見出し画像

遺影写真 

おじいちゃんの笑顔が大好きだった。

優しくて、ちょっと陽気な声で言うときの、明るい笑顔が大好きだった。

おじいちゃんの遺影写真はわたしが選んだ。

10枚くらい用意してあったが、そのうち8枚はカッコいい真面目な顔。

2枚は笑顔の写真だったのだが、そのうちの1枚がいつものあの優しい笑顔の写真。最高の笑顔。

まるで、「これを選んでくれ」と言われているように思えたから、迷わずわたしはそれを選んだ。

その写真を選んでびっくりしたことがある。

写真の前で手を合わせ、眺めていると、目の前で生きているおじいちゃんが笑ってくれているような、そばにいるような気持ちになるのだ。

写真が生きているようなのだ。

あたたかく、優しい気持ちになり、こちらまで笑顔になるのだ。

それはきっと、おじいちゃんが生前に向けてくれたその笑顔が、本当に愛情の感じるものだったから。嘘偽りのない愛情のある笑顔。優しい笑顔。

だから、最初は見るたびに泣いていた遺影写真も、今では見るたびにつられて笑顔になるような、気持ちがあたかかくなるような写真になったのだ。

「よしっ!がんばるよ!」

と言いたくなるのだ。

「おう、がんばれよ」

今日も、確かに聞こえてきた気がした。

***

いつか、わたしがこの世を去った後、誰かに思い出してもらう記憶は、わたしの本物の笑顔だったらいいなぁ。祖父のように。

その笑顔の写真を見たり わたしのことを思い出すと、あたかくて優しい気持ちになって、「今日もがんばるぞ」と思ってもらえるような、そんな人生を歩んでいきたい。


この記事が参加している募集

最後までお読みいただき、ありがとうございます♩ おすすめやサポートいただけたら、大変励みになります😉 いつも、スキヤコメントありがとうございます!