見出し画像

やりたいこと

小さい頃、祖父のアトリエに入るのが好きだった。祖父は田んぼや畑を耕しながら、絵を描いていた。車庫の上がアトリエで、中に入ると油絵の具の匂いがつーんと臭ってくる。不思議と油臭いアトリエにも祖父の絵画の素晴らしさも理解できないでいたのに、私は良いなぁ絵描きになりたいなぁと思っていた。

大人になるにつれて、そんな夢も現実のせいにして諦めていた。祖父は死んでしまった。両親が離婚してから数回しか会っていない。どんな風に絵描きになったのか、ちゃんと本人に聞きたかったなぁ、と今になって思う。

私は結婚して娘を出産した。仕事もしていたけど育児に専念するため辞めることになった。はじめてのお産は想像よりも遥かに大変だった。緊急帝王切開だった。手術台に乗って我が子が出てくるまで死ねない。死ぬわけにいかない。怖い。怖くて怖くて、もしも上手くいかなかったら、そんな考えが頭の中をぐるぐる駆け巡っていた。

無事に娘が出て来た時には、涙が自然と込み上げて来て良かった。良かった。ありがとう。もう、たとえ今、私が死んでしまっても大丈夫だ。だって娘は無事だ。でも、あれ?

やっぱり心配、娘の将来が、せめて娘が成人するまで生きたい。いや、娘が50歳くらになるまで、娘が結婚して1人じゃないんだなぁと思って安心したい。て言うか、自分のやりたいこともっとやりたい。死んでられん!うおおおおー!

私は、もちろん無事、生還した。やりたいことがあった。無理だって決めつけて、やろうとしなかった。絵描きになりたい。自分の絵を必要な人に見てもらいたい。1人じゃないよ。そばにいるよ。生きなきゃ生きねばって誰かに思わせるような

そんな作品を作りたいんだ。だからやるよ。やりたい事は宣言すると良いのだそう。

時間は有限。まだまだ、これからだ。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?