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最高の笑顔で終わらせてやる


工藤祐次郎の弾き語りライブに行った。

DJイベントの喫煙所で知り合ったお兄さんが
働いているLateral


行く前に考えたこれ歌ってくれたらアツい3曲のうちの2曲『リンドウ』や『葬儀屋の娘』は早いうちに聴くことができ、残りは『最高の別れ!』だけ。最後の曲でした、と一度幕引き、アンコールで出てきた後『男はつらいよ』のテーマソングを歌ってくれた。両親が『男はつらいよ』のファンで家で日常的に流れていた。
妙に刺さってしまい、ああもう大満足だと思った矢先、「この曲でお別れしようと思います」と低い音がドゥンドゥンドゥンドゥンと響き出した。


『最高の別れ!』だ。


解釈はまだ落ち着いていない。
2人が事実別れる日なのか、どんな2人も別れに向かって歩いているという話なのか、どちらにも綺麗に受け取れて考えても結論は出ない。今から別れる相手に「明日台風がくるんだってさ」なんて明日の話をするだろうかと考えると、全然言うんだよなと思う。別れの時ってむしろ意識してなぞるように当たり前を演出してしまうよね。
振られることは勿論多々あったが、別れるとなるとそもそも付き合えるまでがとても大変なので片手で数えられるほどしか経験がない。そしてその全てが相手を好きなままお別れすることになってしまっている。
好きなまま別れて、会わなくなって考えないようにしてようやく気持ちが消えていって、また恋愛をするというループ。そのループに2年かかったこともあるし、1カ月で済んだこともある。この期間は相手が愛してくれていた期間と大体イコールになっているというのが、わたしの出した結論だ。

✳︎

別れの瞬間にかっこつけてしまうという癖がある。
かっこつけてしまうというとどういうのを想像されるかわからないが、ありえないタイミングで告げられた別れにごねず理由も聞かず一つ返事したり、好意の減退を察して追わなかったりと、要するに不必要に刺し刺されるのを怖がったのだ。いままで別れで揉めたことがない。すんなり手放すことでしかその人のためになれなかった日のことを思うと、いつまでも胸がぎゅっとなる。
でも、同情する必要はない。揉めないというのは会話ができていなかったということだ。諦めたということだ。会話を諦めたものが良好な人間関係を得られるわけがない。と常々思っている。その人の記憶の中のわたしを綺麗に保ちたいと願って、いいよ気にしないよって別れた方がかっこよくてイケてると思ってしまっている。たったいま同じ選択を迫られても同じようにすると思う。そんなやつ考えてもどうしようもない。

最高の別れって、どんな別れなんだろう。一度は見てみたい。

嫌いになってから別れる方がきっと気持ちは楽だけど、一度好きになった人を嫌いになることを果たして最高の一部として扱っていいのだろうか。一度好きになってくれた人がじぶんのことをどうでもよくなるのはこちら側としてはどうしようもないにせよ、じぶん自身の心の初動はじぶん自身に嘘がつけないから、その上に嘘を被せて無かったことにしていくしかなくなる。

曲の中のふたりみたいに海を見に行くまでの道泣きながら歩いていくように別れられたら、海なんて見れなくても最高の別れかもしれない。気づかないふりをして、進んでいけばいい。

✳︎

この曲を聴いているとふたりを、永遠はあるよ、そのまま行きなよ、と背中を押したくなる。こういう曲は他にも何曲かあり、きのこ帝国のTelepathy/Overdriveとかね、踊ってばかりの国のBoyとかも。国多いな。七尾旅人のサーカスナイトとかは「今夜だけ」なのにプレイリストインだから、ここでいう「永遠」は「永遠である」じゃなくて「永遠を願う」「永遠を信じられる」だ。ね。実際は永遠なんてないんだし。

永遠についてのプレイリストを作ろうと思って数時間、まとめる力がなくなってしまったことに気づいた。何を入れていいのかさっぱりわからない。ひゃっほいって永遠たくさん感じてるはずなのに。力っていうのは、発想力、集中力。曲に対して刹那に感じた永遠を次の瞬間覚えていないし、実際は記憶にあるはずのものも単純に出てこない。プレイリストなら入れるだけなのでまだいいが、文章にするとなるとトピックが出てきたところでその間を紡ぐことができない。そうして箇条書きが増える。書きたいことがあっても、短文をいくつか打って、だからなんだというのだとそこから筆が進まない。
わたしが社長で普段から選択の連続でプライベートでは愛人と赤ちゃんプレイに嗜んでいるのなら辻褄が合うが、そうではない。そうでありたかったと涙を流している。選択した後のものをどう始末するか、どう終わった風に見せるか、この文章をこの人生をどう最高の別れに持っていくか、どうしたら最高の別れをせずに済むか、プライベートではなるべく誠実でありたいと、そういうことを考えている。


「かんの!ありがとー」と
アヒルボートが言っている


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