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チェルシーが最終節に5連覇達成!! (WSL 23/24シーズン総括1) :: WSL Watch #073

昨年10月から約8ヶ月で全22節が行われたWSLの23/24シーズンが5月18日に無事に終了、最終節までもつれた優勝争いは勝点で並んだチェルシーがマンチェスター・シティを得失点差で上回って僅差で優勝、退任が決まってたエマ・ヘイズ(Emma Carol Hayes OBE)監督のラスト・シーズンを見事に5連覇で飾ったって幕切れに。で、せっかくシーズンを通じてWSLを追いかけてきたんで、いろいろ気付いたこととか考えたこととかをシーズン総括的にまとめておこうかな、と。事前に構成を考えてるわけじゃないけど。たぶん、数回に分けてって感じで。

最終節の優勝争いは約10分であっけなく(ほぼほぼ)終了

最終的な順位表は以下の通り。チェルシーとマンチェスター・シティが勝点55で並んで、得失点差で7点上回ったチェルシーが優勝ってことに。

23/24シーズンの最終的なテーブル

"WSL Watch #065"と"WSL Watch #067"でまとめた通り、シーズン最終盤の優勝争いはかなりスリリングで、個人的にはかなり楽しませてもらったんだけど、全てが決まる最終節に関しては思いの外あっけなかったかな、正直なところ。約10分で「あ、さすがにもうチェルシーで決まりだな」って状況になっちゃったんで。

チェルシーとマンチェスター・シティが同勝点、得失点差ではチェルシーが+2って状況で最終節を迎えてたんで、細かく言えばどっちかが引き分けたり負けたりって可能性もなくはなかったけど、現実的に観ててハラハラする展開になるには「チェルシーが苦労する状況で時間が進むこと」が必須で、相手がマンチェスター・ユナイテッドだし場所もオールド・トラフォードだったからけっこう期待しちゃったんだけど、前半8分でチェルシーがあっさり2点リードしちゃったんで。まあ、後で観てみたらチェルシーが圧倒的に強かったんだけど。当日の中継映像は、互いに当該試合の経過がインサートされるカタチだったから、アストン・ヴィラ対マンチェスター・シティを観てても、「あ、チェルシーが点を取ったんだ」って経過はリアルタイムでわかったんで。結果的にマンチェスター・シティも勝って得失点差での決着になったから僅差だったって言っていいはずだけど、実際のリアルタイムの感覚としては、「最後までハラハラ」みたいな感じではなかったかな、正直なところ。

大きな意味を持った浜野まいかのゴール

時系列的には逆になっちゃうけど、今シーズンのチェルシーの優勝、特にジェットコースター状態だったシーズン終盤の優勝争いを語るときに、"WSL Watch #067"で状況をまとめたタイミングと最終節の間の5月16日に行われた18節の延期分のトッテナム・ホットスパー対チェルシーの浜野まいかのゴールには触れとかないといけないかな。実はものすごく大きな意味を持つゴールになったんで。結果はチェルシーが1-0で勝って、浜野まいかが38分に決めたゴールが決勝点になったんだけど、この試合での勝点3がなければ、チェルシーは最終節を有利な状況で迎えられなかったんだから。

試合自体は戦前の予想通りチェルシーが押す展開にはなったけど、実はチェルシーがけっこう苦しんだっていうか、トッテナム・ホットスパーがけっこう健闘したって印象で。しかも、トッテナム・ホットスパーは残念ながら負けちゃったFAカップ決勝のマンチェスター・ユナイテッド戦から中2日だったから、抜け殻状態でもおかしくない? って状況だったのに。スタッツを見ると、保持率が43%:57%、シュート数が7:14(枠内は4:5)って感じで、もちろんチェルシーが上回ってはいるんだけど、このスタッツで最終的に1-0なら、最後まで何が起こるかわからない試合だったってことなんで。

