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中国のライブコマースに有名人続々登場、国民的英雄・鐘南山氏も一肌脱ぐ?

新型肺炎の防疫体制は、医療全体に大きな変化をもたらした。不足する医療資源が明らかとなり、投資対象として、わかりやすくなった。

ここでは別の変化について取り上げたい。それは防疫体制の指揮を執った鐘南山氏である。2003年のSARSに続き、今回も新型肺炎終息に貢献し、国民からの信頼は比類ない。1936年生まれの83歳だが、シャープな頭脳と歯切れの良い言動は健在だ。全能の院士(院士は科学技術方面の最高称号)とまで称される国民的英雄である。

鐘南山院士は4月28日、「2020年貴州刺梨(とげ梨)産業発展論壇」に出席した後、同日夜、某ネット通販の放送室を訪れ、初のライブコマースを行った。貧しい貴州省のとげ梨農家援助活動の一環である。

いつもの白いシャツに身を包んだ鐘南山院士は、当初こそぎこちなかったものの、慣れるにしたがい、当地特産のとげ梨飲料について、いつもの論理的な説明を始めた。主にビタミンCの有用性についてだったが、多くの視聴者にとって、中学高校時代の、生物の先生を思い起こさせた。

ライブ配信は1時間に満たなかったが、熱烈な議論を呼び、視聴者数は230万に達した。がんばれ、ありがとう、ごくろうさま、など多くの声が寄せられた。最終的にライブの視聴者は250万人、売上は100万元(1,520万円)だった。

飲料の生産企業は、「鐘南山基金」を通じて、貴州省紅十字(赤十字)会へ100万元分の薬品を寄付した。社会に還元したのである。

中国では、こうした有名人を起用したライブコマースを、“直播帯貨”と呼び、ネット上の流行語となっている。人気の網虹(KOL、インフルエンサー)の知名度と影響力もすさまじいが、育成するには時間と経費が必要だ。それなら最初から有名人を口説き、ライブに投入してしまおう、という流れが直播帯貨を盛り上げている。とくに4月以降の有名人たちの活躍は、すさまじい。これが、鐘南山院士が一肌脱ぐことにした、ライブコマースデビューの背景であった。

現在、アリババネット通販・淘宝直播、ショートビデオの快手、抖音(海外名TikTok)の3者を中心に激しい争いが続き、中国小売業界、最大の焦点になっている。次はどの有名人が登場するのか。興味は尽きない。


コスパ・テクノロジーズCEO / BtoB企業のブランディングと海外向け施策が得意なWeb制作会社 / SNS総フォロワー5万 / HP→ https://cospa-tech.com/