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家の近くの自転車屋さん(ベトナム)

 初日からパンクしていた古い自転車は、あちこちに不具合があった。だが、そのおんぼろ感がとても自分の心に刺さった。レトロで、ボロボながらまだ動いているという逞しさを感じる。

 家の近くにある自転車屋さんには何回も通ったと記憶している。おそらくタイヤのゴム自体が古いため、何回もパンクした。パンク修理が一回500円ほどとお手頃価格だったので、わざわざタイヤのゴムを変えようと思わなかったのだ。空気を入れるためだけに行くこともあった。空気入れは日本と同様に無料である。

 自転車に乗り始めたときからブレーキが効きづらいと感じていたが原因がわからなかった。しばらく乗っているうちに、減速するために、タイヤを挟んでいるゴムがすり減ってしまっているということに気が付いた。

 いつものお店で直してもらうことにした。ゴムだけではなくタイヤを挟む金具も新しいものにしてくれるそうだ。1500円くらいで交換できた。自転車をカスタマイズしているようでワクワクした。

 ブレーキ交換をして、安心して乗れるようになった自転車で、意気揚々と街中を走っていた。ハノイはほとんど坂道がない。あっても角度は緩やかなものだ。緩やかとはいえ、坂道で少しスピードが乗っていた。少し減速をしようとブレーキをかけた瞬間、ガチャと音が鳴った。タイヤを挟み込むブレーキが外れているではないか。下り坂のスピードに耐えることができなかったみたいだ。

「結構まずいんじゃないか」と思った。幸い、そこまで道路は混雑していなかったから冷静でいることができた。なんとか足を使って止まることができた。「ちゃんと家まで帰れるかな」ゆっくりと走って足で止まれるスピードしか出さないようにし、無事に家にたどり着くことができた。

 お店にもっていくと「もう外れちゃったのか~」と申し訳なさそうに言われた。若い修理工の人が再度対応してくれた。「お金はいらないよ」と言ってくれた。アフターフォローがしっかりしている。

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