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いろいろありすぎ?! チェルシーが優勝争いの主導権を握って最終節へ :: WSL Watch #067

"WSL Watch #065"で残り2節の状況を整理して、個人的には「今シーズンはもう全部終わった後の総括的な記事まで、その時点での状況のまとめみたいな記事は書かなくていいかな?」って思ってたんだけど、この1週間でいろいろありすぎたっていうか乱高下っていうか、上がったり下がったりまるでジェットコースター状態だったんで、さすがにまとめといたほうがいいかな、と。次の週末はFAカップ決勝だから最終節まで2週明くし。先に結論を言っちゃうと、この1週間で優勝の行方が「マンチェスター・シティがちょっと有利」→「マンチェスター・シティがかなり有利」→「チェルシーがけっこう有利」って大きく揺れ動いた感じで。別にミラクルとかって感じじゃなくて、それぞれは予想できる範疇のことだとは思うんだけど、1週間の間に3回も、しかも、3回中3回って確率で起こるとは思ってなかったんで。

[5/1(水) 21:00] チェルシーが未消化試合でリヴァプールに敗戦

"WSL Watch #065"で「優勝するのはマンチェスター・シティかチェルシーか」って書いた通り、先週末の段階で優勝はマンチェスター・シティかチェルシーに絞られてて、両チームが残り試合全勝した場合は得失点差の争いになるけどマンチェスター・シティは直近2試合でかなり得失点差も稼いだからちょっと有利って状態で、まずは水曜日にチェルシーの未消化分のリヴァプール戦があって。で、その試合でホームのリヴァプールがチェルシー相手に4-3って打ち合いの末に見事に勝っちゃって。つまり、「残り試合全勝した場合」って前提が早くも崩れて、「マンチェスター・シティがちょっと有利」が「マンチェスター・シティがかなり有利」になっちゃった。

試合自体はある程度予想通り、チェルシーが攻めてリヴァプールが守りながらカウンターとかセット・プレイでチャンスを伺う感じだったって言っていいと思うけど。展開としては、チェルシーが早い時間に先制できたけどその後はリヴァプールがしぶとく闘って前半を終えて、後半の早い時間にCKからのゴールで同点、その後にまたCKからのゴールで逆転、80分にチェルシーが同点にしたけどリヴァプールがすぐにカウンターからのゴールで勝ち越して、83分にチェルシーにまた同点にされたけど92分にまたまたCKからのゴールで勝ち越した、つまり、80分以降に両チームが2点ずつ取るっていう忙しい感じで。ビックリしたポイントはいくつもあって、そもそも戦前の予想ではチェルシーが有利って感じだったと思うし、今シーズンのリヴァプールは失点の少なさが強みだからチェルシーを苦しめるならロー・スコアの展開で「チェルシーが攻めても攻めても点が取れずにリヴァプールがワンチャンをモノにする」みたいな感じだと思ってたらまさかの点の取り合いで打ち勝っちゃったし、1試合でCKから3点っていうのもなかなかないし、いろんな意味でビックリしちゃった。上に「予想できる範疇のことが3/3の確率で起こった」って書いたけど、3つの中ではコレが一番ビックリだったかな。ちなみに、CKは3本ともマリー・テレーズ・ヘビンガー(Marie Therese Höbinger)が蹴ったんだけど、同じ試合で3アシスト全てCKから記録したのはWSL史上初なんだとか。

で、この試合の結果、マンチェスター・シティに関しては「残り試合全勝した場合」って前提が「残り2試合で勝点4取れれば」に変わった、言い換えれば、チェルシーの結果を気にすることなく自分たちの結果次第になったって意味で、主導権は完全にマンチェスター・シティの側に移ったって状況になった。少なくとも週末の前の時点では。チェルシーのエマ・ヘイズ(Emma Carol Hayes OBE)監督も試合後のインタビューで素直に「優勝はかなり難しくなった」って認めてたし。

[5/5(日) 16:15] シティがアーセナルに痛恨の逆転負け

時系列的に言うと、まず水曜日にチェルシーの未消化分のリヴァプール戦があって、週末に21節の試合だったんだけど、5月5日(日)の現地時間でマンチェスター・シティがホームで14:15キックオフでアーセナル戦、夜にチェルシーがホームで18:45キックオフでブリストル・シティ戦って順番で。マンチェスター・シティの前提が「残り2試合で勝点4取れれば」ってことはアーセナル戦で負ければまた前提が変わるわけで、アーセナルはWSLを代表する強豪チームだからもちろん簡単な相手じゃなくて、結果的には負けちゃったってことなんだけど。そういう意味では、「それぞれは予想できる範疇のことだけど3/3の確率で起こった」の中でも、この試合の結果に関しては五分五分に近い類のモノ、3つの中でも比較的ありえる結果だったとは思うけど。試合自体は期待通りすごく面白かったし。

