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スポーツ映画に見せかけた、ビジネス・ヒューマンドラマ。映画『マネーボール』のススメ

はじめに

この記事は「三浦さんに映画をプレゼンして観させよ(方法自由)」というGOの入社試験に向けて執筆した「5分で読めるコラム」を多少改訂したものです。
久しぶりに目に触れる機会があって、せっかくなので公開してみようと思った次第です。
紹介する映画『マネーボール』はNetflixで公開されているので、気になった人はぜひ観てください。
今回はクリエイター、プロデューサー、リーダー(先頭に立つ者)の視点から、大きく3つの見どころを紐解きます。


① 現実を動かすふたりのリーダー像
 -球界のCDとBP-

舞台は世界最高峰のプロ野球リーグ・通称メジャーリーグ。しかし物語の本質は野球とは別の部分にあります。描かれるのは、二人の男が中心となって巻き起こす「持たざる者によるジャイアントキリング」であり、「既存の枠組みから脱却する時に生じる対立とその乗り越え方」です。

貧乏球団のゼネラルマネージャー(チームの最高人事責任者)である主人公と、野球未経験ながら統計学的アプローチで勝利に貢献する優秀なアナリストが手を組み、軍資金の多寡で勝負が決まる「マネーゲーム」とも呼べる状況を覆すために奮闘します。「少ない資金で優勝するにはどうするか」という問いを立て、新たな可能性を見出して現実を動かす姿は、まさにCD(クリエイティブディレクター)とBP(ビジネスプロデューサー)の仕事に近いと言えます。


② 不公平なゲームに勝つための技術
 -金持ちの裏をかくディレクション-

予算が潤沢な競合に、1/3の予算で勝つ方法とは何か。主人公らが立てた「マネーボール戦略」のコアアイデアは、「科学的に有用だが軽視されている能力”で出し抜く」というものでした。たとえば、過去のデータから「とにかく塁に出ることが、得点期待値が最も高くなる条件である」という事実を見出して“四球を多く選んでいる選手”や“怪我や歳を原因に見放された選手”を安く獲得して起用する、などのアクションを取ります。勝つために先入観を捨て客観のみで戦う試みは、これまでの野球観を否定すること他なりません。貧乏球団が金持ち球団を刺すために編み出した工夫。真似して勝てないことよりも、別の軸を見つけて勝ちに行く。まさに持たざる者の生存戦略です。

ネタバレ防止のため詳細についての言及は伏せるものの、最終的には主人公とアナリストふたりの戦略が球界における選手の評価基準を変えて、市場を変えることになります。このエピソードは、「データそのものに価値があるのではなく、解釈に価値が宿るのだ」という事実に気づかせてくれます。


③ 異端と言われながらも真理に迫る情熱と葛藤

今ある常識に異を唱え、真理を追い求める。統計学の知見を野球に持ち込む手法は主人公らが発明したものではなく、机上の空論と馬鹿にされながらも研究を続けた先人から受け継いだものです。それを高度に体系化して実証実験する、つまり発想をもう一段階深めた上で実装しようとしたのです。まるで誰もが天動説を信じる時代に、地動説を唱えるように。旧来のやりかたを信仰する監督やスカウト陣との対立や、新たな理論を無謀と煽るメディア。現代では異端というだけで火刑に処されることはないが、結果が出なければ罵られ、精神的な火炙りにあう構図はどこか似ています。

先駆者はいつの時代も血を流す。それでも、球団のフロントとして成功したいという願望と、野球の真実を突き止めたいという衝動、2つの個人的な想いに導かれながら、組織のリーダーとして仕事を全うするために、勝利という結果にこだわる…爽やかに幕を下ろす、ご都合主義なスポーツ映画とはまるで違います。絶対的才能が勝負を分けると思われがちな世界で、知性を総動員してほんの一瞬の栄光や喜びを掴むためにもがき苦しむ。そんな主人公の姿は勇気づけられるし、どこか切なくもあります。


おわりに

今回紹介した『マネーゲーム』は、実話を基に制作された物語です。
「事実は小説よりも奇なり」とはよく言ったもので、人間が持つクリエイティビティへの可能性を信じざるを得ませんでした。野球の知識ゼロの方には理解しにくい部分もあるかもしれませんが、ゲームではなく野球ビジネスが主題なので未経験者であっても楽しめると思います。

読後感としては決して爽やかとは言えませんが、クリエイター、プロデューサー、リーダーとして「やるぞ、おれは」という気持ちで週明けを迎えるにはもってこいの物語です。あととにかくブラピがかっこいい。

言語化の練習のために、今後もコンテンツについてのコラムや雑文を残そうと思います。何かしらの学びを持って返ってもらえるように書きますのでよければフォローをお願いします!

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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