この日の浜野まいかは右WG起用で、左WG起用されてたグーロ・ライテン(Guro Reiten)のサイドからの攻撃が多かったんだけど、低い位置での保持に上手く絡みつつ、逆サイドにボールが展開されてグーロ・ライテン(Guro Reiten)からクロスが入ってくるタイミングでファーに詰めるタスクをちゃんとこなせてた印象かな。ゴール・シーンもまさにそういうカタチだし、ハイライトに入ってる惜しいヘディング・シュートのシーンも含めて、何度かゴール前に飛び込めてたんで。早い時間帯のゴールだったからその後に追記点が入らないとは思ってなかったけど、この試合はもちろん、優勝にも大きく貢献した貴重なゴール、まさに値千金のゴールだったって言っていいはず。今シーズンの浜野まいかはリーグ戦6試合出場で2ゴールだったから、主力選手としてバリバリ活躍してチェルシーの優勝に大きく貢献したとは言えないかもしれないけど、今シーズンの優勝を語る上で忘れちゃいけない貴重な仕事をしたってことは間違いないんじゃないかな。

上位チームはジャンケンのような関係性?

結果的には今シーズンのリーグ優勝はチェルシー、FAカップ優勝はマンチェスター・ユナイテッド、コンチ・カップ優勝はアーセナルって結果に終わって、マンチェスター・シティが残念ながら無冠って経過になっちゃった。シーズンを通じた印象としては、マンチェスター・シティはかなり質が高い闘いを見せてたと思うけど。

で、リーグ戦を含むタイトル争いを改めて細かく見てみると、いろいろ複雑っていうか、以下のようにジャンケンみたいな関係性みたいなモノが見えてきて、ちょっと面白かったりする。

  • マンチェスター・シティ相手にシーズン・ダブルを達成して実質的にマンチェスター・シティの優勝を阻んだのはアーセナル。

  • チェルシーのコンチ・カップ優勝を阻んだのはアーセナル。

  • マンチェスター・シティのコンチ・カップ優勝を阻んだのはチェルシー。

  • アーセナルのFAカップ優勝を阻んだのはマンチェスター・シティ。

  • チェルシーのFAカップ優勝を阻んだのはマンチェスター・ユナイテッド。

他にも、マンチェスター・シティのコンチ・カップ優勝を阻んだのはトッテナム・ホットスパーだったり、マンチェスター・ユナイテッドはコンチ・カップではグループ・リーグで敗退してたりするし、アーセナルとマンチェスター・ユナイテッドがリーグ優勝できなかった理由はいろいろあるとは思うけど、上に挙げたようにお互いに潰し合うようなジャンケンみたいな関係性ってちょっと面白いっていうか、いかに熾烈に凌ぎを削り合ってたかがわかって興味深いな、と。

例年以上に熾烈だった優勝争いのポイントは?

今シーズンのリーグ戦を振り返ってみると、実質的に優勝争いをしてたのはチェルシーってマンチェスター・シティとアーセナルの3チームだったって言っていいと思うけど、それぞれのチームの優勝争いのポイントを、主に勝点を取れなかった試合で改めて振り返ってみると以下のような感じになるのかな。

チェルシー: 18勝1分3敗
1分3敗なんで勝点を取れなかったのは4試合、実はマンチェスター・シティにはリーグ戦1分1敗で、残りの2敗はアーセナルとリヴァプール。"WSL Watch #067"でも触れた通り、シーズン終盤にリヴァプール相手に負けたのはビックリしたけど、中位以下のチーム相手に取りこぼさない強さは際立ってたかな、やっぱり。しかも、FAカップは準決勝、コンチ・カップは決勝、UEFAウィメンズ・チャンピオンズリーグ(UWCL)は準決勝まで勝ち進んで、シーズン終盤はかなりの過密日程になってたし、シーズン半ばにチームの最大の得点源のサム・カー(Sam Kerr)をケガで失ってたし。ライバルのマンチェスター・シティとアーセナルはUWCLは本戦に出てなかったって点も含めて、かなり不利な要素は多かったはずなのに。

