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何故、メタバースはミュージアム的なのか?

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「メタバースは掃除をしなくていいところが好き」と言った人がいました 😊
至言だと思います。
そこは時間が止まった世界であり、「この世」ではありません。
ただし、「あの世」かと言えば、死ぬわけではないので「あの世」でもありません。

メタバースは「あの世」「この世」の間にある感じです。


かつて、ギリシャの人たちは「あの世」「この世」との間に、レテの河とムネモシュネの河が流れていると考えました。
レテは忘却の神様、ムネモシュネは記憶の女神です。

レテの河の水を飲んだ人は記憶をなくし、ムネモシュネの河の水を飲んだ人は知識を維持できます。
そのため、ムネモシュネは学問の神様とみなされるようにもなりました。

そして、わたしはメタバース空間を「ムネモシュネの河に浮かぶ小島」だと考えています。


この世にいる人間は、メタバースの世界ではアバターになって活動します。
また、あの世までいくと、姿を消して(あるいは半透明になって 😊)霊魂になります。


上図からの派生ですが、この世にいる人から見ると、メタバースもあの世も河をへだてた対岸に位置します。
もっと言えば、多少見え方が違っても、メタバースはこの世からは「あの世」的に見えるわけです。

苦手意識を持つ人がいても、不思議ではありません。


ところで、人間と人間を模してつくられた物の間には、『不気味の谷』と呼ばれる溝が存在します。
人間のように見えるけれど、なんだかちょっと気持ち悪い感じ 😊
ロボットや3D映像、アバターなどに対して使われることの多い用語です。

その不気味の谷と同じような河が、リアルとメタバースの間に存在していると思ってもらうといいでしょう。
わたしは、それを『ムネモシュネの河=記憶の神が宿る場所』だと考えているわけです。


メタバースの世界に来てもらおうとするならば、そのムネモシュネの河を超えてもらわなければなりません。
が、リアルの側から見ると、メタバースから手招きする『アバター』は、あの世に呼び寄せようとする『霊魂』に重なって感じられます。
別の意味で、不気味なんですよね 😃


つまり、メタバース空間に大規模商業施設などをつくり、そこに来てもらおうとするならば、『不気味の谷/ムネモシュネの河』をわたってもらう工夫が必要なのです。
そして、それが現時点ではかなり大変なことを、先日指摘しました ▼▼▼


一方で、知らない人を集めるのではなく、知っている人を思い出すために使う時、メタバース空間は素晴らしい効果を生み出します。

ムネモシュネの河をわたり切ることなく、この世にいない人の記憶を呼び覚ます場にできるからです。

サンプルのメタバース空間「未来の葬儀場」 ▼▼▼


以上の現象は、文化史的に見れば、けして偶然ではありません。

ゴッホは言いました。
「死者を死せりと思うなかれ
 生者しょうじゃのあらん限り
 死者は生きん
 死者は生きん」

覚えていてくれる人がいる限り、その人たちは生き続けるという詩です。


そして、ミュージアムの語源は『ムーサイの館』
ムーサイとは、ムネモシュネとゼウスの間に生まれた9人の娘のことで、芸術の女神たちです。
ミュージアムは、日本でまもっぱら美術館・博物館を指しますが、そこには本来図書館もふくまれます。

メタバースが、ミュージアム文化と親和性が高い由縁です。

ただし、『メタバースへの資本投資は危険です』にも書きましたが、いきなり大資本をかけて巨大な建造物をつくるのは得策ではありません。

そもそも世界最初の美術館である大英博物館は、骨董品の一大蒐集家だったハンス・スローン氏の死後、国家に寄贈された彼のコレクションを母体としました。
つまり、あくまで出発点は個人の想いだったのです。


そして、スローン氏のコレクションにはエジプトの財宝が数多く含まれていましたが、それらのいくつかはピラミッドなどからの盗品。
つまり、もともと死者に捧げられた供物くもつだったのです。
一連の流れは、あまり褒められた活動ではありません。

そんな風に、ヨーロッパ発のミュージアム文化は死物フェティシズムぎりぎりのところに発達したのであり、その危うさは松宮秀治さんが『ミュージアムの思想』で指摘された通りです。


ですから、『ミュージアム』と言っても、何も大げさなことをイメージする必要はなく、自分の好きな物、自分の好きな人が好きだった物を飾るところから始めるのがいいと思うのです。

http://aoimachi.sakura.ne.jp/05_Class/01_Spatial/comic/ozizo_01JP.pdf

メタバースに遺品を持っていくマンガ


そうして出来上がった個人のメタバース空間(コレクション部屋)がリンクでつながれれば、人の想いの連鎖として、多様性にとんだ『ミュージアム・ネットワーク』ができあがります。

それは、Web3の理想である『分散』『自律型』空間であり、日本らしい和やかな文化施設になることでしょう。


早く行きたいなら一人で行け
遠くへ行きたいならみんなで行け

みんなで行くには進め方が大切ですね 😊




最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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もちろん、コメントも大歓迎 😃

世の中に、笑顔のあふれる人を増やしたい、と思っています。


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