試合自体は、基本的にお互いに主導権を握る時間帯が行き来するような拮抗した内容で、最終的なスタッツを見ると保持率は45:55、シュート本数は16:15だったんで、マンチェスター・シティがリードしてた時間長かったことを考えると予想の範囲内だったのかな、と。マンチェスター・シティがローレン・ヘンプ(Lauren Hemp)のゴールで先制したのが17分で、結果的にアーセナルが途中出場のスティナ・ブラクステニウス(Stina Blackstenius)の2ゴールで逆転したんだけど同点ゴールが89分で逆転したのが92分だったんで。アーセナルが積極的にゴールを奪いにいく時間帯が長かった分、最終的にはアーセナルが保持率でやや上回った感じだと思うんで。

勝敗を分けたポイントを考えると、マンチェスター・シティに関しては「追加点を取れなかったこと」に尽きるのかな、やっぱり。もちろん、89分までリードしてて逆転されたことを問題視、つまり、「なんで最後にCBを増やして5バックにして守らなかったんだ?」みたいな指摘をするのが一般的だとは思いつつも、個人的にはマンチェスター・シティに関してはそうじゃないと思ってて。撤退して守りを固めることを目指してもなければ得意でもないし。むしろ、ボールを保持して試合をコントロールしながら追加点を取ることを目指してきたチームなんで。だから、時間が進むごとに保持ができなくなって防戦一方になっちゃったことこそが問題だったんじゃないかな、と。

正直なところ、選手層の差を含めたチーム力の差もちょっと感じちゃったかな。少なくとも現時点での差って意味で。交代選手で圧を強められたアーセナルとほとんど動けなかったマンチェスター・シティって感じだったっていうか。この試合でマンチェスター・シティは2人しか交代枠を使ってなくて、しかも、1人はケガで。でも、この試合、この相手、この展開、この状況で使える選手が他にベンチにいたか? って考えるとなかなか厳しくて。一方のアーセナルは主力級の選手がどんどん出てきて、途中出場のスティナ・ブラクステニウスが2点取ったことが象徴的っていうか、すごくわかりやすいと思うんだけど、交代選手で明らかにパワーアップできてて。個人的には、後半の頭から出てきたキム・リトル(Kim Little)の起用が特に興味深かったんだけど。この試合のアーセナルの中盤はカイラ・クーニー・クロス(Kyra Cooney-Cross)とフィクトリア・ペロファ(Victoria Pelova)とフリーダ・マーナム(Frida Maanum)がスタメンだったんだけど、その理由を試合後に訊かれたヨナス・エイデヴァル(Jonas Eidevall)監督が「誰がスタメンかも重要だけど、試合が終わるときに誰がピッチに立ってるかも重要で、こういう試合の終盤にはキム・リトルがピッチにいて欲しいと思ったんだ」みたいなことを言ってて、何ていうか、妙に納得しちゃった感じがあって。実際に逆転ゴールのアシストはキム・リトルだったわけだけど、キム・リトルっていえば当然近年のアーセナルのアイコン的な選手の1人で、リーダーシップも経験も十分なベテランなわけで、そういう選手をこういう使い方ができるって、やっぱりチーム力の現れだな、と。もちろん、結果的に逆転できちゃったからこういうことが言えるわけだし、マンチェスター・シティがそのまま守りきってても、逆転まではいかずに同点で終わってても全然おかしくなかったとは思うけど。"WSL Watch #062"で書いたFAカップの準決勝感じたトッテナム・ホットスパーとレスター・シティの差にもちょっと似てる気もしたり。ケガで不在のカディジャ・ショウ(Khadija Shaw)とジル・ロード(Jill Roord)を含めたチーム力って意味だとまた違ってくるんだろうけど、ケガ人はアーセナルにもいるわけで、少なくともこの試合の時点でのマンチェスター・シティとアーセナルのチーム力にはちょっと差があったのかな、と。もちろん、"WSL Watch #057"でも取り上げたベテランCBで、今シーズン限りで引退するステフ・ホートン(Steph Houghton)のホームでのラスト・マッチだったわけだし、最後にステフ・ホートンを使って5バックにする手もあったんじゃね? みたいな議論もあるとは思うけど。

