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料理を教わったことが二度、ある。

ハタチで風俗をしていた時、出勤二日目で性病をもらった。

大学の仲良しの先生に相談すると、
風俗より性病よりゆいが免疫力が下がりっぱなしな生活をしていることで罹患したことが問題だと言われた。

「とりあえず自分が食うものくらい自分で作ってみなさい」とのことだった。

先生は自分のキッチンに私を上げてくれた。風俗嬢で性病持ちの私を。

まず本屋さんに寄った。
「なんでもいいから、ビジュアルやデザインで選んでいいから、好きだと思えるレシピを探してみ」と言われて、生まれて初めてレシピを手に取った。

それから、先生の家で野菜炒めと鯖の味噌煮を作った。

先生が教えてくれたのは、

レシピは一度読んで、あとは記憶で作る
(ペラペラめくったり、確認したりする労力を削減するため。全部覚える必要はない。みりんより醤油の方が多かったような。生姜も入ってたっけ? あとは忘れたから適当、みたいな、アバウトで良い)

味見は2回まで。
2回以上すると訳がわからなくなる。
食材と自分でコミュニケーションをとるため、レシピに忠実である必要はない。とにかく自分好みの飯を目指す。

・洗い物を最小限にするために、まな板と包丁は極力使わず、肉も野菜もいけそうなのは全部キッチンバサミでカットする

野菜は強気で強火

だった。

先生は一切手を出さず、手際が悪い私を見守り、自信なさげにだした私の二品と先生の作り置きのおかずを皿によそって、おいしいおいしいと言いながら二人で食べた。

私は料理を覚えた。


当時付き合っていた男の家でとにかくいろんな物を作った。

好きなものを作る喜びを私は知った。



和歌山で暮らし初めてからほとんど毎日自炊をしていて、早一年半の時が経った。

ここ最近の私といえば、コロナにかかり生理が来なくなってホルモンバランスはガタガタ、メンタルはグチャグチャ、なのに資格試験の日は容赦なく迫ってきて常時半泣き。


自分の内なるバイオリズムが全くコントロールできないストレスは過食で解消した。

4-5人用の大きな家族鍋で野菜と肉をぶち込み、米と共に1日で一気に全部食べきった。同じものばかり来る日も来る日も大量に食べ続けた。
お腹が空いてなくても食べたし、食べた後には口寂しくなってまた食べた。
食べても食べてもなんかイライラして、満足できなくて、また食べた。

そんな生活を続けると大層太る。当たり前だ。

ファーストステージは、可愛いショートパンツなど余裕で履けなくなる。いいんだ、私はゆるワンピースを着るから。構うもんか。


次の段階にくると、ウエスト緩めで買っておいたチェーンソーパンツが、パッツパツで本当にしゃがめなくなる。物理的に。
だいたい造林(苗を植えたり、植える前の山づくりがメインの仕事)なんて地面の周りに用事があるのだ。しゃがめないと仕事にならない。
なので若干変な姿勢で無理やりしゃがんで作業していたら、

盛大に腰を痛めた。

さすがに……やばい。
仕事に支障をきたして、しかも弊害も出ている。プロのデブだとしても身体を痛めるのはさすがにまずい。

「過食の対処法は、我慢する」
しかないように思えるが、
みなさん、それが出来るなら私のお腹はこうなっておりませぬ。

人間にはそれぞれ出来ることと出来ないことがあるのだ。
私に我慢は無理。



そんな折、うちに居候しているお姉さんが「ピザを一緒に作ろう」と誘ってくれて、一緒にピザを焼いた。

指が沈む生地


捏ねたり、寝かせたり、捏ねたり、大変で手間がかかったけど、めちゃくちゃ楽しかった。

全部盛りピザ


久しぶりに作るのが楽しいと思った。

次の日はお姉さんと熊野古道を一緒に歩いた。


家に帰って、
「さぁ何を食べようか」と冷蔵庫を物色し始めたお姉さんはタッパに入れた米を温め、梅干しを取り出し、
ははーん、直食べ(器にいれず直で食べること。フライパンを皿がわりにしたり、鍋を皿がわりにしたりする、強いて言うなら保温効果が期待できる)ね、私もよくするわ〜

と思ったら、お姉さんは手に塩をつけ、
ちぃちゃなおにぎりを握りだしたのである。


ちぃちゃな二口サイズおにぎり。
おにぎりを、握りだしたのである…!!

他にもそうめんチャンプルーやらサラダやらジャーマンポテトやら、さといもやらグレープフルーツをささっと用意し、食べさせてくれた。
私は手作り協信者、手作り抂なので、ただでさえ手料理大好きなのは考慮したとしてもお世辞抜きに死ぬほどうまかった。
そして、お姉さんの調理姿をみていて気付いたことがある。

私が、爆食いしてたのは、
雑に調理したものを雑に食べていたからだ。


自炊した方がいい、器に盛り付けて食べた方がいいと人はいう。
私の直食べを注意した人は「自分を大切にしたほうがいい」と言ったが、
それは違うと思います。

栄養のない食事に甘んじることが、
インスタントで食事を済ますことが、料理に貴重な時間を割かないことが「自分を大切にしている」ことに繋がる人だっているだろう。
「自分を大切にする」ことには一人一人のバリエーションがある。

私は自分を大切にしたいから、自分が大切だから、自炊するんじゃない。
自分を大切にしていたから、皿洗いの煩わしさをなくすためにフライパンから食べてたの。

今の心境は、雑に食べると満足感が減るから、わざと少し手をかけたいと思った、それだけ。


ちょっと手を加えると、作ったことへの労力へのありがたみを感じて、「いただきます」な気持ちが少し増えるのだ。

「いただきます」な気持ちが増えると、いつもより食べた実感が湧くのだ。

料理は自分を大切にする手段じゃなくて、
適切な栄養補給をどう自分が満足できるレベルで行うか、そういう話だと私は思う。

お姉さんをみていて、
あー私って時短時短で食えればなんでもいいと思って随分と食事を疎かにしていたんだなと気付いた。

お豆腐と味噌汁は必ずつけるように改善。皿にも盛ります。



とにもかくにも、チェーンソーパンツが普通に閉まるようにね、、、
えぇ……がんばります、、、

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