生理の現場女子
女なのに、生理痛というものを経験したことがなかった。
生理にまつわるありとあらゆる大変なことも、この身に降りかかったことが一度もなかった。
私は、驕っていた。
いやー、女の勝ち組だと思ったね。
だって股から若干血が出てくるだけで痛くも痒くもないんだぜ?
ちょっと眠いな〜くらいなんだぜ?
ちょっと腰に違和感があるな〜だぜ??
勝ち組期間は24年で終わりを告げた。
私の数少ない生まれ持ったポテンシャルの一つが崩れ去った瞬間だった。さようなら。
和歌山に引っ越してからわりとすぐ、生理前の猛烈な食欲という形で私の生理は突如姿を現した。
私の場合、生理が来る1週間前から一食でふだんの3食分を食べ切る。
まるで雷にでも打たれたように脳がツーンとして、やめようやめようもうやめようと思っても全く抑えられない。
理性も自制心もまるで仕事をしない。
食べ終えるまで縛られても止まらない。
普段の量で無理くりやめると、1時間経ったくらいで腹が鳴りだす。
空腹感を感じる、のではない。まじで腹が音を奏でだすのだ。
しかも空っぽの胃に爪を立てているかのような痛みが走る。イライラもしてくる。
もう、どうしよもない。
それに加えて
めまいがする、眠い、とにかく体に違和感、倦怠感、身体が重い、なぞの被害妄想、熱っぽい、やる気が死ぬほどなくなる、しんどいetc...
しかも、生理がくるたびに、症状がひどくなっていく。
来月は死ぬんじゃないか、
もしかして死ぬんじゃないかとリアルに毎月思う。
でも身体のどこも痛くないだけ、もしかしたらマシなのかもしれない。世の中には一歩も動けなくなるくらい生理痛に悩まされている人だっているんだもんね。
と、生理の症状が重い人に思いを馳せてると、私の生理のつらさもマシに
ならなかった。
なるわけない。
誰の不幸がいちばん不幸なのかを無理やり比較させたい人が、この世にはいる。
結論は「あなたは、あの人よりマシ(だから我慢しろ)」だ。
不幸オリンピックの主催者は、必ず外野の人で当事者ではない。
当事者が相対的な不幸の順位を考慮して傷が癒えた姿を、この人生で私は目にしたことがない。
私は、仕事中に生理が始まった時がある。
つまり、職場とは山の中だ。
6時間は山の上だ。
大自然はあるが、山にトイレなんてどこにもない。
完全に油断してたし、
ただでさえおっちょこちょい系バカなので山の上にわざわざナプキンなんて持って上がってきていない。
股が明らかに濡れてきている気配がするのでヤバいなとは思った。
紺色なのでおそらく目立ってはいないはずだが、作業着の股の部分が変色し始めていた。
私は頭につけていた手拭いを外して畳み、
パンツの中に瞬時につっこみ、
そのまま働いた。
職務をまっとうした。
偉いとか責任感とかじゃなくて、
誰かに言いたいとは思わなかった。
言っても全然よかったとは思う。
男だらけだが、職場の人は配慮してくれただろうと思う。
自由に休ませてくれただろうと思う。
一言言ったら、山から解放してもらえただろうとも思う。
けど、私は休みたいんじゃない。
ふつうに働きたかったからいわなかった。
労りも優遇も優しさも気遣いも全部ほしくない。
そして、言わないのは全くもって私の都合と私の主義だし、
「言わない」選択肢にかんしても周りが気にする必要なんて全然ない。
だから、あの日のことは何もなかったことにした。
でも時間が経って、
山で不覚にも股から血を垂れ流したあの日が、
誰の記憶にも残らない何の変哲もない普通の日として流してしまっていいのか考えるようになった。
私は特に今後も生理ですと主張するつもりはない。
それは、主張して手に入れたいものが、誰かから受け取りたいものが、私は何もないからだ。
しかし、黙っているのは、あなたには関係ないでしょうという意味合いからではないということは強調したい。
誰も、なんにもしてくれなくて構わないが、
男だからとか、生理が軽いからとか、山で働いてないからとか、そんなの関係なく、
生理がない人から生まれた人はこの世にいないんだから、
関係はあるよね。
関係ない人なんていないよね。
各々がここに存在してるんだからさ。
私は、生理が女の身体の中で起ってるものとして片付けられるのがすごく嫌だと思った。
大変だね、かわいそうに、ではなく、
優しくしてあげなきゃ、女ってすごいなでもなく、
関係があるってことだけは
わかってほしい。
私は、生理の話がしてみたかった。
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