③回目 〜「メラトニン」から思うこと〜
✔️睡眠ホルモンとしてのメラトニン
→MT1受容体
メラトニンによる催眠メカニズムは、メラトニンがメラトニン受容体のうちMT1受容体に結合することに起因する。
その結果、体温や血圧、心拍数が減少し、眠りが誘導される。
メラトニン濃度が高い子ども達は、ノンレム睡眠の時間が長く、更にそのステージも深いので、グッスリ眠ることができる。
歳をとるにつれ眠りが浅くなることも、メラトニン濃度の低下が要因である。
✔️概日リズム改善ホルモンとしてのメラトニン
→MT2受容体
1日において、上図にある睡眠覚醒、体温変動、メラトニン濃度のリズムだけでなく、多くのホルモン分泌、神経活動、DNA合成など細胞レベルの活動も、24時間リズムで変動している。
ここで、実際には体内(中枢)時計は24時間より少し長めに設定されており、メラトニンがメラトニン受容体のうちMT2受容体に結合することによって、24時間に修正される。
逆にメラトニンの合成自体も、体内(中枢)時計の刻む時刻に影響されている。
これは光条件とは別に、体内(中枢)時計が夜に近づくとメラトニン合成が始まり、朝に近づくと終わる仕組みになっているということある。
体内(中枢)時計は視交叉上核にある複数の神経細胞で構成され、そこから発した信号が上頸部交感神経節を経由し松果体に届き、メラトニン合成が始まる。
結局は、体内(中枢)時計に合わせた生活習慣が必要である。
一般的に、「朝の光を浴びて13時間くらいでメラトニン分泌が始まり……」とよく聞く説明は、厳密には誤りである。
何故ならメラトニン合成は体内(中枢)時計の影響を強く受けており、体内(中枢)時計の時刻が1日で大きく変動することは無いからである。
✔️思春期とメラトニン
→メラトニンによる性腺抑制作用
メラトニンは、生殖腺刺激ホルモン放出抑制ホルモンの分泌を促す作用がある。
そのため、ヒトや多くの動物では、子どもの頃はメラトニン血中濃度が高いために性腺の活動が抑制され、やがてメラトニン濃度が低下してくると思春期が始まる。
百年以上前は平均14-15歳であった初潮年齢が、
今では12歳まで大きく下がってしまった。
環境ホルモンが要因として有名であるが、実はメラトニン濃度の低下も大きな要因の1つである。
最近は17時前には夕方を迎え、あっという間に外は暗くなる。
けれど私たちは、室内で証明をつけ、夜遅くまでテレビ、SNS、ゲーム、勉強などする生活が定着してしまっている。
コンビニに至っては24時間明るいまま……
睡眠は不足し、朝起きれず、日光を浴びる時間も減り、子ども達でさえメラトニン分泌量が低下し、生物的な限度と思われる年齢まで、初潮年齢は低下してしまった。
✔️乳がんとメラトニン
メラトニン濃度が低下し初潮年齢が早まったために、
乳がんのリスクが大幅に高まってしまった。
要因の1つは、出産や授乳によって乳腺細胞が高度に分化する前から、高濃度の性ホルモンに晒されてしまうからである。
実は性ホルモンの1つ、エストロンの代謝産物16α-OH-E2は、乳がん、卵巣がん、子宮体がん、前立腺がん患者に多いことが確認されているが、この16α-OH-E2がさらにE3にまで変換されてしまえば、発がん抑制作用があり、結局は代謝酵素の働き具合による個人差も生じている。
また、エストロンの代謝産物4-OH-E1も発がん性を確認されているが、これもさらにメチル化されれば、発癌抑制作用をもつ物質に変換される。
結局は、性ホルモンの中間代謝産物に発がん性がみられ、その代謝活性の個人差が発がんリスクに影響するのである。
そのため性ホルモンを不必要に低年齢時から分泌されることを抑える、つまりしっかりとメラトニンを分泌させる生活をすることが重要となる。
その他のがんリスクとメラトニン不足の関係も、様々な報告がされている。
例えば、細胞への酸素提供が不足した時に発現する低酸素誘導因子や、がん組織の成長に関与する血管内皮細胞増殖因子、がん細胞の転移に関与するRhoキナーゼを抑制することで抗がん作用を示す。
また、乳がん細胞のDNAにおけるエストロゲン応答部位での結合阻害作用、がん抑制因子P53の発言量増加によるがん細胞増殖抑制作用、がん細胞による成長因子取り込み阻害作用、がん細胞アポトーシス誘導作用などの知見も報告されている。
初潮年齢低下や乳がんの関係も
乳製品だけでなくフッ化物応用が影響しているとは
つくづく残念である……
カルシウム摂取やフッ化応用を
健康の為にとも思って推奨していた
以前の自分が無念で仕方ない。
★☆☆★
今回この投稿にあたり、杏林予防医学研究所が運営している杏林アカデミーの講習内容と、テキストを参照させていただいた。
ご多忙の中、山田豊文先生はじめ関係者の方々には、ご確認とお許しをいただいたこと、心より感謝申し上げます。
参考リンク
★☆See you soon ☆★