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2015.7.18 「何でもいいのですよ。」

 退院が決まった。もとより離れて暮らす私がひとりで介護できるわけがない。あらゆる在宅サービスを利用して母を支えるチームを作り、乗り切っていこうと考えていた。すでにケアマネジャーとは連絡を取り合い、24時間の看護、介護体制を整える準備を進めていた。

 なかでも食事が療養の要だと思った。食事で体力を回復させることを期待している母、そしていずれ食欲が低下していく母にどんな食事を用意すれば良いのか想像もつかない。

 早速、インターネットで本を何冊か見つくろうのと同時に、病棟の看護師に聞いてみた。「食事はどんなものを用意したらいいですか。」すると、あっけらかんと「何でもいいのですよ。病棟での食事も制限していませんし。」と言う。

 余命2ヶ月の胃がんの患者の食事が「何でもいい」ってどういうことだろう。昨日美味しいと食べたプリンを今日は食べられなくなっているというのに。その意味をいずれ実感していくのだが、この時は混乱するばかりだった。

 その日まで54日。