見出し画像

京東の金融子会社「京東数科」が高い評価、グループの司令塔としてアント・グループに挑戦か?

ネット通販2位の京東が、AIショッピングアドバイザーを導入したという。京東は無人物流などハイテクに強い。アリババとテンセントの陰に隠れているが、京東も好調で、株価は年初から85%上昇、時価総額は1,000億ドルを突破した。これまで京東のイメージといえば、直営物流の強力さだった。それがこのところ金融部門の評価が急速に高まっている。

その中心は2012年9月設立の「京東数科」である。京東グループの投資、資産管理、金融業務、調査業務等を担当。iiMediaの中国ユニコーン企業ランキングでは12位まで上昇し、企業価値は100億ドルと推定されている。

2020年3月、米国のビジネス誌「Fast Company」は、この京東数科を、世界イノベーション企業のトップ10に選出した。AIを駆使した産業のデジタル化を、積極的に推進していることが評価された。金融、スマートシティ、農業牧畜、マーケティングなどの業界へ応用ノウハウを開発、すでに数々のソリューションを提供している。

AI技術の金融分野への応用は2014年からスタートした。現在の処理能力は当時の10~100倍に高まっている。シリコンバレーにAI実験室を設立し、世界トップの科学者や一流大学と40に上るプロジェクトで提携している。例えば独自開発の虹彩認証技術では、識別率99.8%を達成した。

同社をアリババグループに当てはめると、金融の「アント・グループ(アント・フィナンシャル改名)」、クラウドコンピューティングの「阿里雲」、研究開発機関の「達磨院」、の3社分の機能を1社で合わせ持ったような存在に見える。スケールでは大差を付けられているものの、AIインフラの蓄積が、最近改めて評価され、京東本体の株価上昇に繋がっているという。

直近の7月には、京東数科と首旅集団の戦略提携が報じられた。首旅集団は、中国最大の旅行会社の1つ。1998年設立の国有の大型企業である。傘下に「建国酒店」など有名ホテルを持っているものの、オンライン化では出遅れた。さらにオフライン中心だったため新型肺炎の影響は甚大だった。

今回の提携は、苦境に陥った首旅集団が、京東数科の最新ノウハウに、救いを求めたというのが実態に近そうだ。大型提携をまとめた京東数科は、アント・グループのように、グループの司令塔を担うのかもしれない。注目しておくべき企業である。

コスパ・テクノロジーズCEO / BtoB企業のブランディングと海外向け施策が得意なWeb制作会社 / SNS総フォロワー5万 / HP→ https://cospa-tech.com/