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事業者支援制度と利用現場のすれ違い

2023年1月。
政府の「全国旅行支援」事業の一環で、愛媛県内で「えひめぐりみきゃん旅割」事業が始まりました。
昨年から実施されている事業の継続ではあるものの、旅行先での消費喚起のため配付されるクーポン券の仕様に大きな変更があり、小売店の現場に不満が生じています。

昨年は、宿泊施設から旅行者に紙のクーポン券が渡され、その券をそのまま加盟店での会計時に渡すと1,000円単位の支払いに充てられるという仕様でした。
それが今年からは、宿泊施設から旅行者に紙のクーポン券が渡され、

  1. その券をそのまま加盟店での会計時に渡して1,000円単位の支払いに充てるか、

  2. 券に印刷されたQRコードをスマートフォンで読み取って券ごとの専用webページに利用開始を記録し、1,000円の残高が無くなるまで1円単位で加盟店での会計に利用するか、

どちらかを選べる仕様に変わりました。
なお 2. については、PayPay等で支払う側がQRコードを読み取る方式の決済と同様に、利用者が加盟店ごとのQRコードを読み取り、立ち上がる専用webページで支払い額を入力して加盟店側の確認の上で支払いに充てる仕様です。

仕様変更の狙いは大きく2つで、①1円単位でも利用できるようになって旅行者にとっての利便性が向上する、②QR方式での利用額については即時に事務局に情報が連携されるため換金申請手続きの手間が省ける、と説明されています。
しかし実際は、利用現場では手間が増えたことで不満が生じています。

まず、クーポン券利用の方式が複数通りになったことによる手間。
地方の小売店では会計担当者が電子決済に慣れない高齢者であることも多く、QR方式の手順を説明し対応できるようにするため加盟店側でそれなりの準備を要しました。

加えて、会計ごとの手間と、時間。
1度の会計でクーポン券を複数枚分利用する場合、QR方式では加盟店QRコードを読み取って金額を入力する作業を枚数分繰り返す利用者がほとんど (事前に合算してまとめて利用することもできるが手順が難しい) で、会計にかかる時間が長くなりました。
また、QR方式でクーポン券を利用し残額をPayPay等のスマートフォンアプリで支払う場合、同じ端末を使うためwebブラウザでクーポン券利用操作をした後に決済アプリを立ち上げて決済操作をする必要があり、端末や通信環境によっては紙方式のクーポン券利用の2倍程度時間がかかることになりました。

制度設計をした行政側は、想定する“利便性の向上”と“事務手続きの省力化”のためQR方式を推奨しています。
しかし利用現場では、新仕様の事業が始まる直前に説明を受けたときから、手間の増大を見越してQR方式を忌避していました。
加盟店に仕様案を説明して意見聴取するなど、このすれ違いを避ける手立てが仕様決定前にどうしてなされなかったのだろうかと、残念に思っています。

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