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読書を好きになれたきっかけ

山登りに漠然とした憧れがある。
だけどまずどの山を登ればいいのか分からない。山道を登り切れる自信がない。体力もない。それにせっかくの自然を、頂上の景色を楽しめるのか。楽しみ方がよく分かっていない。そもそも、こんな素人が挑戦していいものなのか。ハードルが高いように感じていた。

私にとって、山登りと読書は近い感覚だった。


読書に苦手意識があった私だけど、最近やっと楽しいと思えてきた。そうさせてくれたのは確実に加藤シゲアキさんのおかげだ。

“好きな人の描いた物語を読みたい”
きっかけはシンプルにそれだけだった。だから私は加藤さんの著書を手に取った。ただ、まだ読書に対して苦手意識が強く、ぶ厚い長編を前に怖気づいた私は、まず短編から読もうと「傘をもたない蟻たちは」を購入した。

読みやすかった。
それは短編だからという理由だけじゃなく、多分、私の好きなテイストだったからかもしれない。
私は映画にしろ舞台にしろ、日常と非日常の狭間に存在するような物語に惹かれる。あり得なさそうで、でももしかしたら背後で起こってるかもしれない。近い将来起こり得るかもしれない。そんな作品が好きだ。心が震わされる。ロマンを感じる。加藤さんの作品はここに当てはまる気がした。

加藤さんが生み出す世界にすっかりハマり、処女作の「ピンクとグレー」から読み進めていくうちに、慣れたのか、次第に文字を読むことに抵抗がなくなっていった。
加藤さんの作品以外も読むことが出来るのでは・・?と、他に気になった作品や話題になった作品も読んでみることにした。

読めた。読み切ることが出来た。

これは私にとって感動的なことだった。子供の頃、まわりがあっさり乗っていた自転車にやっと乗れるようになった時のような喜び。長年苦手だと思っていたことが出来る様になっている。他人から見たら「本を読むことなんて」と思うかもしれないけど、それでもすごくすごく嬉しかった。



(ニュアンスになっちゃうけど)そう言えば加藤さんは以前このようなことを話していた。

(人に迷惑をかけないことを大前提として)基本的に好きに楽しんでいいと思う。映画も小説も放映・出版してからは著者のものではなく読者のもの。だから止めようがどうしようがその人の自由」

「読書の敷居を下げたい」

そうか、難しく構えすぎていたんだ。もっと好きにしていいんだ。肩の力を抜いていいんだ。

最初から高い山を登らなくていい。途中で休んだっていい。続けてればいつしか体力はつく。立ち止まって景色を見てもいいし、全てを受け止めようとしなくてもいい。頂上の景色は自分だけの宝物として抱き締めればいい。もっと気軽に手を伸ばしていいんだ。

加藤さんの想いは、固まっていた私の心をやわらかくしてくれた。



加藤シゲアキさん。
作家活動10周年おめでとうございます。

10年前のこの日からずっと続けてきたからこそ、私は苦手だった読書を好きになれました。
加藤さんを知って、作品を知って、他の方の作品を知ることも出来ました。
世界が広くなりました。

あの頃の加藤さんを知らない私は、当時の加藤成亮さんの葛藤やしんどさもなんとなくでしか分かりません。分かったとしても当事者でない私が言葉にするのはちょっと違うかもしれません。
それでも、「叩かれる朝がきた」と耳にするたびに執筆中から発売日までどんな想いで過ごしてきたんだろうと想像しては、心臓がキンと冷たくなるような恐怖を感じます。

そんな当時の加藤さんが今の加藤さんを見たらどう思うんだろう。
謙遜するかもしれないけど、文学賞を受賞された時のように、少しは自分を褒めてあげたいと思っていたらいいな。

加藤さんの”書きたい”という熱量と、書くことが好きという想いが、これからもずっと加藤さんにとって素敵な形になりますように。
そして加藤さんの世界を、世界を通じてちょっぴり心を、これからもほんの少しのぞかせてください。


本当におめでとうございます。
そして、たくさんありがとう!



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