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「断捨離無惨」

一度手に取ったものを
放り出すことなんて
いくらでもあるだろう

思ったのと違ってた、とか
もういらなくなった、とか
飽きてしまったから、とか

確かにそうして
きっぱりと処分できたなら
すっきり生きられるのかもしれない


でも考えてしまうんだ
もう必要ないと知らされもせず
呆気なく捨てられてしまう哀しさを

気にしてないから大丈夫ですよ、と
普通の顔で笑ってみせた後で
そっと目を伏せる

イラナイモノになった寂しさを
気づかれないように
悟られないように


わたしだって捨てている
何も捨てないままで
生きていくことなんてできない

捨てたり捨てられたりしながら
みんな生きている
選ばれた中に入ったり入らなかったり

それなのに
何度繰り返しても
どうしても慣れはしない


イラナイ、と言われて
気にしてないから大丈夫ですよ、と
普通の顔で笑ってみせる

目を伏せるところは
やっぱり見られたくない

これは最後のプライドだろうか

それとも

そこに残されるものの
ささやかな優しさなんだろうか


【詩集】「黄昏月幻想」つきの より

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