2015.7.21 「食べられていますか」

 自宅で過ごす母を支える体制を整えるには、病棟からの情報では足りなかった。いまどうしているかではなくて、どんな能力がどの程度のスピードで落ちていくのか、そのことで何が起き、どんな準備が必要なのかを知りたかった。

 再び、がん相談窓口に向かった。専門看護師に「亡くなる日まで、食事と排泄の能力がどう落ちていくのか知りたいのです。」と聞いた。スピードは人によるが、能力は段階的に落ちていき、その都度、できることを探るしかないと言われた。これは大変だ、と思った。ケアマネジャーやヘルパーに丸投げをせずに、私自身がその変化を把握し対応を指示しなければ、と。

 私が抱えたプレッシャーを感じたのか、ふいに看護師さんが「娘さん、ご飯食べられていますか」と言った。母の食事のことを相談したのに、自分の心配をされて、思わず苦笑いした。

この頃の私は、昼食をとる時間もないほど様々なことに追われていた。時々にかけられるこうした優しさに、どれだけ救われたかわからない。

その日まで、51日。