妄想:ヒトの物理も論理も入れ替わっているのにIDだけは永遠

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ヒトとして社会(国家・地域・集団など)に認められれば識別子(IDなど)が割り当てられ「絶対にこのヒト」を区分けできるようにする。

だが、ヒトの細胞は時々にあたらしい細胞に生まれ変わり、論理も時代に沿って入れ替わり記憶される。物理と論理の合成で行けばIDなどで区分けできる存在ではない。行動も考え方も変わっている。現時点でIDと同類とみなされるのは遺伝子と見かけのみとなる。

進化する人工知能は、ヒト単体の物理と論理の変化と合成を見極める可能性が高い。推論が発達すると、膨大な情報からある特性を導き出し分類し仮想の中で合成し、対象者の画像(または感知デバイス情報)に対して一致する型を求めていくことになるだろう。デバイスに移る特性の合成で型を特定しIDと類似する情報を生成できる。IDが不要となる。IDから個人を特製するのではない。極詳細区分型の個を見つけて「本人」と推定(ほぼ断定)するのだろう。(仮に人工知能推論社会と呼ぶ)

当然、経時変化を加味した特性を照合に使うはずだ。だから、遺伝子編集をしたとしても見た目を改造したとしても「本人」を物理・論理の経時変化の組み合わせから導き出すことができる。そうして、「適切な型」で本人を特定し、例えば公共サービスや徴税・徴兵や選挙権配賦、捕縛・訴追など行う。

IDを捨てられない社会は「IDと一致するのが本人」として偽物を区分けする能力が衰えたまま、整理できない情報社会を構築していくだろう。たとえば、過去の犯罪に対して「あの当時は物理と論理の合成は『悪』の行動をとっていたが、今の物理と論理は『善』の合成でその行動は社会に認められている」としても「IDの『過去』は消せない」として刑罰を与えることになる。つまり、過去固定で現在は存在しないのだ。

人工知能推論社会では、被害者(関係者含む)に対して「加害当時の物理と論理の合成であるAは、加害の記憶があり状況証拠の記録もそろっているので有罪である。同時に、現在のAは『善』の合成で社会に貢献している。罪は、過去の加害の反省とその清算を行わなかったことにある。」と人工知能が説明をし、過去の加害Aに対して量刑を決裁し承諾を得るための説得に入る。

被害者に対しては特定の「仮想過去被害環境」を提供し、量刑を超えた「『憎しみ』や『質し』や要求」をつきつけられる「感情のやり場」として利用するように促す。同時に被害の苦しみを和らげるプログラムも組まれている。被害者の物理と論理の合成が日々変わっていくことを後押しする。

同時に「加害があったことを隠ぺいする」ことも困難な時代でもある。合成で本人と特定できるからだ。逃れられない過去の加害ときちんと向き合い清算することを促す社会だ。

人工知能推論社会では、「ヒトは常に生まれ変わる」のが基本である。例えば、被害者が過去に囚われそうになれば「仮想でできるだけ生まれ変わりを促す社会」だ。コミュニケーションの中で様々な「過去を清算している」認定がやり取りされる。清算しきれていないヒトに対しても寛容であり「清算を促すコミュニケーション」が緩やかに成立する環境が整備される。

ID社会では曇りがちな人々が、晴れやかな様子を見せることが多くなった人工知能推論社会。推論が失敗していることに気付くこともなくなっていた。

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「過去が清算された」と認定される社会は、まだまだ、妄想できそうな気がします。でも、もし、妄想でなかったら・・・

#日経COMEMO #NIKKEI

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