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転売ヤー対策なるか?最新のデジタルプラットフォーム規制(取引DPF消費者保護法)

1.転売ヤーと取引DPF消費者保護法(2022年5月1日〜)

希少商品や流行商品等、売り切れがちな商品を転売目的で購入する「転売ヤー」が、昨今、非難を浴びています。

業者ではなく、個人での転売の延長、という側面もあるため、法的に規制しづらい転売ヤーですが、最近の法律の中では、転売ヤーも念頭に、規制に踏み込むことを意識したものが登場しています。

それが、「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律」、通称「取引DPF消費者保護法」です。2022年5月1日に施行されました。

「デジタルプラットフォーム」とは、電子取引の場のことですね。楽天などのECモール、メルカリなどのフリマサイトや、ネットオークションサイト等がこれに含まれます。

この「取引DPF消費者保護法」に関するガイドライン(消費者庁が出しているものです。)では、誰が「販売業者」、つまり業者であるか、という点が検討されており、これはもはや個人転売の延長ではなく、業者としての転売ヤー、を法的に把握し、規制の網をかけようとしています。

以下、ガイドラインの中身を具体的にご紹介します。

2.転売ヤーも「販売業者」か


消費者庁は、「販売業者等」に係るガイドラインを定めています。こちらから閲覧できます。

取引DPF消費者保護法では、悪質な「販売業者等」への情報開示の請求もできることとなっていますので、その対象となるべき「販売業者等」の範囲はどこからどこまでか、を示すことを目的としているものです。

上記ガイドラインは、取引DPF消費者保護法がB to C(ビジネスtoコンシューマー、つまり業者と消費者間の)取引を対象としていることを認めつつ、誰が「B」(業者)に該当するかに関して、次のように記載しています。

近年、取引デジタルプラットフォーム上における個人間取引の拡大に伴い、一般的な生活領域の範囲を超えた取引が見受けられる。その結果、いわゆる「隠れB」と称される者など、「販売業者等」に該当すると考えられる者も出現している。

取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律における「販売業者等」に係るガイドライン(消費者庁)

 このように、消費者庁も、フリマアプリなどを利用した個人間取引の増大に伴い、個人間というレベルを超えて業者と化した者、いわば「隠れB」といえるような者が生じている、と表現しています。

 個人間取引は自由であるべきとはいえ、「隠れB」といえるような転売ヤーは、最早、個人とはいえないような規模であることから、非難を浴びつつあります。法律は、そういった現状に追いつこうと、がんばっているところです。

3.転売ヤーに関する消費者庁の立場

 どういった者が、「販売業者等」となるべきかについて、消費者庁は、次のように示しています。

②「新品」等の商品
使用されていない、いわゆる「新品」や「新古品」等の商品を相当数販売している場合、「販売業者等」への該当性を推認させる事情になり得ると考えられる。
(具体例)・実店舗やインターネット上で相当数の商品を購入し、当該商品を自身では使用せず、取引デジタルプラットフォーム上で販売(転売)しているような場合

取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律における「販売業者等」に係るガイドライン(消費者庁)

中古品の売買が主に想定されるフリマサイトにおいて、なぜか新品ばかりを出品するアカウントに、「これは業者でしょ?」と思ったことはないでしょうか。

消費者庁もそのような違和感をとらえて、新品、新古品ばかり出品する者への「販売業者等」該当性について、前向き立場を示しています。

反面、中古品の個人間取引を意識して、次のようにも述べています。

他方で、自己が受け取った贈答品が不要であるために又は使用した商品が不要であるために販売している場合には、通常その事実のみをもって「販売業者 等」への該当性を推認させる事情にはならないと考えられる。 (具体例) ・中元、歳暮、引出物等で自己が受け取った贈答品が不要であるために、単 発的に取引デジタルプラットフォーム上で販売している場合

取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律における「販売業者等」に係るガイドライン(消費者庁)

このように、不要となった中古品を売買する者は、個人であり、業者ということはできないだろう、ということになります(他に、業者らしき挙動がみられるのであれば、話は別です。)。

また、消費者庁のガイドラインでは、例えば1人で大量のプレイステーション5を出品(同一商品の複数出品)するような者についても、以下のように示しています。

①同一商品の複数出品
メーカー、型番等が全く同一の商品を複数出品している場合には、「販売業者等」への該当性を推認させる事情になり得ると考えられる。

取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律における「販売業者等」に係るガイドライン(消費者庁)

このような販売業者のとらえ方は、世間的な感覚に合致しています。

流行商品を買うことができず、日々、業者と思われる転売ヤーにイライラしている方からすれば、上記のような消費者庁の考え方に、大きく頷きたくなるのではないでしょうか。

4.「販売業者等」に該当する場合、どうなるか

上記のような要素も考慮されて、デジタルプラットフォームの利用者は、取引DPF消費者保護法における「販売業者等」に該当するか否かが、決められることとなります。

そして、「販売業者等」に該当した場合、取引デジタルプラットフォームの利用の停止等に係る要請(同法4条)や、同法第5条の販売業者等情報の開示請求等の対象となることになります。

新型コロナウイルス感染拡大等によってデジタルプラットフォームでの取引利用は拡大しました。一方で、マスクや消毒液など、衛生用品をめぐる取引のトラブルも増加していました。

今後は、新しい法律である、取引DPF消費者保護法による適正化も期待できます。



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