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『見習い神様、願いを叶えて。』#13 華の夏休み?

【前回までのあらすじ】
私は芳高くんに片思い中の高校2年生、吉沢みゆき。花屋敷ゆりは私の親友。私の恋を叶えてやる!と神様見習いシンが現れた。芳高くんと両想いになるためシンと私は奮闘する。
(全20話 恋愛×ファンタジー 毎日1話ずつ更新します)

 華の夏休みがやってきた。
 男女のグループで集まってプールに行ったり、キャンプしたり、浴衣を着て花火大会に行ったり。

 そんな夏休みが…
 待っているんじゃないの!?普通高校二年生ともなれば!
 

 どうして私は今、クーラーも付いていないこの教室で補習を受けているのだろう。
 ゆりもいなければ芳高くんもいない学校に、何が悲しくて…。

 二年生になってから、私の成績は急激に落ちてしまった。
 ゆりとマックで勉強して帰ることがなくなったし、シンが現れてからは授業にも集中できないし。 

「なんだよ、みゆき。なんで俺を睨んでる?」
 シンは呑気でいいよ。受験とかないんだもんね。
 シンにとっては、私の願いを叶えることが受験みたいなもんなのかな。
 もしシンが受験に落ちたらどうなるんだろう。私と芳高くんが両想いになれなかったら…。


「先生、鬼だよぉ。明日も補習あるのに、こんなに宿題出すなんて!一問一答って言ってたのに、一問じゃないの!?100問もあるじゃん!」
 生物のプリントを広げてすぐ、かばんに戻す。問題数の多さにクラッときて私はベッドに突っ伏した。

「一問一答って、一問を一答すればいいと思ってたのか?あっはっは。バカだなぁ、みゆきは。」
「バカって言うな。」
「そうやってたって明日は来るんだ。早く終わらせろよ。」
「分からないのばっかだから時間かかるの!自分がやらないからって偉そうにしないでよね。」

「しょうがないな。俺が教えてやるから、やるぞ。」
「え?シンが?カエルのこどもはおたまじゃくしです。とかそういうレベルの問題じゃないんだよ?」
「…俺のこと完全にバカにしてるだろ。」

「ほら、プリント出せ!」
 シンに促されて仕方なく私は机に向かった。

「一番、答えは表層回転。カエルの発生において、卵は上が黒くて下が白だっただろ?」
「黒ごまプリンみたいな?」
「で、黒の部分に精子が入ってくるわけだけど、そしたら黒い部分の表面が回転するんだ。これが表層回転。」
 あ、無視された。

「表層回転によって、黒でもなく白でもない灰色の部分が出てくるんだ。その灰色の部分は三日月みたいな形をしているから、灰色三日月っていう。はい、これが二番の答えね。」
「おおお。」

「三番の答えは原口《げんこう》だな。精子が入ったところのちょうど反対側が原口になるんだ。原口ってのは後々何になるでしょう?はい、みゆき君答えて。」
「えー、なんだろ脳みそ?」
「ブー!原口は肛門になる。つまり、精子が侵入した時点でまず肛門のポジションが決まるんだな。おもしろいよなぁ!」
「へぇー。というか、シン、なんでそんなに知ってるの!?」

「生物の先生が説明してただろ。授業聞いてたら自然に覚えた。」
「えー!シンって授業ちゃんと聞いてたの!?」
「聞いてたっていうか、みゆきといたら嫌でも聞こえてくるから。」
 シンってもしかしてすっごく賢い!?…これは調子に乗るから言わないとこう。

「次!四番!」


 こうして、家でも毎日のようにシンが先生となって勉強をした。
 シンのおかげで、着実に解ける問題が増えて、勉強がちょっと楽しいとさえ思うようになった。
 シンはちょいちょい私をバカ呼ばわりしてきたけど、なんだかそれも楽しくなってきた。


******************


 やっと夏休みらしい楽しいイベントがやってきた!
 今日はゆりがウチにお泊りに来ている。

 ゆりと私の間になぜかシンが座っている。自分も仲間に入れろってことなのかな?
 私はシンを通り越してゆりに話しかけた。

「ゆりは夏休み毎日何して過ごしてるの?」
「私は、ほとんどバイトばっかりだよー。」
「勤労学生だねぇ。バイト楽しい?もう大分慣れたんじゃない?」
「うん、慣れてきたんだけどね、コレ…。」
 ゆりは靴下を脱いで、包帯が巻かれた足の甲を見せた。

「どうしたのそれ!?バイトでやったの?」
「うん…。私、慣れてきてちょっと油断してたんだと思う。紙って集まるとすごい重さになるんだよね。本の入った段ボールを足の上に落としちゃったんだ。」
「痛そう…。」
「そうなの。パンパンに腫れちゃって。でもね、すぐに坂田が応急処置でアイシングしてくれたの。坂田、中学ではサッカー部だったんだって。だからこういうのには慣れてるって。私がどうしようってあたふたしてたときに、サッと冷静に対処してくれて。…坂田のこと、ちょっと見直しちゃった。」
 坂田、やるじゃん。

「包帯してるから大袈裟に見えるけど、ほとんど良くなってるから心配しないでね。」

「ひゃっ!いたっ!」
 シンがゆりの患部を指でツンツンしている。
「やっぱり痛いんじゃん。」
 シン!何やってるの!?

「何これ!?何かが私の足をつっついてるみたい。どうなってるの!?」
「シン!」
 私はうっかり叫んだ。
「シン??」
 ゆりは訳が分からないという顏をしている。


「ゆり、実はね…。」
 私はゆりに、星に願いをした次の日神様見習いのシンがやってきたこと、それから今までずっと願いを叶えるために一緒に過ごしてきたことを話した。


「そんなの…信じらんないよ…。」
「ゆりには見えてないもんね。」

「今、ここにいるってことだよね?」
「ゆりの真横にいるよ。どうしたら信じてもらえるかなぁ。そうだ、ゆり、シンに何か持ってくるように言ってみて?」

「じゃあ、あそこにあるクッションを…。」
「アイアイサー」
 そう言って、シンはベッドにあるクッションを抱きかかえてゆりの膝の上に置いた。
 ゆりからはクッションが浮いてここまでやってきたように見えてるのだろう。

「あ、わわわわわあわわわあわ。」
 ゆりがものすごく動揺している。
 シンは次から次へと目についたものをゆりの前へと持ってきた。
 ゆりの前に、物で形どられた『シン』の文字が出来上がった。
 シン…完璧楽しんでるよ…。

「分かった信じる…。ここに、シンがいるんだね…。シンってお茶目なんだね。」
 多分ゆりはまだ完璧には納得していないけど、この不思議な現象を説明するには信じざるを得ないという感じだった。

「ねぇ、じゃあ学校での私たちの会話とかもシンは全部聞いてたの?」
「うん、聞いてるよ。」
「じゃあ、体育の着替えのときも見てたってこと!?」
「いや、それはさすがに見てないから安心して。」
「よ、よかったぁ。」

「ねぇ、シンも高校生くらいなんだよね?シンってイケメンなの?」
「見た目は高校生くらいに見えるよ。イケメンって言えばイケメンかも…。」
 シンは見た目はかなりカッコイイ。でもあんまり褒めると調子に乗るからね。
「ふーん。俺ってイケメンなんだ。」

「イケメンと毎日一緒にいるなんて、みゆきも隅に置けないね。」
「そういうんじゃないし!私には芳高くんがいるんだから!もう、変なこと言わないでよね。」

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