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公立図書館電子化についてどう考えるか

今回も図書館について書いてみようと思います。

我々の企業でも図書館の電子化支援はぜひ行いたいなと思っています。
しかし、電子化に対しては賛否両論あるかと思いますし、様々な課題があるのも現状です。

今回は(一社)電子出版制作・流通協議会の長谷川智信さんのレポート「公共図書館における、電子図書館サービス導入の実態と課題、新型コロナウイルス感染問題による図書館の意識の変化について 」を基に、電子化に対する客観的な情報や私の電子化に対する考えをまとめていきたいと思います。
http://www.shuppan.jp/attachments/article/1178/01hasegawa.pdf

なお、今回私が言う図書館はすべて「公立図書館」であると考えていただけると幸いです。


公立図書館電子化の現状

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日本の公立図書館の電子化がどこまで進んでいるのか。まずは現状をおさえることが大切だと思っています。

結論からお伝えすると、電子書籍貸出サービスの普及は 2020 年 7 月 1 日時点で 100 の自治体が導入しており、図書館を持つ 1380 自治体からみると導入率7.2%の状態です。

一方、海外では普及がかなり進んでいます。
アメリカでは、図書購入予算全体の10%が電子書籍にあてられています。これは数年前のデータであるため、現在ではさらに電子化の傾向が進んでいることも考えられます。

東南アジアではシンガポールが電子化を推進しています。2009年に開始した電子書籍の貸し出しは当初から300万件の貸し出し数。2014年には1100万件へと貸し出し数を伸ばしています。
シンガポールの図書館全体における紙の本の利用数は3400万件であるため、電子書籍の利用者数は3分の1近くまで増加してきていることになります。

つまり、日本は電子書籍化後進国なわけです。
これがいいのか悪いのか。賛否両論あるかと思いますが、電子書籍化を考えることが急務になってきているのが現状です。
原因は、「コロナ禍」の影響です。

公立図書館もデジタル化 コロナで加速する電子書籍の貸し出し(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20210218/k00/00m/040/181000c

記事にも取り上げられているように、コロナ禍で外出自粛が叫ばれるこの頃、図書館にも行きづらい環境になってしまっています。
そんな中、電子化できていればこれまで通り本を貸し出しすることができる。そのため、電子化を真剣に検討しなければいけない状況になっているということですね。


そもそも論になりますが、図書館法には図書館の定義として、「第二条 この法律において「図書館」とは、図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーシヨン等に資することを目的とする施設で、地方公共団体、日本赤十字社又は一般社団法人若しくは一般財団法人が設置するもの(学校に附属する図書館又は図書室を除く。)をいう。」であることが規定されています。

つまり、図書を含めたその他の資料を収集することが図書館の役目になっているわけです。
その他の資料には、電子書籍ももちろん含まれます。書籍だけを揃えるのが図書館ではないのです。

電子化のデメリット

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電子化はいいことばかりではありません。まずはデメリットを整理していこうと思います。

①電子化されている書籍数が少ない

これはkindleとか持っている方だとわかるのではないでしょうか?

出版社が電子出版している書籍は、だいたい3割程度と言われています。
結果的に自分が欲しい本が残り7割に含まれるとkindleなどでは読めないということになります。
私も何度か経験あります。特にマイナーな書籍だとその傾向が強いんでしょね。

図書館だって状況は一緒です。
出版社が電子化していない書籍を手に入れることはできないので、その本を入手したい場合、通常の紙の書籍を購入することになります。

そうなると、一気に電子化に舵をきろうとしたところで、入手できない本がたくさん出てきてしまうことになります。


②図書館側の予算確保の難しさ

電子化進めましょう!となった際に、ただ電子書籍を買えばいいわけではないのは皆さんお分かりかと思います。

図書館が購入した電子書籍をいかに利用者に届けるか、そのシステムを構築しなければまったく意味がないわけです。
そしてこのシステムが安いものではありません。

図書館はこれまで通り紙の本も購入し続けながら電子化を進めなければなりません。しかし、そのためには余分に自治体等から予算をもらわなければならないわけです。

自治体の予算配算の計画は昨年度の秋頃から初めて2月頃にはほとんど決定しているというのが通常かと思います。(3月までもつれ込むこともありますけどね…)
そうしなければ年度中に予算確保を行うことは非常に難しいです。

となると、来年度の計画を早いうちに立ててしまわないといけない。これってそんなに余裕のない中で、簡単にできるものではないんですよね…

こういった作業面を除いたとしてもどんどん税収も減る中、なかなか予算確保は難しいのが現状だと思います。


③出版社と印刷に関わっている企業が儲からなくなる

これはデメリットと呼ぶべきかわかりませんが、電子化が推進されればされるほど出版社等は儲からなくなります。

紙の本のほうがよっぽど利益率が高いんですよね。それに儲からなくなるのは出版社だけではなく、印刷に関わっている企業ももちろん儲からなくなります。というより売上がゼロになるので本当に死活問題です。

こういったものはある種の利権と呼んでもいいものだと考えられます。NTTドコモが電波放射の大元おさえているのと一緒ですね。
出版社が出版しないと決めれば本は出版されることがなくなるわけですし、強大な力を持っているわけです。

