吾輩は童貞である。魔法使いになる気はまだ無い。㉚マッチングアプリ編その13

前回の記事

これは魔法使い化の未来に抗う、アラサー童貞の記録である。


筆者スペック

身長:160代後半
体型:やや細め
学歴:私立文系
職業:税金関係
趣味:映画鑑賞(ハリウッドからクソ映画まで)
最近疎かになっていること:自炊

登場人物紹介

ベビー
たまたま俺に彼女できた報告をしたばっかりに、今に至るまで俺の無能童貞恋愛相談を受け続けているかわいそうな童顔の友人。圧倒的な恋愛強者でもあり、俺を本格的に恋愛戦場に引きずりこんだ元凶の一人でもある。
俺はコイツの彼女に『イケメンだがセンスのない男』だと思われている。

人妻の先輩
30代の先輩。本当にお世話になってます。
後輩くんに輪をかけて陽キャで呑んべぇ、旧官卒、体育会系、資格を目指して通学中で2児の母。強すぎないか人として?
マチアプ芸人が一段ギアを上げてキレ出したのを冷めた目で見ていた。

Re:ゼロからはじまるマチアプ生活

残弾が消滅した。

前回、恋愛だけにリソースを注ぐのをやめようと決意した俺は、学生時代やっていたスポーツを再開するべく社会人サークルに入会し、道具も一通りそろえることにした。

しかし、それは恋愛に全くリソースを注がないという意味ではない。

純粋な趣味ではあるが、これが俺の人としての厚みを増し、結果としてそれが人間的魅力を増し、彼女を作るうえで有利に働いてくれれば…という不純な動機がないわけでもない。あわよくばサークルで出会えるかもしれないしね。

そして、並行してマチアプをする。所詮マチアプ。女の子の指先に生殺与奪の権の全てが乗せられているわけだから、そんなものに全集中したところで、はっきり言って不毛と言わざるを得ない。こんなものは片手間くらいでちょうどいいのだ。『まず自分の人生を謳歌してない人に女の子は寄ってこないよ』(職場のお姉さまの受け売り)

とはいえ、だ。

方針を決めなければならない。

魔法使い化のデッドラインが迫るまで、既に1年半を切っている。

これまでと同じようにやみくもに女の子にアプローチをかけること…スマホに張り付いて数撃ちゃ当たる戦法をやめ、マチアプに時間を割きすぎないことを意識するというのだ。つまり、俺が恋愛弱者男性であるにも関わらず、より短時間かつ最小限の労力を以て成されるような恋愛タクティクスを、可能な限り洗練することが求められる。

ならば、どうするか。

実は、とっくの前からずっと言われていたことだった。

人妻の先輩『ケツアナゴ(筆者)はさあ、女に合理性を求めるよね』

俺『いやまあ確かにあまりにロジックから外れた人は嫌いですけど、そんなアンタ人をクソ野郎みたいに』

人妻の先輩『え?違うの?だから付き合えてないんじゃないの?』

俺『…』

そりゃ、アプリの女の子を逐一記事にしてる奴が善人なわけなかろう。

人妻の先輩『女に合理性を求めるなら歳上行った方がいいよ

……

………

ベビー『お前そんなに歳上のこと嫌い?』

俺『いや嫌いとかじゃなくて、歳上だけに絞るとそれ以外との出会いの機会を損失することになるんではないかと…』

ベビー『お前のツラを見て寄ってくる歳下なんてシンデレラ気取りの夢見がちガールしかいねえよ。もう分かっただろ?それを捌けるスキルがお前にあるのか?』

俺『…』

ベビー『お前のルックスと頼りのなさのギャップで無理ってなる可能性高いから、歳上にかわいがってもらう方が戦略的には絶対いい』

俺『…』

答えは得た。大丈夫だよ遠坂。オレもこれから頑張っていくから。

歳上に全振りした。ターゲットは29歳~32歳。

他の検索条件は、未婚、子なし、非喫煙、土日休み。おしり。

…綺麗事だと思われるだろうし、リアル・人間の大半には嘘だと思われているし、「結局それってテメエの匙加減だろ」と突っ込まれたら終わりだが。

俺はそこまで外見にこだわっているつもりはない。

最低限の見た目さえあれば、後は中身だろう。

…結局それって俺の匙加減では?

