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ケイスリー代表の幸地です <第1回:ソーシャル・インパクト・ボンドとの衝撃的な出会い>

ケイスリー代表の幸地正樹です。2016年、35歳の時にケイスリーを創業しました。沖縄県で生まれ育ち、大学から東京に出ていましたが、昨年、新型コロナをきっかけに沖縄に戻り、現在は海の近くで妻と2人の子供と暮らしています。

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これから5回にわたって、私がなぜ創業に至ったのか、そしてどんなことを考えて経営してきたのかをお話したいと思います。

まず、こちらが私の略歴です。

1981年(0歳)沖縄県那覇市に4人兄妹の次男として生まれる。
2000年(19歳)東洋大学商学部入学。沖縄を出て、東京で一人暮らしを始める。
2004年(23歳)現リクルートジョブズ入社。法人向けに中途採用の営業をする。
2007年(26歳)現 PwCコンサルティング入社。行政専門のコンサルタントとなる。
2014年(35歳)ケイスリーを創業。
2020年(39歳)1.9億円の資金調達。沖縄県読谷村へ移住。


きっかけは、一本の動画だった

創業の引き金となったのは、2014年、33歳の時に見た1本の動画でした。

当時、私は大手コンサルティング会社で行政コンサルタントとして働いていました。社内で昇進するには、仕事ぶりで評価されることに加え、英語テストで一定のスコアをとることが必要だったのですが、英語が苦手な私は、それがネックとなっていました。そこで、いろいろ試した末に、TED動画を使った学習に行き着きました。

そこで一本の動画に出会います。トビー・エクルズの「投資で社会変革を(Invest in social change)」と題した、たった10分の動画。私は、その動画で始めて「ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)」というものを知り、強い衝撃を受けたのです。


ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)とは

SIB とは、行政と民間との新しい契約のあり方です。特徴は、(1)行政からの支払いが、民間が行う事業の「結果」ではなく「成果」に連動すること、(2)成果が出るまでの事業資金は、行政ではなく民間金融機関などが資金提供すること、の2つ。

例えば、がんの早期発見に有効な「がん検診」の受診を住民に促す事業の場合。通常であれば、委託した民間企業が住民にハガキを「何通送ったか」によって、行政から企業へと支払いが行われます。それに対してSIBでは、ハガキを何通送ったかではなく、「何人が検診を受診したか」という、いわば「成果」によって支払いが決まります。「成果」が出るには通常1年以上かかるため、企業は、必要に応じて、事業資金を投資家から調達します。

この仕組みは、当時の私が感じていた問題を一気に解消してくれるのではないか。そう強く感じたのです。


自分は、何のために仕事をしているのか

当時、私は行政向けコンサルティング事業のプロジェクト・マネージャーを務めていました。主には、ITを使って、行政の様々な業務やシステムを効率化し、全体最適が図られるようにしていく仕事です。

求められるのは、時間の削減と、コストの削減。ほぼ、この2点でした。

業務の無駄を省くことで、時間は削減される。事業者に発注する費用を削ることで、コストは削減される。私は、それによって生み出された時間や資金が、市民にとってより意味のあることに使われること、自分がそれに貢献できることを期待していたのです。

しかし実際には、どうしても現場は自分たちの業務の面倒を解消することに意識が向いてしまい、浮いた時間をどうより良い行政サービスのために使えるか、まで思いが及ぶことは少ない。事業者の見積りを下げることに懸命になってしまい、それをどう使うと市民のより良い生活につながるのか、という議論に行き着くことは少ない。予算を切り詰められた事業者は疲弊をしていく。そして、自分たちの利益を守ることに固執していく。

それぞれが自分のことだけを考えるようになり、市民を向かなくなってしまう。そんな状況で、行政サービスの改善なんて実現できないのではないか?一体、自分は誰のために、何のために仕事をしているか?

そんな状況にもやもやを感じ始め、次第に私は、仕事で抱えるそのストレスを解消するかのように趣味に熱中するようになっていきました。友人とスウェーデンからカヤックを輸入しスカイツリーやレインボーブリッジを周遊したり、料理に凝り始めて週末に出張シェフとして白金の邸宅等でコース料理を提供したり、泳げないので泳げるようになろうとトライアスロンを目指して完走したり。一つ一つ、とことん突き詰めました。

SIBに出会ったのは、目標にしていたトライアスロン完走を果たし、そうした趣味にもちょうど一区切りついたタイミングでした。


湧き上がる使命感

この仕組みは、いかに時間やコストを削減するか、だけではなく、いかに「成果」を生み出すのかに意識を向けさせる。行政も民間も投資家も、自分たちのことだけではなく、みなが社会にとっての成果を追うようになる。より良い社会に向かって協働するようになる。私は、SIBに大きな可能性を感じました。

SIBについて調べてみると、まだ日本では導入されておらず、目立った動きもないことがわかりました。これを日本に持ち込めば、私がもやもやを抱いている今の構造を、根本的に変えることができるかもしれない。

私は、自分が「行政コンサルタント」として本当にやるべきことを見出した気がしました。仕事から離れつつあった情熱が、「日本にSIBを導入したい」という気持ちとともに蘇り、使命感のようなものがふつふつと湧き上がってきたのです。


こうして、一本の動画を通じたSIBとの衝撃的な出会いが、私のその後を大きく変えることになりました。次回は、SIBに駆り立てられるように動き始めた私が、どのようにケイスリー創業へと至ったのか、それをお話していきます。


(話:ケイスリー 幸地正樹、 文:ケイスリー 今尾江美子)

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