今後も印刷業者も守らなければならないことを理由にして出版社は完全電子化とかはしないように思われます。となると、図書館も電子化進めるのが難しくなっていきます。

電子化のメリット

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デメリットを数点あげさせていただきましたが、私はそれを超えるメリットが電子化には存在すると思っています。

①図書館にわざわざ行かなくてもOK

これが一番大きなメリットではないかと思います。

図書館近い人は別に気にならないのかもしれませんが、遠い人にとっては本当につらいのです。ソースは私です笑

市の図書館まで車で20分ほどかかったので、到底自転車などではいけない距離にありました。(ひとつ峠越えないといけなかったですしね…)
となると、子供だけでふらっと行ったりすることはできないですし、高齢者の方で免許返上してしまった人も行くことができなくなってしまいます。

これは明らかに機会の平等に反していると思っていて、同じ税金を支払っているのに享受できる果実の量が異なるというのはよろしくないことだと思っています。

電子化できていれば、図書館に行く必要がなくなるので図書館との距離はもはや気にしなくてもいいわけです。
コロナ禍の影響もありますし、このメリットは非常に大きなものであると考えています。

②障害を持った方々にも本のすばらしさを伝えられる

これも大きなメリットのひとつです。

目が不自由な人は紙の本を読むことはできません。点字で読むという方法はあるのかもしれませんが、オーディオブックであればもっと便利ではないでしょうか。

また入院している人、車いすの人など距離の問題とは別に図書館に足を運びづらい人もたくさんいます。
そういった人たちにも機会を平等に与えられるのが電子化だと思っています。

ちょっと話は逸れますが、私はかなりリベラル的な思想の持ち主です。ですので、あまりにもコンサバティブな方や極端な右翼、左翼思想を持っている方とは仲良くなれないと思います。

特に少数の権利を大切にしたいと思っています。性的マイノリティ、障害者の方、外国人の日本国内での権利など大切にしていきたいです。
そのため、機会の平等はどんどん実現させていきたいです。(数の平等はだめですよ、これはまた別記事で語ります笑)


③本を汚してしまう、紛失リスクをなくせる

皆さんやったことありませんか?
図書館で借りてきた本なのにコーヒーこぼしちゃった!とかどこかに忘れてきて紛失してしまった!なんてこと。

意外と多いらしいのです、こういうケース。そうなると、もちろん図書館には迷惑をかけますし、他の利用者の時間も奪うことになります。

こういった紙の本だからこそ生じるものであると思っています。電子化してしまえば、デバイスが壊れてしまっても本自体が紛失してしまったりすることはありませんからね。

これは結果的に図書館の書籍管理のコスト削減にもつながっていくものであると考えています。


具体的にどのように推進していくか

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メリット、デメリットを語ってきましたが、現時点では、一気に電子化したりすることはまず不可能であると考えています。

では、具体的にどのような施策が考えられるのか。月並みではありますが、電子化するにふさわしい部分から少しずつ電子化していくことが必要です。

具体的には「旅行本」や「雑誌」の電子化です。

旅行本は情報更新が不可欠です。小説などとは違い、10年も前の旅行本の需要なんてほとんどないわけです。10年も経てばトレンドが変わりますし、ガイドブックに掲載されたお店が閉店してしまっているということもあるでしょう。
雑誌は週刊誌、月刊誌など定期的に次号が発売になるため、その度に新刊を揃えなければなりません。
つまり、情報更新を常に行わなければならないため、管理コストもかかりますし、バックナンバーの保管なども大変なわけです。

また旅行本は旅先に持っていく方が多いです。そうなるとどうしても紛失リスクなどが高まってしまう。

そこで電子化対応をしてしまえばそういった管理コストは削減できますし、旅先での紛失リスク等をなくすことができます。
そもそも雑誌の電子はかなり進められており、対応している出版社が多いため、書籍の電子化より進めやすいというメリットもあります。

私もまだまだ勉強中ではありますが、こういった取組みやすい部分から段階的に計画を立てて取り組んでいくことが必要であると考えています。

さいごに

偉そうなこと書いていますが、私もまだまだ勉強中であるため、皆さんから様々ご指摘をいただけるとうれしいです。

また我々は、
①図書館の電子化アドバイス
②司書さんの価値を高めるための取り組み
などを総合コンサルする企業を創設する予定です。
(もちろん私の専門である宇宙を利用した宇宙教育の分野の事業も図書館との合わせ技で行いたいと思っています。
詳細は以下の記事をご覧ください!
「なぜ宇宙と図書館なのか」https://note.com/k_spacebusiness/n/nd1911240d85d

これらの取り組みに興味を持っていただき一緒に何かやってみたいという方を大募集中です。

Twitterの私のアカウント、K.Kawai@宇宙と図書館ビジネス(@k_spacebusiness)にお気軽にご連絡ください。

電子化はぜひ進めていきたいというが私の考えですが、たくさんの障害を乗り越えなければならないのが現状です。
これにはたくさんの仲間が必要だと思っていますので、皆さんで人々が利用しやすい図書館を作っていければと思っています。そして本の価値ももっと高めていきたいですね。

かなり長くなってしまいましたが、今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
今後もいろんな情報、考えを発信していきたいと思います。


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