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マスキュリズムに必要な「ふたつのイノベーション」

拝啓、森夕子様

先日(といっても今ではかなり前になりますが)この記事に、森夕子という女性のnote著者がコメントを入れたようなのですが、私から言わせてもらうと「この人記事の内容をちゃんと理解してないな」と確信させるものでありました。

この記事で、「草の根のフェミニズム」と呼んでいるのは、まあ例示したのは少し過激な意見でしたが、本当は森さんもその一人なんですよ

この記事で示したように、「フェミニズム(大抵は女性の地位向上や社会進出を指す)は女性のためにもならない」という言説は私には受け入れられないんですね。それは結局「女性の地位向上や社会進出を経ずに女性の権利擁護を進める」という方向にフェミニズムが舵を切ることを許してしまいますから。森さんもフェミニズム批判者のようですが、全く同じロジックを使っていらっしゃる。

日本のフェミニストは、いわばねずみ溝の最初の犠牲者のような立場にいます。表向きは被害者の代表を装い、内実は自分たちに追従する女性(本当の被害者)を増やすことで利益を得ています。男女共同参画政策により、自己実現のために働く既婚女性が増え、身内の介護のために未婚のまま働き続ける女性、死別でシングルマザーになった女性などが嫌がらせを受けても、男性上司は触らぬ神に祟りなしで黙認するといった光景を目にするようになりました。

ちなみに、今はエリートのフェミニストでも、記事中の問題に対処しようとする人は少なくありません。これまでの「女性の進出」政策への反省があるのかは知りませんが。

仮に昔の基準でのフェミニスト、すなわち「エリートのフェミニスト」を潰せたとしても、それで草の根の女性からなるフェミニズムが盛り上がってしまっては、元も子もありません。そして更なる問題点は、すでにフェミニズムがそういった構図になっているにもかかわらず、多くの反フェミニストはそれに気づけていない、あるいは気づいていても結果的にエリートしか批判できていないということです。

昨年の国際女性デーでは、TBSの女性記者が書いたエッセイが炎上しました(いわゆる「なりたくなかったあれ」事件)。また今年は、岩波書店のスピーチが炎上したそうです。この2つの炎上には共通点があります。エリートフェミニズムの主張を、草の根フェミニズムが攻撃したという構図であることです。

これは(彼女らによる抑制が利かなくなっているという意味で)エリートフェミニズムにとって由々しき事態であることはもちろんですが、反フェミニズム側もそれをただ嘲笑っているだけでいいのでしょうか。

草の根の女たちが地位向上を諦めたとしても、それは男たちの「奪われた地位」を取り戻せることを意味しません(そもそもそのようなものが「存在したのか」についても私は疑義を抱いていますが)。彼女らが求めているのは「家父長制2.0」であって「家父長制1.0=かつての家父長制」ではないのです。すなわち「彼女らの提示」を受け入れられる男だけを家父長にしようとしています。それを分かっている非モテ、インセル、KKOはどれだけいるのでしょうか。

私はミソジニー「ガチ勢」のマスキュリストでMGTOWである

私は「ミソジニーガチ勢」を名乗っていますが、すなわちそれだけ世間のミソジニーのレベルの低さに失望しているということでもあります。だからこそ私は『慈悲深いミソジニー』の記事を書きましたし、あるいは「MGTOWに近い立場」と名乗っているのです。

MGTOWの考え方についてはこれらの記事が詳しいです。MGTOWの中に入る背景は多種多様で、しかし大抵は異性獲得競争を勝ち抜くだけのリソースがなくなってしまったり、あるいはそれにバカバカしさを感じるようになったりして入るようです。私はどちらかというとrei氏の指摘している背景に近く、また10代のころの異性経験により、「女から男への暴力の根絶」を訴えるのに都合がいいから入っているところがあります。