ともあれ、この試合が終わった時点では、マンチェスター・シティが「残り2試合で勝点4取れれば」だった前提が「残り試合全勝した場合は得失点差の争いになる」に戻って、でも、この試合の結果で1点マイナスになったけどまだマンチェスター・シティが得失点差でもチェルシーを7点上回ってるって状況になったってことになる。

[5/5(日) 20:45] チェルシーが大勝して得失点差でも逆転

当然だけどチェルシーはマンチェスター・シティが負けたことを把握してる状態で21節のブリストル・シティ戦を迎えたから、タスクはものすごくシンプル。つまり、大量得点を取って勝つってこと。で、結果を先に言っちゃうと、見事に8-0で勝ってチェルシーがマンチェスター・シティとの得失点差をこの試合の結果だけでひっくり返しちゃった、と。コレが3番目のビックリ。チェルシーが勝つこと、何ならそれなりの得点差をつけて勝つことまではそれほどビックリじゃないにしても、さすがにこの試合だけでひっくり返すとは思ってなかったんで。もちろん試合の消化数はまだ揃ってないから順位は2位のままなんだけど、状況としては「マンチェスター・シティがかなり有利」が「チェルシーがけっこう有利」になった感じ。

実はこの試合のチェルシーに関しては、直前のマンチェスター・シティの結果以外にもいくつかのブースト要素みたいなモノがあって。例えば、この試合は今シーズンのチェルシーのホーム最終戦だったから、(詳しくは"WSL Watch #009"で触れてる通りだけど)長年チームを率いて数多くのタイトルを獲得してきたエマ・ヘイズ監督の下でホームのキングスメドウで闘う最後の試合だったってことがある。この試合ではエマ・ヘイズが息子を連れてサポーターに挨拶してたり、試合後にはセレモニーもあったり、けっこうエモーショナルな感じになってたし。他にも、シーズン終了後にチームを離れることが発表されてたフラン・カービー(Fran Kirby)とマーレン・ミェルデ(Maren Mjelde)にとってもホーム最終戦だったし。もちろん、対戦相手が最下位のブリストル・シティで、しかも、前節終了時点で降格が決まってたっていうのもあっただろうし。

試合自体に関しては、予想通りチェルシーが戦力で殴り続けるような展開だったんだけど、改めて考えてみるとこの試合にはローレン・ジェイムズ(Lauren James)とマイラ・ラミレス(Mayra Ramírez)がケガでいなくて、もちろん長期離脱中のサム・カー(Sam Kerr)もいなかったのに、本気で点を取りにくるチェルシーはものすごく獰猛っていうか、やっぱりそもそもの戦力が備えてる火力の強さは半端ないことを強烈に印象付けた感じだったかな。もはや、ちょっと怖かったし。ちなみに、浜野まいかはフル出場してた。最近、ちょっとずつ出場機会は得られてる感じ。

[5/18(土) 16:00] 熾烈な優勝争いの結末は最終節に

現段階での順位表は以下の通り。残り1試合の首位のマンチェスター・シティと残り2試合の2位のチェルシーの勝点の差は3で、得失点差ではチェルシーが1点上回ってるって状況。今週末はFAカップの決勝なんだけど、"WSL Watch #062"でまとめた通りマンチェスター・シティもチェルシーも勝ち残ってないから1週間空いて、最終節の直前のミッドウィークの5月16日(水)にチェルシーは未消化分のアウェイでのトッテナム・ホットスパー戦があって、週末の5月18日(土)の昼間に全試合同時キックオフで最終節ってスケジュールになってて、とりあえず、最終節まで決着がつかないことは確定してる。ちなみに、最終節の対戦相手はマンチェスター・シティはアストン・ヴィラでチェルシーはマンチェスター・ユナイテッド。どっちも簡単な相手じゃないし、アウェイ・ゲームだったりもする。

21節終了時の暫定のテーブル

現段階で「チェルシーがけっこう有利」だと思う理由はいくつかあって、それを含めて優勝争いのポイントを挙げると以下のような感じになるかな。

  • 日程的にはマンチェスター・シティが有利

  • でも、チェルシーがミッドウィークに対戦するトッテナム・ホットスパーは5月12日(日)のFAカップ決勝から中2日。しかも、トッテナム・ホットスパーはリーグ戦6位が確定してて、FAカップ決勝進出はクラブ史上初。つまり、モチベーション的にもリソース的にもFAカップに全振りなはずで、チェルシー戦では抜け殻状態になっててもおかしくない。

  • チェルシーが最終節で対戦するマンチェスター・ユナイテッドもFAカップ決勝に進出してるけど、日程的には1週間空くし、リヴァプールとの4位争いをしてるからモチベーションはそれなりに高いはず。

  • 仮に残り試合をマンチェスター・シティとチェルシーが勝って得失点差の争いになると、現状でも上回ってて残り試合が多い(=得点を取るために使える時間が長い)チェルシーがやや有利かも?

