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切抜11『逆夢』

(「切抜」シリーズは、今胸の内にあるモヤモヤを言葉に乗せてまとめる、いわば心の整理をするための雑記帳というもので読んでいただければと思います)

①これまで

これは実験だ。私が私自身を変えるための、ある種の自分への人間改革。

新しいパートナーができた。相手は年下の養成所の仲間だ。好きなことに真っ直ぐで、日々どれだけ体を酷使しても夢を追うことを諦めず、それでいて夢と現実のどちらも程よくバランスの取れた生活を送っている、マイペースにストイックなパートナー。
付き合ったきっかけは私から告白してOKをもらって、という単純なものだったが、私の人間性の粗悪さにすぐにでも縁を切られてしまうのではないかと正直不安に思っていた。またすぐに手元から大切にしたいものが無くなってしまうのは怖い、相手が私にちらつかせたその感情がまた嘘だったというオチも考えたくない、ただ離れてほしくないという一心で、付き合いはじめのほんの数週間は「好い人」を装うことに必死になった。過度なスキンシップなども含めて相手の嫌がることは絶対にしない、相手がNOというものはそれ以降引き合いに出したりしない、相手が私のことを好きになってくれずとも、とにかく相手にとって心地の良い関係と距離感をまずは構築することに注力していた。だがそんな関係を馴染ませる前に、私たちは養成所で舞台の発表を迎えようとしていた。
本番まであと2週間、1週間と暦が日々捲れていく中でLINEの連絡はなるべく欠かさず行なっていた。「会いたい」「一緒に居たい」と、構って欲しいという気持ちが昔から強い私だったが、LINEではその二言は絶対に発さなかった。何より、相手が忙しいなりに返事を寄越してくれることが素直に嬉しかった、私はそれだけで充分だった。お互いに練習と稽古、仕事、バイトに勤しんで会う時間なんて全く取れないからということで、向こうから気を使ってオンラインゲームに誘ってくれたり、たまに私の我儘で通話に付き合ってくれることもあった。ただ、お互いに距離を測るようにあまり深く干渉せず、パートナーが一方的に話をしたいという時はどんなに酷い話でも頷いて聞いてあげることに徹した。「好きになってくれずとも」、私は相手のためにできることをずっと考え続けた。

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