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【小説の紹介】井戸川射子「この世の喜びよ」

こんにちは。Kです。
Kくんの純文学読書会 紹介編 始めていきましょう。
今回の作品はこちら!

育児に立ち向かうあなたへ、
この世も次の世代も、
見守り、伝えられる喜びよ。
(当読書会の自作キャッチコピー)

本日紹介する作品は、
井戸川射子「この世の喜びよ」
こちらは『群像』2022年7月号に掲載されたものですけども、
芥川賞受賞作ということで、『文藝春秋』で全文載っていますし、単行本も発売されております。

動画でもご覧いただけます。

基本情報です。
井戸川射子さん 1987年生まれ
国語の先生をされていらっしゃいます。
2016年頃から詩を発表し始め、2019年には
中原中也賞を『する、されるユートピア』という詩集で
受賞されてます。
小説では、「ここはとても速い川」で、野間文芸新人賞を受賞。
「この世の喜びよ」で、第168回芥川龍之介賞を受賞。

あらすじ

ショッピングセンターの喪服売り場で働く女性店員の穂賀は、最近フードコートにずっと座っている少女を気にかけていた。
穂賀は昔、自分の娘二人が幼かった頃からこのショッピングセンターへ通い、時間をやり過ごしていた。喪服売り場の店員となった今は、休憩時間には昼食もとらずにショッピングセンター内を散策している。
フードコートの少女や、ゲームセンターの若い男性店員、メダルゲームをし続ける老父、大きくなった娘二人などと関わり合いながら、穂賀たちの季節は巡っていき――

じゃあ、この作品についてカワシにインタビューしていきたいんですけど、
まずどんな話ですか?

ある女性の心の内面を映し出した物語ですね。ある女性というのは、娘が二人いるんだけれども、もうすぐ自立するぐらいの年齢なので、育児がもう終わる時期に差し掛かってる。その時に、今まさに育児をしている、というか育児の手伝いをさせられている中学3年生の少女と出会うんだけど、その少女と関わることで自分の昔の育児を思い出すんです。

小説の舞台はどんなところですか?

舞台はショッピングセンターです。面白いのは、この小説を通して、ほぼ
ほぼショッピングセンターの中だけっていうところ。

少女は、家に帰りたくないので、ショッピングセンターに逃げてきてます。家に帰ると育児の手伝いをさせられるから。

それじゃあ、今度は僕のほうからKくんに、
この作品の作風について聞きたいんだけど、
何か特筆すべき特徴はありますか?

何と言っても二人称小説であるということですね。「あなたは」っていう形で進んでいきます。あなたは何々をした、あなたはどう思った。
独特な距離感があるんですよね。「私は」と主人公が話してるのとも違うし、「山田は」と、全然山田と関係ない人が説明してるのともまた違って「あなたは」っていう、独特の距離感で語られる。

どういう小説が好きな人が好むと思いますか?または、響くと思いますか?

普通とは違う文章を味わってみたいという人にはすごくいいと思いますね。
中原中也賞っていうのは詩人に贈られる賞なんですよね。やはり文章に味があるって言うか普通に小説だけを書いてきてる人とはちょっと違う。
特徴や雰囲気を持ってる文章だと思います。

誰に響くかでいうと、キャッチコピーでもありましたけど、育児中の人とか、育児を終えてそれを懐かしむ気持ちのある人とか、そういう人は特に響くんじゃないでしょうか。

それぞれの思う「読みドコロ」

僕は何と言っても文章だと思います。この素敵な表現。詩的な表現がなんともよくって。読んでるとその場の空気とか、匂いとか、気持ちとか、全部漂ってくるような、そういう読み心地がすごくよくて。なんといっても文章がいいです!

人生の生きる喜び、みたいなものについても描かれてるような気がするんですよね。すごく繊細で人間の感情の機微を捉えてるような作品なんですけど
その中にすごい力強さみたいなものを、生きる喜びを見出す力強さみたいなものを感じたんで、すごくポジティブでいいと思いました。

Kくんの純文学読書会的マトリクス

Kくんの純文学読書会チャンネル的マトリックスでは
「この世の喜びよ」は、

精神性・内面に5ポイント、
難解ポイントが1ポイントとなっております。

近いってほどじゃないですけど、同じゾーンの中に小砂川チトさんの「家庭用安心坑夫」が入っていますね。スタイルは違うんだけど、同様の達筆さを感じました。

そうですね、文章で魅せてくれる、魅了してくれるって感じしますよね。

アウトロ

本日は、
井戸川射子「この世の喜びよ」
を紹介させていただきました。
こちらは別動画で読書会も行っております。
深掘りしてお話ししておりますので、読んだ方はぜひそちらの読書会動画もご覧いただけたら嬉しいです。

ご覧いただきありがとうございました。
井戸川射子「この世の喜びよ」
ぜひ読んでみてください!


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