  • ちなみに、仮に勝点でも得失点差でも並んだ場合は総得点で決まるはずなんで、現状で失点数が少ないマンチェスター・シティのほうが実は不利だったりする。

パッと思い浮かぶポイントはこんな感じなんだけど、総合的に考えると「チェルシーがけっこう有利」ってことになっちゃうかな、やっぱり。特に得失点差とか総得点の争いになったときにはチェルシーに分があると思うんで。もちろん、マンチェスター・シティがアストン・ヴィラに、チェルシーがトッテナム・ホットスパーとマンチェスター・ユナイテッドに順当に勝つって断定はできないけど。

ともあれ、優勝争いが最終節までもつれるような展開になったのは、シーズンを通じて観てきた立場からするとシンプルにありがたいし、最終節がどういう状況になってるのか(=トッテナム・ホットスパー対チェルシーの点差も含めた結果)って点も含めて、今からものすごく楽しみ。もちろん、その前にあるFAカップ決勝も楽しみなんだけど。

[その他] 日本人選手が5人出場する試合が実現

優勝争いとは関係ないけど、"WSL Watch #065"でもちょっと触れたウェスト・ハム・ユナイテッド対レスター・シティもこの期間のトピックだからちょっと触れとこうかな。予想通り、ウェスト・ハム・ユナイテッドの清水梨沙と林穂之香と植木理子、レスター・シティの籾木結花と宝田沙織が全員スタメンで5人同時にピッチに立ったんで。試合自体は1-1のドローだったんだけど、ウェスト・ハム・ユナイテッドの先制点は林穂之香のアシストから植木理子のゴールだったり、籾木結花にも宝田沙織にも決定機があったり、なかなか面白い試合だったかな。

そういえば、"WSL Watch #065"では「男女問わず考えてもかなり珍しい事態なんじゃないかな?」なんて書いたけど、実は前日に行われたスコティッシュ・プレミアシップのセルティック対ハーツで、セルティックの古橋亨梧と旗手怜央がスタメン、岩田智輝と前田大然が途中出場で、ハーツの小田裕太郎と田川亨介が途中出場でプレイして、全員同時にピッチに立ったわけじゃないけど同じ試合で日本人選手6人が出場したらしい。ちゃんと調べたわけじゃないけど、今のスコットランドとかベルギーならたまにあってもそれほど全然不思議じゃないのかな。

あと、実は21節ではリヴァプールがマンチェスター・ユナイテッドとの直接対決で勝ってて、勝点差3で4位に浮上したのもこの期間のけっこう大きなニュースだったりする。チェルシーとマンチェスター・ユナイテッドに連勝したってことだし。ちなみに、長野風花はフル出場で、宮澤ひなたはベンチ入りしてたけど出場せず。シーズンが終わったら改めて総括するつもりだけど、今シーズンのリヴァプールの躍進は特筆すべきトピックだって言えるはず。

順位の話を最後にまとめると、優勝はマンチェスター・シティかチェルシー、マンチェスター・シティは2位以上が確定してて、アーセナルには2位の可能性が微かに残ってるけど、とりあえず、来シーズンのUEFAウィメンズ・チャンピオンズリーグの出場権はマンチェスター・シティとチェルシーとアーセナルに確定。4位争いは勝点3差で4位のリヴァプールか5位のマンチェスター・ユナイテッドのどちらか。6位はトッテナム・ホットスパー、7位はアストン・ヴィラで、8位〜10位はそれぞれ勝点1差で8位のエヴァートンと9位のブライトン&ホーヴ・アルビオンと10位のレスター・シティの争い。ちなみに、最終節はエヴァートンがアウェイでブリストル・シティ、ブライトン&ホーヴ・アルビオンがアウェイでアーセナル、レスター・シティがホームでリヴァプールと対戦する。11位はウェスト・ハム・ユナイテッド、降格する12位はブリストル・シティに確定してるって感じ。

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