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ゲームに学ぶ行動心理学

ドラゴンクエストやファイナルファンタジーに代表されるロールプレイングゲーム。

今のビジネスマンの30代、40代のコア層はファミコンをはじめとするテレビゲーム隆盛期に青春時代を過ごした。

大人になってすっかりプレイしなくなった人もいるかもしれない。それでも10代と言う心身ともに著しく成長する期間に遊んだゲームは、原体験の一つとして人の精神形成に大きく影響している。

仮想世界における追体験

小説や映画のように、ロールプレイングゲームは人生を追体験する事ができる。幼い少年少女だった我々は、ロールプレイングゲームの登場人物たちに感情移入することで、仮想世界における幾つもの人生を体験したはずだ。

例えば、子供を守って命を落とす父親の姿を見た。倒れる父親の後ろで絶望を味わい、奴隷としての苦渋を舐める人生を追体験した。(ドラゴンクエストⅤ)

我が子を心から愛し、自分の命よりも最愛の妻を探すことよりも我が子を守って死んだ、カッコいい大人に感動を覚えた。

奴隷と言う逆境に耐え、閉鎖世界から脱却し、世界を救った主人公の物語は、少年たちに勇気を与えた。


例えば、親友と同じ異性を愛した男の姿を見た。親友を傷つけ、悪に染まり、それでも自分の行いを間違いだったと悔い改め償うための闘いを追体験した。(ファイナルファンタジーⅣ)

思春期に重い課題として少年たちにのしかかる「恋愛」。自分の気持ちを殺し、真に大切にする行いは何かを知った。


例えば、人々を災害から守るため生贄となる理不尽な運命からヒロインを護り抜き、世界の摂理ごとその運命を変える旅を追体験した。(ファイナルファンタジーⅩ)

幾年もの間、人々が当たり前と諦めていた仕組みを壊すことは、はじめの勇気さえあれば可能となることを学んだ。


これらの物語を、当時のプレイヤーは自分の人生の一部かのように思い出せる人が多いのではなかろうか。

テレビCMなど、何処かから流れる音楽とともに、懐かしい異世界の風景がよぎり、胸を熱くする瞬間がないだろうか。

行動心理学への応用的置換

心理学における行動主義(行動心理学)は、心と言う概念的存在を認めず、行動を測定、分析することで人の本質を表すことを研究する分野だ。

ロールプレイングゲームによって追体験した数々の行動。人間の本質は行動にこそあるという行動主義の理論に当てはめると、ロールプレイングゲームは人間の行動に大きく影響する。

仮想世界で気軽に、高効率で、多様な行動を繰り返し行う機会となるからだ。

おおよその場合、ストーリーはテンプレートに当てはまる。主人公の身が戦いに巻き込まれ、ヒロインを守り、仲間を助け、悪を倒し世界を救う勇気のストーリーだ。

あなたが10代の頃からゲームを始めたならば、何十本ものゲームタイトルをプレイしているかもしれない。下手をすれば20年間くらいこの繰り返しを行なっていることになる。

繰り返し繰り返し、日常的にこの勇気のストーリーを追体験して、いつしか大人になったとき、心の原体験として自分の中に異世界の物語が存在する。

原体験こそ精神の根幹に関わる重要な要素だ。原体験化したロールプレイングゲームの中での「生きた時間」を、「単に遊んでいた浪費時間」と考えずに、以下のように生活やビジネスシーンに役立ててはいかがだろうか。

日常生活における転用例

例えば生活における例では以下の通り行動に反映する事ができる。

結婚し、子供を育てる立場になったならば、父親とはどういうものか、いつしかの追体験に沿って思い直してみよう。

カッコいい父親とはどういったものか。自分を犠牲にしてでも子供の幸せを願ったあの日の光景が、普段の行動を変えられるのではないだろうか。自己都合で自分勝手になりがちになっていたなら、子供達がその姿を見てどう思うのか、自分の背中がどう映っているのか省みる機会がないだろうか。


または、恋愛で悩み、自分の気持ちとは裏腹に上手くいかないようなことも、人生ではよくあることだ。

自己中心的な考えに陥っていないか今一度省みる機会を、懐かしい物語の登場人物に求めてもよいだろう。

相手の幸せを願ったいつしかの追体験に沿って、想いに区切りをつけるよう行動を変えられるはずである。


ビジネスシーンにおける転用例

また、ビジネスシーンにおいては往々にして理不尽な、もはや闘いと言っていいほど心身的にも過酷な状況に身を置く事が多い。ここにも例えば以下のような行動に応用できる。

理不尽な業務命令に対しては、根本的な本質的な問題が取り払われていない事が挙げられる。担当者としてその根本的問題に気づいたが、恐らく組織ごとその問題があることを前提の文化として成立していると、言い出しにくい雰囲気だ。

しかし、いつしかの勇気のストーリーに沿って自分の行動を省みると、何度もそのような似た状況を打開した主人公たちを見てきたことを思い出すことができる。

みんなが言い出しにくい発言こそ、世界を変える発端になってきたこと。

とんでもない突拍子なアイデアこそ、大いなる敵に打ち勝ってきた大戦略に発展し、世界を救ったこと。

何者でもなかった少年が、はじめのほんの少しの勇気がきっかけで、多くの仲間に慕われる英雄となったこと。

これらの行動のヒントは仮想世界で既に体験済みだ。行動心理学に従えば、仮想世界で繰り返した勇気ある行動によって、人としての本質が形成されていると言えるため、表面上隠れていても勇気ある行動が取れる大人に成熟している可能性が高い。

仕事に勇気を持って取り組むことは特にリーダーにとっては重要な素養だ。子供の頃、母親に「やりすぎだ」「勉強しなさい」と叱られながらもプレイしていたゲーム時間も、大人になって仲間たちを救うための行動原理に成り得るならば、無駄ではない有意義な時間だったと言えるのではないか。

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