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ダミアン・ハースト展

『ダミアン・ハースト 桜』の印象

六本木の国立新美術館で5月23日まで開催されていた『ダミアン・ハースト 桜』展を訪れた。

引用:https://www.cartier.jp/

正直な感想は、「流行りそう」「映えそう」というイメージだった。

決して否定的な意味ではなく、色彩豊かで壮大な、見ていて気分も明るくなるような作品ばかりで、「コロナ禍で閉塞感を抱いていた多くの人々に絵画表現の魅力を存分に楽しんでいただける機会になれば」という主催側の意図が上手く表れていたし、個人的にも、ピンクをベースにいろいろな色を乗せたこの色彩感覚はとても好きなものだった。

また、同じように見える作品にも、それぞれにテーマが設定されており、とても興味深い展示だった。

ただ、客層も若い人が多く、なんとなく大衆的で、ダミアン・ハーストという人の本来の作品とは違うような印象を強く感じた。

そもそもダミアン・ハーストとは

ダミアン・ハーストは、イギリス生まれの現代アート作家であり、本物のサメや牛をホルマリン漬けにして保存したり、蝶やハエの死骸を使うなど、かなり尖った作品で知られている。

引用:https://damienhirst.com/

一方で、今回の「桜」に似た、「Spot Painting」というシリーズのように、カラフルでかわいらしい印象の作品もある。

引用:https://damienhirst.com/

今回の桜は、この「完璧なドット」を描き続けたのち、彼が当初描いていた「滴るドット」に回帰した際の作品である。
桜のドットは、きれいな円ではなく、壁に立てかけたキャンバスに絵の具を投げつけるようにして描いていおり、生命力を感じる作品に仕上がっている。

今回なぜ流行ったか

本展覧会の客層は、美術館には珍しく、若者が多いという印象を受けた。
これは、SNSやインフルエンサーにより広まり特に若者に非常に人気になったからだろう。

その理由として、以下2点が有ると考える。
・カルティエという名前
・「映え」

まず、本展覧会はカルティエ現代美術財団のサポートにより開催されたものだが、ハイブランドの1つである「カルティエ」により紹介されていたというのが、宣伝効果として大きいように思える。
実際に、私が一緒に展覧会を訪れた友人も、カルティエという名前に惹かれて知ったようだ。

引用:https://www.cartier.jp/

次に「映え」という概念。近年、特に若者の注目を集めるのはもっぱら「映え」るものになっているが、本展覧会は特にこの概念に一致するものだろう。
現に多くのインフルエンサーに紹介されているが、カラフルな色彩感覚、壮大なスケールの絵というものも、若者を惹きつける要素だったのだろう。

実際に私自身もSNSで話題になっているのを見て、カラフルでまさに「映えそうな」この展示に興味を持ち、訪れるに至った。

最後に

いずれにしても本展覧会は、私自身、見ていて明るく心地よい気分になり、季節的にもコロナ禍に疲れてきた人々の心にも、タイミングよくそして心地よく響くものになっていたと感じる。

また今回の展示は、合計107点からなる「桜」シリーズのうち24点を集めたものだったが、その他の作品もいつか見てみたいと思っている。
さらに、ダミアン・ハーストという作家の他の作品、特に絵画ではなく動物やをモチーフにしたメッセージ性の強い作品についても、いつか生で見てみたいと興味を持つ機会となった。



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