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賃貸住宅管理業(管理会社)に義務づけられたオーナーへの定期報告


2021年6月15日より、賃貸住宅管理業(不動産オーナーから受託して行う、賃貸住宅の維持保全、家賃受領等の管理業務)に対し、新たに規制が及ぶこととなります。

これについては、過去に記事を書きました。

今回は、新規制により、住宅の管理会社に課せられた、物件オーナーへの定期報告の義務について、詳しく書いていきます。

定期報告とは?

新規制のもとでは、管理会社に物件オーナーに対する定期報告が義務付けられました(賃貸住宅管理業法20条)。

この定期報告は、「1年を超えない期間ごとに」(賃貸住宅管理業法施行規則40条1項)行わなければならないとされていますので、最低でも年1回、行わなければならないこととなります。

なお定期報告は、原則として「管理業務報告書を作成し、これを委託者に交付」(規則40条)して行うこととされ、つまり報告書が必要であり、口頭での報告で済ませることはできません。

これまでも管理会社としては、オーナーに対して、随時に連絡をとり、報告を行ってきたと思われます。ただし今回、新たな法律により、年1回以上の定期的な書面報告が義務付けられましたので、オーナーへの報告の手順やマニュアルを見直す必要が生じています。

定期報告書の内容

定期報告は、既に述べたとおり報告書によって行うこととなります。そして、その報告書に記載すべき内容は、以下のとおりです。

【賃貸住宅管理業法施行規則 40条1項各号】
① 報告の対象となる期間
② 管理業務の実施状況
③ 管理業務の対象となる賃貸住宅の入居者からの苦情の発生状況及び対応状況

項目としては、決して多くありません。

ただし「② 管理業務の実施状況」については、管理委託契約における委託業務(例えば、物件の点検、清掃、修繕、賃料の授受等)の全てについて、実施状況を記載して報告する必要があります。

Webを利用した定期報告

なお一定の要件を満たす場合、定期報告をWebやメール等の方法ですることが可能です。

システムと連動させる形で、Web上にオーナーへの情報提供サイトを設けたり、メールを自動配信することによって、定期報告義務に対処することも可能です。

ただし、これには以下の留意事項があります。

まずWebやメールでの定期報告をするためには、オーナー側の承諾が必要となります。そのため、事前にオーナーから承諾を得て、それを記録化する旨の手続きを整備する必要があります。

次に、Webでの定期報告の場合、オーナーへの情報提供サイトに定期報告書をアップロードしたとしても、オーナーがこれを見ず、定期報告が形だけのものになってしまうおそれがあるため、法はアップロード時の”通知”を求めています(ただしオーナーによる閲覧を確認した場合には、通知不要。)。

そのためWebでの定期報告を予定する場合には、上記の通知についても、システムや業務手順といった仕組みに組み込む必要があります。


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定期報告のタイミング

定期報告のタイミングについては、「管理受託契約を締結した日から1年を超えない期間ごとに、及び管理受託契約の期間の満了後遅滞なく」行うこととされています(規則40条)。

そのため、契約締結日から1年以内に、初回の報告を実施することとなります。

これに応じて、管理会社としては、定期報告のタイミングを各契約ごとに管理するというのが1つの方法です。

または、定期報告のタイミングを期末等で統一する場合においては、たとえ期末のすぐ直前に契約締結をしたオーナーがいても、契約締結から初回報告までに1年が空いてしまわないよう、必ず契約締結後、最初に来る期末での定期報告が必須となります。

契約期間満了時の報告

また定期報告には、最低でも1年ごと、というルールの他に、「管理受託契約の期間の満了後遅滞なく」というルールもありますので、定期的な報告とは別に、期間満了に基づく報告を実施する必要があります。

この「管理受託契約の期間の満了後遅滞なく」という部分について、それでは期間満了ではなく、物件売却によるオーナーチェンジ(に伴う解約)や、中途解約、契約解除等により、期間途中での契約終了があった場合にはどうなるのか?という疑問が生じます。

規則等は"契約の終了"ではなく、「期間の満了」という言葉を使っています。ただし契約が中途終了した場合、定期的な報告の機会が失われること等を考慮すると、規則の趣旨からして、期間満了と同様に、中途終了の場合においても、終了に基づく報告を実施する義務があるとの解釈が妥当と思われます。

以上のとおり1年以内ごと、また契約終了時に書面報告が必要となります。

管理業務を営む不動産企業は、以上のような定期報告について、業務プロセス、マニュアルに組み込むことが必要となっています。

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