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筒井筒

山根あきらさんの企画が、丁度今読み込み中の資料にぴったりだったので、乗らして頂きました。


筒井筒おさななじみ。なんて不自由な、甘美な響きなのでしょうね。

筒井筒ゐづゝにかけしまろがたけ過ぎにけらしな妹見ざるまに

この歌を贈って下さったときは、本当に嬉しかった。だって、私も生涯連れ添う御方は貴方様だけと、幼い頃からこころのうちに決めていたから。

くらべこし振分髪も肩過ぎぬ君ならずして誰かあぐべき

でも、私の父や母が亡くなって、貴方は河内の国へ行商に行くようになりましたわね。
ええ、わかっています。そうしなければ、私たちの生活が成り立たないことくらい。

河内にいい人がいるというのも、何となく察していますわ。
昨夜久しぶりに帰っていらっしゃったというのに、どこかよそよそしかったのですもの。

筒井筒ですからね。今までと様子が変わればすぐに気づきます。
貴方は私だけのものではない。それを知っても、なお、筒井筒の矜持というものがあります。

貴方のことを誰よりもよく知っているのは、この私に他なりません。
私以上に貴方様の事を想う者がおりましょうか。

ですが、私がそれを口にしたら、筒井筒の仲はきっと壊れてしまうのでしょうね。そして、貴方は私の元へは二度とお出でにならないでしょう。

沖つ鳥胸の白羽根さざめけどものうらみせじ君がためにと

私にできるのは、せめて笑顔で貴方を見送ることだけ。
ちらりとでも妬いてみせるなんて、そんな真似、恥ずかしくて出来るものですか。

風吹けば沖つ白浪龍田山夜半にや君がひとり越ゆらむ

けれども、本当は龍田山を越えてなんか欲しくないの。
わかってくださるかしら?


というわけで、伊勢物語から題材を取ってみました。
三首目だけが自作、後は伊勢物語からの出典です。

※追記
伊勢物語がベースなので、呼びかけの言葉をどうしようか、しばし熟考。
男→在原業平
女→伊勢君いせのきみ
……でしょうか?

山根さんからのご返事は、こちらからどうぞ↓!

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