ラウンド1:我ヴァーチェを駆るティエリア

今回マッチングした女の子は、メガトン(29)と呼称しよう。

海外旅行とミュージカルが好きな証券のバリキャリ。

withには「秘密の質問」という、相手が答えて初めて回答を閲覧できる機能があるのだが、何か知らんが初めてそれを使ってきた人だった。

どういうわけか回答やら俺の好きな映画やらがことごとくこの子の琴線に触れたらしく、向こうからデートに誘ってきた。

正直、迷った。X軸をかなり占有している。だが、やり取りをする限り別に嫌な感じはしないし、俺より年収高いし、ブスというわけでもない。

会ってみれば好きになるかもしれない。何より、向こうが熱量高めにグイグイ来てくれるのは嫌な気はしない。受け身な女性よりはずっと好感が持てるというものだ。

俺はこの人と会ってみることにした。何事も経験である。仮にナシだったとしても、店のレパートリーが増えればそれは俺の糧になるわけで。

──いや広すぎィ!!

申し訳ない。さすがに許容できない。だが、予兆ならいくらでもあったのだ。全身を写しきった写真は少なかった。体型も太めと自己申告していた。写真詐欺だと喚くにはいささか俺が期待を抱きすぎたきらいがある。
だが…これは…いくらなんでも…。ええ…?(語彙の喪失)

あとなんでそんなギャルよろしくゴテゴテしたネイル付けてんだよ(追撃)。俺はネイルは好きだけれど、ギャルみの少ない先が丸いやつの方がすこ。…いや別にメガトンの好きにすればいいと思いはするが。LLクラスのミニバンがホイールだけ小さいものに換装したところで軽になるわけではないので。

……

………

モノリッドというくびきからよくも悪くも解き放たれた俺は、ようやくベビーの諫言を素直に聞き入れて歳上狙いにシフトしたものの、この頃の出会いに関するモチベーションは半滅していた。…より正確に言い換えるなら、「楽できるところは楽しよう、その上で会ってみて”良い”と思える相手であれば本腰を入れればよい」と思うようになったのである。

俺は、生まれて初めて女の子とのデートで店を予約しなかった。

デートスポット周辺のカフェくらいは頭に入れていたが、それだけだ。

その辺りのことに関してはメガトンが詳しいというので、お言葉に甘えることにした。

空いてるカフェでフラペチーノを頼む。(後で徴収する前提の、一応のパフォーマンスとして)俺がまとめて会計するが、メガトンは俺が何かを言う前に速攻でPayPay送金してきた。

やはり受け身でない女の子というのはいいな。「男に尽くしてもらって当たり前」という姫思考でないのもいい。コミュニケーションも円滑で、メルヘン趣味でも頭までメルヘンなわけじゃないから負荷が少ない。

そして、これは盲点だったのだが、一つ特大の収穫があった。

「歳上相手にポカをやらかしても、自分がそれを許容できる」という点だ。

ポメラニアン(⑦恋活パーティー編その1)からモノリッド(㉙マッチングアプリ編その12)に至るまで、俺は同い歳~歳下としかデートしてこなかった。これはたまたまそうなったに過ぎないが、結果としてそれは童貞の俺に「失敗は許されない」と自分自身に過剰な気遣いを強いるシチュエーションを形成していたのである。

冷静になって考えてみれば当たり前のことであるが、女一人抱いたこともない童貞に完璧なデートができるわけねえだろう。

無論、完璧に近づけようと奮闘する努力は必要だが、それは完璧でなければならないということではない。自分なりに頑張って頑張って頑張って頑張ったのに、その果てに生じた些細な瑕疵を見咎めるような女の子と付き合いたいか?俺は嫌だね。

そういうこともあって、俺は過去一番肩の力を抜くことができた俺は、デートであるにも関わらず気楽にメガトンと接していた。気分はさながらガンダムヴァーチェを駆るティエリアである。

ガンダムヴァーチェ。

全体的に、メガトンは悪い人ではないし、基本的に俺を褒めて入ってきてくれるので悪い気もしなかった。

この人が度の超えたデブという文字通り特大の瑕疵さえ抱えていなければよかったのだが…。

しかし…俺はそこまで外見にこだわっているつもりはない。

最低限の見た目さえあれば、後は中身だろう。

メガトンは清潔感のある女の子だ。性格もきっと悪くない。まだ様子をみてみてもバチは当たらないのではなかろうか。痩せたら可愛くなりそうな顔立ちではあるし。うん。

……

………

俺「せっかく映えスポットに来たんだし、映え写真撮りませんか?」

メガトン「いいよ!じゃあ私カメラマンやるね!」

俺は、メガトンの撮った俺の写真をマチアプのプロフに追加した。

これは、魔法使い化の未来に抗う、アラサー童貞の記録である。

……

………

後半へ続く。

ベビー「いや、なんで続けるんだよ…」



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