ふたつのイノベーション

ところで先のちよさき氏の記事では、MGTOWの問題点として人口再生産に貢献しないことを挙げています。

一方でMGTOW的男女平等にも問題はあります。それは、MGTOWのような男女の役割から降りる人々は人口の再生産に貢献しないということです。彼ら(彼女ら)はパートナーを形成しないので、当然子供も生まれません。つまり、そのような男女平等主義者は出生率が高い集団にいずれ取って代わられる運命にあります。これはMGTOW的男女平等に限りませんが、出産が女性にしかできない以上、女性の自己決定権・社会進出と人口の再生産をどうやって両立させるかは難しい問題です。どうも有性生殖と男女平等というのは相性が悪いように思います。

この問題はマスキュリズム系note著者のMRA for everyone氏も似たようなことを取り上げており、少子化を改善させないとマスキュリズムも次世代につなげられないという懸念を示しています。

少子化の問題点は、結局持続可能な社会でないと男性の人権を守る社会も存在しえないということである。
出生率における現時点での解決法は、やや急進的な社会進出は抑えて、その一方その中で最大限に男女平等な部分を戻さないように妥協していく。例えばLGBTの結婚などは人口が確保できない現時点ではやるべきではない。結婚は現状は異性愛者のカップルの保護にしとくべきだ。こんなのは、出生率を確保する策が見えてからやればいい。そうでなければ今まで進めてきた全てを失いかねない。

ただ彼は、だからと言ってフェミニズム以前の(すなわち皆婚社会だったころの)家族観を復活させてはいけないとも述べています。これは私も当然のことだと思います。皆婚社会に近づけば近づくほど、妻を持たない男はどんどん社会から排除されるようになります。ゲイもトランスもオタクも、だからこそ排除・差別されてきたわけですし、今でも(主に草の根の)フェミニスト含め、彼らを排除せよという声は強く残っているわけです。そして何よりも問題なのは、このようなやり方では私の言う「草の根のフェミニズム」を止めることはできないということです。

しかし、例えばMRA for everyone氏も「同性婚は現時点で進めるべきでない」というなど、現状少子化を改善させるには、家族観復活を念頭に置くジェンダー保守主義的な政策に迎合せざるを得ないところがあります。

結局女性が妊娠出産の能力を握っている以上、マスキュリズムには政策論的にフェミニズムを超えられない「壁」があるわけです。したがって私は、それを超克できるような技術革新、イノベーションがマスキュリズムには必要だと思います。すなわち、

①人工子宮の技術
②生物的男性のiPS細胞から卵細胞を生成する技術

この2つです。

実際、この2つの技術はまだまだ学術的にも基礎研究の段階です。「技術的に実現不可能とは言えない」ことがわかっている、というような状態です。人間に実用化されても、数年間は百万~千万単位の費用が掛かるかもしれません。しかし、これらの技術があるだけでも、暴走するフェミニズムの抑制しやすさ、マスキュリズムの広めやすさにかなりの違いが出てくると思います。

同性婚判決について

最後に、執筆中に出たこの判決について。

私はMRA for everyone氏とは異なり、(少なくとも海外において)同性婚カップルが子育てをするケースは珍しくなくなっていることから、ジェンダー保守派が言うような「同性婚で家族観の解体や少子化が一層進む」というのは根拠のない言説だと思っています。ただ、私も懸念を持っていないわけではありません。

それは、今後同性婚が一般化していくにつれて、レズビアンカップルとゲイカップルの間の「子供のできやすさ」の格差が表面化することです。これは将来的に「マスキュリズムのイシュー」として捉えることもありうると思います。(海外では)まあほとんどの場合、レズビアンでもゲイでも、何らかの理由で子供を育てられない異性愛カップルから養子として引き取るというパターンが多いですが、このほかの手段として、レズビアンでは精子バンク、ゲイでは代理母ビジネスというものがあるらしいです。まあ皆さんも分かりきっていることかと思いますが、後者にはシャレにならない程の金がかかりますし、精子バンク以上に様々なトラブルも多発しているようです。

先に挙げた2つのイノベーションは、こうした問題にもコミットしてくるのではないでしょうか。特にレズビアンカップルは、「生物的女性のiPS細胞から精細胞を生成する技術」さえ完成させれば、精子バンクを介せずともどんどん子供を増やせるので、子供のできやすさ格差はさらに拡大するものと思えます。ゲイの皆さんにも、この技術への支援・投資を、どんどん考えていってもらいたいです。