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BtoB SaaS プロダクトツアーの現在地及び見解

自己紹介

はじめまして。クラウドサーカス株式会社の橋口(@KohkiHashiguchi)と申します。

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現在、Cloud CIRCUS CSM「Fullstar(フルスタ)」のプロダクトオーナーを務めています。

FullstarはBtoB SaaS向けのプロダクトツアー作成ツールなのですが、この領域について詳しく記された記事等がほとんどないので、海外の記事を参考にしながら解説します!

プロダクトツアーとは

「プロダクトツアーとは」で検索しても、日本語の記事でプロダクトツアーについて解説されているものは見た感じありませんでした。海外の記事でヒットしたものをそのまま引用すると

Product tours—sometimes called product walkthroughs—introduce users to a new product and help them find their bearings. They can be used to introduce new users to your UI and guide them to take meaningful actions that bring them closer to their aha moment—increasing product activation, adoption, and retention rates. https://www.appcues.com/blog/product-tours-walkthroughs-ultimate-guide

と記載されております。プロダクトツアーという言葉自体耳にしたことがある方も一定いるとは思いますが、上記になぞると「プロダクトツアーとは、ユーザーに新しいプロダクトを紹介し、活用の仕方を理解するのを助けるもの」です。各機能を紹介したり、行動を導くことで、プロダクトのアクティベーション、アダプション、リテンションの率を向上させます。

皆さんも一度は経験あると思いますが、スマホゲームなどで、「次はこのボタンを押してください!」みたいな案内が出て、最初のチュートリアルを進めていくものがプロダクトツアーです。

プロダクトツアーは、他にもウォークスルー、チュートリアルなどの呼び方もされます。以下、プロダクトツアーのキャプチャをいくつか貼っておきます。

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上記のように、プロダクト上でユーザーに期待する行動をハイライトと吹き出しで示すことができます。初めて使う人でも迷うことなく設定を進めていくことが可能です。

プロダクトツアーの現状(アメリカ)

先述した通り、国内ではプロダクトツアーはまだ浸透していません。弊社でも確認できる限り、数十のSaaSを利用していますが、BtoB SaaSでプロダクトツアーを作成している会社はほとんどありません。

プロダクトツアーで引っかかる検索件数も約200倍も差があります。(英語なので英語で検索した方が多いのは当たり前ですが、「カスタマーサクセス」だとその差は約30倍程度で、まだ日本に浸透していないのが分かります。)

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ので、プロダクトツアーの現状については、日本はまだまだ発展途上で、海外の方が進んでいるので、「The 2020 State of SaaS Product Onboarding」より重要なところを抜粋します!※1000以上のSaaSをUserpilotという海外のプロダクトツアー作成ツール提供会社が調査しています。

・調査対象のうち、BtoBSaaSの14%がフリーミアム(86%はフリートライアル)

・60%のSaaSは初回ログインをした新規ユーザーに対し、ウェルカムスクリーンを表示

・29%のSaaSがプロダクトツアーを利用(※)

・24%のSaaSがインタラクティブウォークスルーを採用(※)

・95%のSaaSが機能利活用状況を把握するための分析ツール、トラッキングツールを使用

※本調査では、「プロダクトツアー」は製品の案内を一方的に行うこと、「インタラクティブウォークスルー」はユーザーの行動を促しながら製品案内を行うことと定義されています。

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全体の53%のSaaSが何かしらプロダクトツアーを実施していることが本調査で分かりました。

国内BtoBSaaSでどのくらい採用されているかはまだ多分誰も分かりませんが、感覚多くても5%程度じゃないかなと思います。

なぜプロダクトツアーが必要なのか

海外でプロダクトツアーが注目され、多くのSaaSで採用されている理由は以下が考えられます。

・顧客体験価値の向上

SaaSを利用するエンドユーザーが「迷うことなく設定を進める」「ストレスなく活用する」ためにプロダクトツアーを実装します。SaaSを利用するエンドユーザーの顧客体験価値を向上させることが狙いです。

・セルフオンボーディングによるハイタッチCS工数削減

SaaS導入後、ハイタッチでオンボーディングを進めるCSM(カスタマーサクセスマネージャー)の工数削減の施策として取り入れられます。SaaSは継続利用のモデルであるため、導入社数が増えれば増えるほど、カスタマーサクセスの担当顧客も増えます。ハイタッチで支援するにも限界があるため、基礎的なオンボーディング部分はユーザー自らが行ってもらうことを目指します。

・ラーニングピラミッドに沿った学習定着率向上

※ラーニングピラミッドは「学習の仕方」により「学習の定着率」が大きく変わることを指します。詳しくは以下ご確認ください。

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アメリカ国立訓練研究所の研究によると、学習方法と平均学習定着率の関係は「ラーニングピラミッド」という図で表すことができます。学校の授業や会社の新人研修などでは、講義・実技・議論などさまざまな方法で学習を行いますが、学習時間が限られていて状況では、より効率の良い方法での学習がスムーズに学習内容を身につけることにつながります。いくら勉強してもなかなか成果が出ず困っている人は、この学習方法を見直すだけで思わぬ効果が出るかもしれません。 https://career-ed-lab.mynavi.jp/career-column/707/

ウェビナーが「講義」、マニュアルサイトが「視聴覚」、1to1の操作講習が「デモンストレーション」に当てはまります。対して、プロダクトツアーは自ら体験しながら進めるので「自ら体験する」の75%になります。一般的な手法と比較して3倍近く学習定着率が異なることになります。

