制作中のショートショートアニメの脚本
※以前、投稿したスチルの脚本です。
【タイトル】
『闇に蠢く作家』
【登場人物】
郷田(男30)小説雑誌の編集者
神宮寺 直子(女34)作家
三上 亜由美(女34)直子のマネージャー
中年男(50)乱入者
メインタイトル『闇に蠢く作家』
1.神宮寺の家・屋内・廊下
郷田(30)と亜由美(34)が話している。
亜由美「なるべく短い時間でお願いします。神宮寺は執筆中は特に神経質ですので」
郷田「大丈夫です。ご挨拶をするだけですから。神宮寺先生の担当になれて本当にうれしいですよ」
亜由美「ありがとうございます。手前に椅子がありますので、それにお掛けになってお話し下さい。あと気をつけてほしいんですが、その椅子より前には絶対に出ないようにしてください」
郷田「…っていうことですよね?前の担当者からも聞いてます。先生、ご病気か何かですか?」
亜由美「病気ではないのですが、かなり神経に障るほうですので…本当に申し訳ありません」
郷田「分かりました…、あの名刺は?」
亜由美「私が受け取っているので大丈夫です。ではどうぞ」
亜由美が促し、郷田がドアを開ける。
デスクがあり、向かい側に直子がこちらを向いて座っている。
デスクの手前に椅子が置いてある。
2.書斎
郷田が入って来る。
郷田の背後で亜由美がドアを閉める。
デスクの前まで来る郷田。
直子は身動きもせず編集者の方を見ている。
首から下は白いマントのようなぶかぶかのワンピースを着ている。
郷田「初めまして。『月間ファンタジー』で新しく神宮寺先生の担当になりました郷田と申します」
直子「どうも、神宮寺です。『月間ファンタジー』さんにはとてもお世話になっています。これから宜しくお願いしますね。どうぞお掛け下さい(機械じみた棒読みの声)」
郷田が少し当惑しつつ、椅子に座る。
郷田「あの…、僕、先生の作品のファンなんですよ。SFの枠に収まりきらない壮大さっていいますか。異次元世界の描写もまるで見て来たみたいで。人が書いたとは思えないスケールですよ」
直子「それはありがとうございます。感じたままに書いているだけなんですよ」
直子が返答するが、所々泡が吹き出すような妙な音が入る。
直子「でも、一生懸命考えるんですよ。それで…」
突然、直子の首が斜めに傾く。首の付け根が蓋のように開いていて、触手が出てきて素早く首を元に戻し引っ込む。
直子「…ちょっと神経質になりすぎて、ご迷惑をかける時もあるかもしれません」
郷田が凍り付いている。
郷田「…あの、先生…、今…」
直子「あ、気にしなくていいですよ。みんな大げさに話しているだけですから」
直子が言いながら右手を上げるが、途中で腕ごと下に落ちそうになる。腕の付け根から触手が蠢いているのが見え、腕がすくい上げられように持ち上げられ、元に戻る。
郷田「あっ…、神宮寺…先生、その…、今日はありがとうございました!」
郷田が慌てて立ち上がる。
直子「もう少し大丈夫ですけど?」
直子の首が不自然に上下に揺れている。
郷田「いえっ、今日はこれで失礼します!おっ、おじゃましました!」
3.廊下
書斎のドアが開き郷田が大慌てで出てくる。
亜由美が落ち着いて見ている。
しばらくドアの前に立ち尽くす郷田。
亜由美「終わりました?」
郷田「は…い…。あの…、あれは、いったい…」
亜由美「作家の神宮寺直子です」
郷田「でもっ…」
亜由美「外見も写真のとおりでしょ?原稿は毎回きちんと書いて送りますし。今後、何かあった時は私に連絡ください」
郷田「でも、じゃあ…、神宮寺先生は人間じゃ…」
突然、拳銃を持った中年男が廊下に現れる。
中年男「ついに見つけたぞ!もう、奴を逃がさん!」
郷田「わあっ」
亜由美「何?あなた?」
中年男「ここがあいつの居る部屋だな?よーし」
中年男がドアを開けようとする。
亜由美「ちょっと、何をするんですか!」
中年男「私にはあいつの正体が分かっているんだ!ここであいつを倒さなければ人類が、地球が全てあいつらの支配下になってしまう!どけっ!」
郷田「ええっ?」
中年男が亜由美を振り切り、ドアを開け書斎の中に入りドアを閉める。
亜由美と郷田が呆然としている。
部屋の中から銃声と何かかが床にあたる音、物を突き刺すような音が聞こえる。
亜由美が恐る々々ドアを開ける。
書斎のデスクに着いたままの直子が見える。
手前の椅子には背もたれ越しに中年男の体がへたり込むように座っているのが見えるが、首だけ百八十度振り向いて入口側を向いている。
中年男「やあ、みなさんすいません。私の誤解でした。神宮寺先生はすばらしい人ですね。お騒がせして申し訳なかったです(機械じみた棒読みの声)」
中年男の首が不自然に上下している。
直子「すっかり誤解が解けました。今、仲良くお話ししてたところですの」
直子の首も不自然に上下している。
中年男「はははは」
直子「はははは」
亜由美が静かにドアを閉める。
顔が引きつっている郷田。
郷田「これは、どういう…」
ドアが少しだけ開き、直子の顔と右手が妙な角度で出てくる。
直子「亜由美、ちょっと来てくれる?」
直子の右手が手招きするように振られるが、外れて落ちそうになる。
触手が出てきて素早くそれを戻す。
郷田「三上さん…」
亜由美「あれは作家の神宮寺直子で、その世話をして原稿を受け取るのがマネージャーの私。それでいいじゃないですか」
亜由美が部屋に入ろうとする。
郷田「三上さん…。あのう、僕が次に来る時も三上さんは…三上さんですよね?」
亜由美が少し振り向いて小さく笑う。
前を向いてドアを開ける亜由美、書斎に入りドアが閉められる。
4.エンドロール
終わり
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