「仕事したつもり」に陥らないための月次報告書作成術 ~コールセンター管理者として~
CS(カスタマーサポート)職を続けてはや17年。僕自身、管理者としていろいろな業務に携わってきましたが、欠かせないのが月次報告書の作成です。SV(現場監督)であれば誰しも作成したことがあるでしょう。
しかし、この月次報告というのがやっかいなものでして。
なぜかというと、手間がかかる割に作成者を「仕事したつもり」にさせてしまう業務だからです。
本来であれば、事業のさらなる改善や推進に寄与するはずの月次報告ですが、実際にプラスに作用する内容が伴わない報告を目にすることも少なくないんですね。
せっかく手間暇かけて作る月次報告ですから、実のあるものにしたいじゃないですか。受け手にとって本当に必要な情報を提供できていなければ意味のない単純作業でしかないわけですからね。
ということで、今回は自戒を込めて、本当に役に立つ月次報告の作成術をまとめてみたいと思います。
データの羅列にも一定の意味を持たせる
まず、コールセンターでよく見る月次報告に盛り込まれている内容をここで列挙してみます。
あなたのセンターでは、どんな数値を報告していますか?特に太字の部分は多くの月次報告に盛り込まれていますよね。
ただ、これらのデータは、当然羅列するだけでは何の意味もありません。「だからどうした?(So what?)」と聞かれて答えられるだけの材料がなければいけません。
とはいえ、これらの数値には確実にひとつの意味があります。それはヘルスチェック機能です。
つまり、「窓口がこれまでと同様の水準のサービスを提供できているかどうか」はある程度観測することはできるわけですね。
たとえば、極端にAHT(1件あたりの平均処理時間)が伸びているとすれば、窓口としては何かよくないことが起こっているわけです。当然、資料作成者は、この真因を即答できなければいけません。
考えられる原因はいくつかあるでしょう。
…この辺は容易に想像できる事象ですね。
ただ、本当に有用なデータにしていくためにはそこだけで満足していてはいけません。もっと微妙な変化に気づく必要があります。
数字の微妙な変化に気づき、深掘りしてみる
月次報告を作成している中で管理者が陥りがちなのが、「数字だけを見てしまう」という癖です。
要は、数字に表れてきにくい微妙な兆候をしっかり捉えることができなくなってしまうわけです。
これを防ぐには、日々現場の状況をきちんと観察し、数値化できない問題も顕在化させていく意識をつねに持たなければなりません。
月が替わってから、あわててデータを見て報告書を作っているようでは手遅れなのです。ふだんから現場のスタッフと会話しながら、何が起こっているのかを掴んでおかなければいけないわけです。
そういう意味では、電話の応答率ひとつとっても、単に月間のトータルの値を年間で並べるだけでは不十分な場合があります。
ここを日別で応答率を見てみるだけで、「月曜日だけ極端に応答率が低い」→「着信が多い」または「スタッフの配置が不十分」といった状況が見えてきます。
着信が多いのであれば、本当にそれは防ぎようがないのかを検討する必要があるでしょう。土日も窓口が空いているのに月曜日に着信が多いのであれば、土日も営業していることをもっと顧客にアピールするようなWebページの構成にする必要があるかも知れません。
スタッフの配置が不十分なのであれば、シフトの配置をできる限り月曜日に厚めにする、あるいは月曜の午前中だけは管理者も総出で受電に回ることができないかを検討することもできるでしょう。さらに深掘りするのであれば、時間帯別着信数・応答率を見てみて、落ち込んでいるところだけ管理者でケアするといった打ち手も見えてきます。
定性的な内容も勇気をもって盛り込む
報告内容は定量化せよ(定性的なものは悪である)といった風潮があります。これも、度が過ぎるとあまりよろしくないと思うのです。
もちろん、数値による裏付けがあるに越したことはありませんが、すべてがそうはいきません。かと言って、現場で起こっている事象について定量化できないから報告しない、というのはいかがなものかと。
ここでまた大切なのが現場スタッフの声です。現場にヒアリングしてみると、「なんだか最近難しい問い合わせが増えてきた」とか「初歩的な質問が増えてきた」といった、問い合わせ傾向の変化が生じていることに気づくことができるかもしれません。
たとえばここで「初歩的な質問が増えてきた」という意見があがってきた場合、「新規ユーザーが増えてきたのではないか?」という仮説を立てることができます。ここからさらに施策を打つならば、初心者ユーザーにとって基礎的なサービス・製品の使い方についてもっと分かりやすいFAQを準備するとか、FAQ自体にアクセスしやすい導線を作るといったことができるでしょう。
こういった一連の仮説と施策の立案こそが、実のある報告内容ではないでしょうか。
できるならば、(規模のそれほど大きくないセンターであれば)実際に現場のオペレーションに自ら一部試験的に携わってみるとか、オペレーションリーダーに日ごろから現場の状況を聞くための時間をしっかり設ける、といった工夫を。思わぬ発見があるものです。
業務プロセスの細かい所を体感してみると、「こんな無駄や手間がかかっていたのか」と気づかされることもあります。部分的に簡略化できるポイントが見つかることもあります。
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よく「仕事のための仕事は無意味だ」と言われますが、コールセンターにおける月次報告は、仕事のための仕事になりやすい危険な作業の代表格だと言えます。
もちろん窓口のヘルスチェックも大事ですが、せっかく手間をかけて取り組むのなら、課題に気づき、手を打つための大事なきっかけとして活用したいものですね。
報告する相手が業務委託元のクライアントであろうが、自社のマネジメント層であろうが、数字だけの報告など待っていませんからね。
とはいえ、月に一回だけがっつり報告するだけでは信頼関係は構築できませんから、普段からのちょっとした報告や気軽なコミュニケーションも大切にしましょう(この辺はまた別な機会に記事にしてみたいと思います)。
さて、今週も頑張りましょう。
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