鎌倉の桜道を人力車でゆらりゆらりと
昨年の春、桜を見たくて、友達と5歳の息子と鎌倉に遊びに行った。
鎌倉には、桜を見るために、全国から沢山の人が集まってくる。人々の賑わいを感じながら、元気に走り回る息子と、気の置けない友達とおしゃべりしながらの鎌倉散策は、心が明るく軽くなり、幸せな時間だった。
ポカポカと暖かな陽気のなか、鎌倉の街にいる人たちは、ゆっくりと自分の時間を楽しんでいた。
私たちは、隠れ家のような古民家を改修して造られた素敵なレストランでお昼の時間を楽しんだあと、鶴岡八幡宮にお参りに行った。
鶴岡八幡宮には、源平池と呼ばれる北条政子が夫である源頼朝の勝利を願って造らせたとも言われている池がある。この源平池の北側の池畔一帯は、牡丹園になっているのだが、春には満開の桜を見ることができ、この日も桜景色を楽しむことができた。
ここでは、旗上弁財天社の授与所で販売されている鯉のエサ〈恋💛のエサ〉を買い、池で飼われているという幾千もの鯉たちにエサやりができる。
息子は当然これをやりがったので、エサを手に入れ、エサやりタイム。息子があげるたびに、一斉に鯉が集まってきて、それが楽しくて、息子は大はしゃぎ。さらに、鶴岡八幡宮では神聖視されているという鳩がやってきて、鯉のエサを「ぼくにもちょーだい!」とおねだりしてきた。子どもにとってこんなに楽しいことはない。
この源平池には、一時間以上いたのではないだろうか。ゆったりとした時間が過ぎていった。
鯉や鳩にエサをあげて満足した息子を連れて、私たちはまた鎌倉の街を歩きだした。
すると、人力車が車道を元気よく走って行った。人力車は車の前を走れるのかと息子はびっくりし、「あれに乗りたい!」と目を輝かせて訴えてきた。とりあえずお兄さんに話を聞いてみたら、時間やコースごとに違った楽しみ方ができるという。わたしも友達も乗りたくなってきた。
でも、「いいよ、乗ろう!」とはすぐに答えられるようなお値段ではないので、私たちはカフェに入ってパフェを食べながらしばし休憩しつつ悩んだ。
甘いパフェにすっかり満たされた私たちは思い切って決断した。せっかくだしね、こんなに綺麗な桜の景色を見ながら、幼い可愛い子どもと人力車。乗らないなんてもったいないな!と、ちょっと心に気合いを入れて、先ほどの人力車のお兄さんに電話をかけた。
人力車に一人一人乗って、屋根をかぶせて、赤い毛布をかけて。
さあ出発!
人力車のお兄さんはお話上手で、綺麗な桜の景色を見せるだけではなく、私たちにたくさんの豆知識を教えてくれたり、笑わせてくれた。
お兄さん「いいくに作ろう鎌倉幕府って覚えませんでしたか?実は1192年じゃなかったんですよ!」
私たち「え~!!覚えたのにー」
息子「なんのこと~?ねえ、なんのことー?」
私たちは1192年と覚えていたが、今の中学校歴史教科書には1185年成立となっているとは…卒業してから歴史を学んでいなかったので驚いた。
ほかにも、鎌倉にまつわる歴史や現代のお話を聞かせてくれ、子どもにはクイズも出してくれた。
お兄さん「この木何歳だと思う?」
息子「50歳!」
お兄さん「ぶっぶー」
お兄さんのおちゃらけた声、息子の元気な声、私たちの笑い声が響いた。
すぐには決断できなかった人力車。心の底から乗ってよかった。
ゆらりゆらりと綺麗な桜が咲いている鎌倉の街を眺めながら、大好きな友達と息子と笑い合って、心がポカポカするような春の時間を感じることができたから。
友達は、この人力車に乗っている間、ずっと動画を撮っていてくれた。
それをあとで編集して、感動的なムービーに仕上げてくれた。
私はそのムービーを見て考えた。
私たちがこの世界からいなくなったとしても、あの日あの鎌倉で笑っていた時間、その歴史が消えることはなくて。
何十年何百年経ったとしても…。
私たちは、たしかにあの日、鎌倉の街を歩き、源平池で鯉にエサをやり、人力車にゆられながら笑っていた。満開の桜に包まれながら。
今この世界にいる人がみんないなくなっても。
「1192年じゃなくて1185年だったんですよ~」
ってお兄さんが言ったように。
2021年の歴史を学んだ未来の誰かが、笑いながら人力車に乗ってゆっくりとした時間を楽しんでいてほしい。
「桜綺麗だね~歴史を感じるね~」
未来にもずっとあの日の私たちがいた鎌倉の桜の景色や、人力車や、人々の笑顔が溢れていることを私は願っている。
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