プロダクトツアーが有効なSaaSとは

全てのSaaSにプロダクトツアーが有効であるとは思いません。エンタープライズ向けやCSM1人あたりの保有顧客数が数社~数十社、複雑なカスタマイズ前提のSaaS等は必要ないかもしれません。(あった方が良いのは間違いないが、ありとあらゆる施策を検討した際にプロダクトツアーの作成より他の施策の方が優先順位が高い可能性が高い)

以下、特にプロダクトツアーが有効だと思うSaaSです。

BtoBtoE(Employee)

BtoE(Business to Employee)は、企業が従業員に向けて提供するサービスのことです。一般的に、福利厚生の一環として提供されるサービスのことが多いのですが、社内教育や業務支援などのサービスもBtoEに含まれると考えられています。
なお、「Employee」は、自社のみならず他社で働いている従業員も含めた「会社で働く人」を示すという場合もあります。 https://loogue.net/b-to-e.html

SaaSの中でも、全社で使うことを前提としているものを指します。全社で利用するため、CSMによるハイタッチの支援が現実的ではありません。プロダクトツアーを構築することで同期コミュニケーションを必要とせず、社員のリテラシーに左右されずに誰でも利用できるようにします。

PLG(Product-Led Growth)

「PLG」とは「Product-Led Growth」の略で、プロダクト主導でサービスを成長させることをです。これまでプロダクト外で行なっていたマーケティングやセールスの機能を、プロダクト自身に持たせる概念です。プロダクトそのものの力で、自然とサービスが広がっていく状態を目指します。 https://mtame.jp/column/plg_freemium/

人を介してのセールス活動、カスタマーサクセス活動を戦略上行わず、ユーザーが無料でサインアップし、プロダクトを利用することで、有償化を狙います。無料でサインアップした後に、ユーザーが仕様を理解できず、使わなくなってしまったらPLGは終わりです。

インダストリーSaaS

特定の業界へプロダクトを提供しているSaaSを指します。インダストリーSaaSはレガシーな業界へのサービス提供をしていることが多く、SaaSを利用したことがないユーザーが多くいます。リテラシーが低いユーザーでも分かりやすくするためにプロダクトツアーを採用します。

プロダクトツアーの事例

事例も国内だとほとんどありません。ですので自社の事例で恐縮ですが、、

どのようなプロダクトツアーを構築しているのか、プロダクトツアーによって改善した数値は?どのくらいよくなったか?など具体的に記載してありますので、イメージ湧きやすいと思います。

プロダクトツアーの具体的な効果

海外の事例もいくつか調査しましたが、プロダクトツアーの主な定量的な効果として、以下がよくあげられています。

・ONB完了率向上

・アクティベーション向上

・サポート工数削減

ユーザーの初期設定をプロダクトツアーで支援することにより、次回ログインの率を高めることができます。スマホのゲームアプリのようにBtoB SaaSでも初期設定をプロダクトツアーで完了させることにより、アクティブ率を上げることができます。

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また、プロダクトツアーを作成することで、「ユーザーオンボーディングを最適化するための開発コスト」「CSMによるハイタッチオンボーディングコスト」を削減することができます。

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サポートの問い合わせ対応の中でもワンタッチ(1回の返信で基本的に解決できる簡単な問い合わせ)を減らすことができます。

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プロダクトツアーの作り方

プロダクトツアーは、エンジニアが1からコードを書いて構築する方法と、プロダクトツアーをノーコードで作成できるSaaSを活用して構築する方法があります。前者は僕も全く分かりませんし、めちゃくちゃ時間かかりますし、UI変更によるメンテナンスコストが大きいのでおすすめしません。

一例として、ノーコードプロダクトツアー作成SaaS、Fullstar(詳細後述しています)を用いた構築の方法を紹介します。海外ツールもいくつか試してみましたが、基本的に作成方法は大きく変わりません。

①「吹き出しを作成」を選択します。

吹き出しはプロダクトの操作を補足するメッセージのことを指します。

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②吹き出しを表示する箇所を選択します。

マウスカーソルを動かすと、吹き出しを出す箇所を選択できます。(少し感動します)

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③表示するメッセージを入力します。

実際にユーザーに表示するメッセージを入力します。

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④最後に確認メッセージを入れる。

プロダクトツアーの最後に確認メッセージを入れ、プロダクトツアーの終了をユーザーに知らせます。

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以上が作成の流れです。上記の吹き出し以外にも画像を挿入できたりとプロダクトに合わせて作成し、ユーザーが望む体験をノーコードで設計していくことが可能です。作成自体はとても簡単にできるので、1つのプロダクトツアーを作成に数分しか時間を要しません(どのボタンにどういうメッセージを表示するかなどの設計部分は時間かかると思います)。どのプロダクトツアー作成SaaSを利用しても上記のような手順ですぐに作成ができます。

無料でプロダクトツアーが作成できるツール「Fullstar」

弊社では、Cloud CIRCUSというブランドの元、2006年に1つ目のSaaSの提供を開始し、現在では10種類のSaaSを開発・提供しています。より良い顧客体験の創出、カスタマーサクセス体制の構築のためにプロダクトツアーをエンジニアが作成したのですが、1つのSaaSにプロダクトツアーを構築するだけで、エンジニアの工数を600時間も要しました。

もっと手軽にプロダクトツアーを作成できるようになれば・・世の中同じような悩みを持っている人がいるのでは・・ということで、Fullstar(フルスタ)をリリースしました。

Fullstarは無料から使えるプロダクトツアー作成ツールです。ノーコードで作成ができるので、非エンジニアでも短時間でプロダクトツアーを作成できます。プロダクトツアーを作成してみたい、良質な顧客体験を追求したい、カスタマーサクセスの効率化を行いたいなど考えている方は、是非お試しください!

ご相談→橋口Twitter:@KohkiHashiguchi

無料でチュートリアル作成→FullstarFreeプラン↓




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