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今、高校生に薦めたい一冊

共通テストも終わり、いよいよ受験シーズンが本格化してきました。このところ、私が遊びに伺う先々で、「未だに受験の夢を見る」という話を聞きましたから、やはり人生における一大イベントなのは、間違いないでしょう。

note社の年末年始のキャンペーンは終わってしまいましたが、私が「今年の一冊」として選ぶならば、こちらの本です。

中野信子さんの『科学がつきとめた「運のいい人」』。

「運」というと、一見、偶発的要素の強い言葉のように感じられます。ですが、中野氏によると決してそんなことはなく、「運のいい人」というのは、行動や思考パターンに共通要素があるそうなのです。
 学生が「受験」を終えた後に、その後の結果は悲喜こもごも。ですが、ロングスパンで見た場合、それは人生の一要素でしかなく、捉え方次第でプラスに転じることもできるかもしれません。
 次世代を担う人材には、そのことを胸に刻んで、世の中に羽ばたいてほしいと思います。


「運のいい人」とは


中野氏によると、運のいい人とは次のような行動の特徴を持っているそうです。

1. 誰にでも公平に降り注ぐ運をより多くキャッチできる
2. より多くの不運を防げる
3. 不運を幸運に変えられる

特に3においては、色々な意味で「自分を大切にしている」ことからつながるのだそう。自分を大切にすることはすなわち他者を大切にする行動にもつながり、他者を思いやる気持ちを人一倍持っているからこそ、好かれる……という好循環を生むのだそうです。

逆に、人に対して「乱雑に扱う人」はどうなるか。

心理学で、「割れ窓理論」という言葉があります。ざっくり述べると、軽微な犯罪がやがて凶悪な犯罪を生み出す温床となるというもの。
既に秩序が乱れている場所があると、さらに秩序を乱すことへの心理的抵抗が少なくなることを意味しており、犯罪心理学などで「犯罪予防」の観点からよく用いられます。
自分を大切に扱えない人は他人も大切にできず、「小さな犯罪」を犯すことにも抵抗がありません。そのようなモラルの欠如した人間が大勢集まると、そのコミュニティは荒れ放題になるというわけです。確かに、現実社会でも「悪口を言い合う人」同士が群がり、当人がいなくなると、すぐさま去った人の悪口を言い合うなんていうのは、よく聞きますよね。

この理論を応用するならば、「他の人から大切に扱われたい、周囲の人と良好な人間関係を築くためには、まずは自分で自分を大切にすることから始める」ことが、第一歩となるわけです。

運のいい人は「自分が運がいい」と思い込む


パナソニックの創業者、松下幸之助さんが採用の決め手としていたのは、「自分は運が良いです」と言い切れる学生だったそうです。
その根拠については本書を読んでほしいのですが、「運がいいと思っている人には努力の余地が生まれるが、運が悪いと持っている人にはその余地が生まれない」というのが、中野氏流の解釈。

私の場合で恐縮ですが、数学・英語の成績が壊滅的だったもので、第一志望(北海道大学人文学部史学科)は到底手が届きませんでした。その結果、受験科目の関係で地元の大学、しかも視野外だった「法学系」の学部を選択したのですが、そこで法律を学び、現在はその系統のジャンルのコラムを任されているのですから、何がプラスに働くかわからないものです。
ついでに、実生活でも「各種法律の知識」は、諸々の場面で私を助けてくれました(苦笑)。

また、印象的だったのは「運のいい人は積極的に運のいい人と関わる」という言葉。これは、ちゃんと脳科学的に説明がつくそうで、

運のいい人の側にいると、ミラーニューロン(神経細胞の一種)が活発化

他人がその行動を取る背景まで読んでいる

その人と行動パターンが似てきて、「運を呼び込む」ことができる

という好循環を生むとのこと。
なので友達や仲間を求める際には、「プラス思考を持った友人・仲間」を作ると、グループ全体の成功を生むようになる、と言えそうです。

運のいい人は他人と「共に生きること」を目指す

同書で個人的に興味深かったのが、第3章。この小見出しはオマージュを込めて拝借したものですが、中野氏によると、その根拠は新石器時代の頃まで遡るそうです。
我々ホモ・サピエンス(現生人類)の亜種として、かつては「ネアンデルタール人」が存在していました。現在でもネアンデルタール人が滅びた理由は解明されていないのですが、「社会性を持っていなかったために種として滅んだ」という説があります。
最近の研究によると、クロマニョン人の方が脳の容量は小さいものの、脳の中でも「前葉頭」-人の言語活動、運動、精神活動を担う部分は、ネアンデルタール人よりも遥かに発達しているのだそう。言い方を変えれば、クロマニョン人が生き延びられたのは、「社会性」が発達していたからだというのです。

ホモ・サピエンスを「生物」として捉えた場合、仮にオスが「自己だけ生き残る戦略」を取ったとします。個体としては生き延びられるかもしれませんが、種として生き残るためには、自分より弱いメスや子供を守っていかなければなりません。
これが「生存本能」に組み入れられているとすると、「運のいい人は一人勝ちしようとしない」「運のいい人は品のある行動を取る」という行動に繋がってくるのです。

運のいい人は利他行動を取る

この小話も、印象的でした。
利他行動というのは、脳にとってもメリットが大きいそうです。その具体的内容は、以下のようなもの。

• 他人に見られていなくとも自分自身は自分の行動を見ていて、利他行動をすると、大きな快感を得られる。
• 相手が喜んでくれた時は、脳は何重もの喜びを一気に感じる。

利他行動を取ると、脳の報酬系の部分(前頭前野内側部)が刺激されて快感が得られるというのです。
ボランティア活動などで、よく助けた側が「こちらこそ相手に救われました」と述べているインタビューを見かけますが、あれは紛れもなく本音だろうというのが、私の印象です。まあ、中には「テレビを意識して良い子ちゃんの発言をする人」もいるかもしれませんが……。

逆に、自分のことばかり・目先の損得しか関心のない人は、「配慮範囲の狭い人」です。そのような人は、ある程度までは効率良く成果を挙げられたとしても、目先のことに囚われて協力的な人間関係が築けません。したがって、総合的に見た場合、満足感の得られない損失が多い人生になりかねません。

配慮範囲の広い利他的な志向を持つ人は、良い人間関係を持続的に築けるので、自分の周囲に盤石なネットワークを構築でき、それが運の良さにつながるというのです。

高校生に薦めたい一冊

noteのお題に従って「今年のベスト本」でも良いのですが、個人的には、本書は「高校生に薦めたい一冊」です。これから受験を迎えて大学に入ったとしても、そこがゴールではありません。また、自分の思うような結果が出せない場面も出てくるかもしれません。
本書はそのような場面でも、人生の助けとなるヒントが詰まった一冊です。

また、大学進学組に限らず、就職組などでも同じです。学歴や業績の成果のみならず、自分なりに人生を豊かに過ごせてこそ、本当の成功と言えるのではないでしょうか。
これからの未来を背負う人々は、ぜひ、この本を手にしてほしいです。もちろん、大人が読んでも明日へのヒントになりますよ!

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