
僕はこれからも、この悲惨な代物を製造しつづけるのだろう。望まれずして誕生する悲しき有機物を前に、僕は諦めにも似た感情に支配されていた。
と、思い込んでいたのだけれど。
あるときを境に、僕はこの飲み物を作らなくなったの。
本当にいつの間にか「あれ? そう言えば最近は麦茶コーヒー飲んでないな」みたいな。
キッカケはTwitterのスペース機能でみんなときゃっきゃ遊んでいるとき。
発達障害に起因するやらかし体験、失敗談などを当事者のみんなと面白おかしく話していたのだけれど、そこで僕は麦茶コーヒーのお話を聞いてもらった。
みんながドン引きしていたのは気のせいだと思うのだけれど、どうもその翌日から、僕はコーヒーに麦茶をブチ込まなくなった。
考えてみるに、アウトプットして聞いてもらったことにより、僕の脳内で「コーヒーに麦茶ブチ込み」が強く記憶として残ったのではないか。
冷蔵庫を開けたときに無意識下でブレーキが働いて、目的の白い液体をつかみ取ることに成功しているのではないか。
人に聞いてもらうことそれ自体が、僕にとっての手助けになっていたのだと、それまでには無かった発想で。
おかげさまであの日以降、僕はコーヒーに牛乳を入れる日々を過ごせている。時々、賞味期限が切れていることもあるけれど、それはまたどこかで聞いてもらいたい。
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