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書痕古迹探検路 呪文

彼女がある日、散歩をしていると、突然物凄い突風が起こり、彼女は彼方に飛ばされた。飛ばされた。飛ばされた。飛ばされた!!

風風風風風風風風風風風風風風風風風風風風風風風風風

風が止まると、突然、今まで感じた事のない空っぽの感じがした。ここは何処だろう?白い部屋?

真っ白な部屋にいると思ったら、巨大な「山」の文字が空を覆っていた。その山は時折、人の言葉のような「ふむふむふむふむふむふむ」という音を立てていた。

「何ここ?何ででこんなところに


そこは、漢字たちが生き生きと動き、息づいている世界だった。彼女の足下には「道」の文字がぐにゃぐにゃと動きながら伸びていき、「森」の文字の中では木々が「くすくす」と笑っているかのようだった。

「海」の文字からは「じょぼじょぼざざーん」という水の流れる音が聞こえ、太陽のように輝く「金」の文字からは「きらきら」というキラキラした音がしていた。

何もかも狂っている。夢だろうか?不機嫌に彼女は歩き始めた。彼女は漢字が嫌いだったのだ。特に「鬱」と言う字が嫌いだった。こんなの書けるか!!

どうせファンタジーなら、「宝石の国」とか、「宝石の国」とか、「宝石の国」とかが、良かったよ。

「こんなトコロに来るなんて…」とつぶやく彼女の目の前に、「犬」の文字が現れ、その文字が突然「わんん」という軽妙な音を鳴らした。「こんにちは。何を探してるの?」と犬の文字は質問してきた。彼女は毒舌を隠せず、「こんな場所で何を探せと言うの?カタカナ?」と答えた。

犬は「ほほほ」と笑い、「ここは漢字の世界、思うがままに楽しむがいいさ」と答えた。

「川」の文字の流れる音「Zzzzzzz」と共に、彼女の背後から巨大な「音」の文字が迫ってきて、突然、ジャズのようなリズムを奏で始めた。

彼女は驚きのあまり「何これ!」と叫んだ。犬は「この漢字世界は、予測不可能さ」と得意げに答えた。

途中、彼女は「怒」の文字に近づき、その文字が火を吹いたように「ぼっ」という音を立て、周囲を熱くした。彼女は「熱い熱い!」と叫びながら、冷たさを求めて「氷」の文字に駆け寄った。夜になり、「月」の文字が空に浮かび、「夜」の文字からは「しーんしししーん」という静寂の音が漂ってきた。

彼女は「ねえ、どうやって元の世界に戻るの?」と不安そうに犬に尋ねた。犬は偉そうに「""の文字を探すんだ」と答えた。

犬の文字の深い眼差しは彼女の瞳と交差した。「ただ""の文字を探すだけでは、この漢字の世界から抜け出すことはできない。試練を乗り越える必要がある。」

彼女の瞳に驚きの色が広がった。「試練って何のこと?何でこんなことになってるの?」

「試練はRPGの世界の基本だ。」犬は静かに語り始めた。「あなたはその試練を受けなくては帰れない。それがルールなんだ。まずは勇者の漢字を探して」

「馬鹿じゃない!!何がRPGの世界!!漢字だけでも馬鹿馬鹿しいのに!」

しかしながら、帰る方法は、その方法のみ。嫌嫌ながら、彼女は漢字探しを行う。そして、ある日彼女はとうとう北の果てで、「勇者」と言う文字を見つけた。

彼女が「勇者」の文字に渋々触れた瞬間、強烈な光に包まれ、風の音、鳥の鳴き声、そして子供たちの無邪気な笑い声が耳を打った。

目の前に広がるのは、石畳の道と古びた家々、中央には広場があり、村人たちが賑わっていた中世の町だった。典型的なRPGだ。全てが、漢字だけど。

彼女は自身の姿を見ると、金属の甲冑の字を身に纏い、手には鋭い剣の字を持っていた。彼女はしばらく自分の姿を眺めていたが、そこへ一人の中年の冒険者「雑魚」が近づいてきた。

「君も『魔王』を倒しに行くのか?」と彼は言った。彼女は首を傾げながらも、「そうみたい」と答えた。

冒険者たちは彼女を仲間に加え、一緒に「洞窟」や「森」を旅して「魔王」の城を目指すことになった。道中、彼女は「友情」の文字に触れて仲間たちとの絆を深めたり、「裏切り」の文字に出会い、苦い経験をすることもあった。彼女たちの冒険は簡単ではなかった。

毒の「沼」や、炎を吹く「竜」の文字、そして罠だらけの「遺跡」の文字に苦しめられた。しかし、彼女は仲間たちと共にこれらの困難を乗り越え、ついに「魔王」の城へと到着した。

城内は静寂が広がっており、深い闇の中に「魔王」の文字が佇んでいた。彼女と「魔王」の間には、激しい戦闘が繰り広げられた。

剣と魔法の衝突の音、そして彼女の叫び声が響き渡った。最後の一撃を放ち、彼女は「魔王」の文字を打ち倒し、試練を見事に乗り越えたのだった。

と思ったとたん

再び目を開けた空間は、純白の無限の広がりを持つ場所と化していた。だがその白さも束の間、彼女の前には壮大で複雑な星座が浮かび、遥か彼方まで続く銀河が渦巻いていた。その中心には、真っ黒な「宇宙」の文字が鎮座していた。

犬は神秘的な星の光を浴びながら告げた。「次の舞台は、シューティングゲームの世界。無数の敵がお前を待ち受けている。」彼女は今度は迷うことなく、「撃」の文字に身を委ねると、文字は流れるように変形し、高速で動く宇宙船と化した。その船は、純白の空間を駆け抜けるように飛び立った。

すぐに、「敵」の文字が猛スピードで彼女に襲い掛かってきた。それは「雷」の文字や、「雷鳴」、「光」の文字が変形した敵機、そして「火花」を散らす宇宙の生物たちだった。彼女は船の操作を巧みに操りながら、一つ一つの敵を退けていった。

そして、宇宙の奥深く、遥か彼方から巨大な「魔王」の文字が近づいてきた。その文字は変形し、光と影が交差する巨大な敵機と化した。「炎」や「氷」の文字を放つ攻撃を繰り出してきたが、彼女は巧妙にそれを避け、反撃の「弾」の文字を打ち出していった。

そして魔王はついに最終形態「鬱」へと進化した。

鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱

彼女と「鬱」の文字との間には、宇宙を舞台とした壮絶な戦闘が繰り広げられ、宇宙の果てまでその轟音が響いていた。そして、最後の最後で彼女が放った「撃」の文字の一撃が「鬱」の文字を貫通。婆ああああああああああああああああああああああ!!!

鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱

壮大な爆発とともに、彼女はこの最後の試練も見事にクリアしたのだった。

鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱

帰帰帰帰帰帰帰帰帰帰帰帰帰帰帰帰帰帰帰帰帰帰帰帰

突然物凄い突風が起こり、彼女は彼方に飛ばされた。飛ばされた。飛ばされた。飛ばされた!!

風風風風風風風風風風風風風風風風風風風風風風風風風

気がつくと彼女は自宅の前に佇んでいた。

こうして彼女は漢字の世界から帰還したのだ。
これは、誰も知らない話だけど。

そして何より散々漢字を見たせいだろうか。「鬱」という字が彼女は書けるようになったのだ。この散歩で得た報酬というとそのくらいのものだった。



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