マンチェスター・シティ: 18勝1分3敗
チェルシーと同じく1分3敗なんで勝点を取れなかったのは4試合、アーセナルにシーズン・ダブルを喰らってるのとチェルシーと引き分けた以外で勝点を取れなかったのはブライトン&ホーヴ・アルビオン戦の負けなんだけど、やっぱり一番痛かったのはブライトン&ホーヴ・アルビオン戦ってことになるのかな。取りこぼさない強さって意味では、チェルシーに劣らない強さだっただけに。実はリーグ最少の15失点だったりもするんだけど、チェルシーほどの爆発的(暴力的って言ってもいいかも?)な攻撃力がなかったってことになるのかな。もちろん、シーズン半ばに主力として活躍してたジル・ロード(Jill Roord)を、最終盤に最大の得点源のカディジャ・ショウ(Khadija Shaw)をケガで欠いたのはものすごく痛かったと思うけど。

アーセナル: 16勝2分4敗
2分4敗なんで勝点を取れなかったのは6試合で、全22試合だって考えると優勝をするにはちょっと多かったのかな、単純に。内訳を見ると、負けたのがリヴァプールとトッテナム・ホットスパーとウェスト・ハム・ユナイテッドとチェルシー、引き分けたのがマンチェスター・ユナイテッドとエヴァートンなんで、やっぱり取りこぼしが多かったし。時系列で見ると、まずリーグ戦開幕前にUWCLの予選ラウンドで負けちゃって、開幕からの2戦でリヴァプールに負けてマンチェスター・ユナイテッドと引き分けて、完全にスタート・ダッシュに失敗したっていうか、躓いちゃったのが痛かったかな。その後は調子を取り戻したけど年末にトッテナム・ホットスパーとのノース・ロンドン・ダービーで初めて負けたり、年明けに残留争いをしてたウェスト・ハム・ユナイテッドに負けたり、大事なシーズン終盤にエヴァートンと引き分けたり、勝点を取れなかった試合のタイミングも悪かった感じ。

個別のチームの細かい振り返りに関しては別の記事で追って書こうと思ってるけど、こうやって勝点を取れなかった試合って視点で振り返ってみると、やっぱりチェルシーとマンチェスター・シティは本当に僅差だったんだな...なんて改めて思ったりして。ちなみに、秋春制になった17/18シーズン以降を確認してみたら、優勝チームが3敗したのは最多らしくて、リーグ全体としてはより今まで以上に取りこぼしやすい、言い換えると、コンペティティヴで難しいリーグになってるって言えそう。

個人賞はマンチェスター・シティが独占

残念ながら無冠に終わっちゃった今シーズンのマンチェスター・シティだけど、本当に充実してたことの現れって言ってもいいのかな? 個人賞はマンチェスター・シティが独占することに。

最終節の前日に発表されたプレイヤー・オブ・ザ・シーズンはマンチェスター・シティのジャマイカ代表FWのカディジャ・ショウ。"WSL Watch #069"で紹介した通り、カディジャ・ショウ以外にノミネートされてたのは、チェルシーのニアム・チャールズ(Niamh Charles)とローレン・ジェイムズ(Lauren James)、トッテナム・ホットスパーのグレイス・クリントン(Grace Clinton)、マンチェスター・シティのキアラ・キーティング(Khiara Keating)、レスター・シティのユッタ・ランタラ(Jutta Rantala)、ブライトン&ホーヴ・アルビオンのエリザベス・ターランド(Elisabeth Terland)、アーセナルのロッテ・ウッベン・モイ(Lotte Wubben-Moy)だったんだけど、今シーズンの活躍を考えれば納得の受賞って感じ。

ゴールデン・ブーツこと得点王もマンチェスター・シティのカディジャ・ショウ。ケガで最後の4試合は欠場したけど18試合で21ゴール、2位がエリザベス・ターランドとローレン・ジェイムズが13ゴールなんで、圧倒的な数字って言っていいんじゃないかな。

クリーンシートこと無失点試合が最も多かったGKに贈られるゴールデン・グローブはマンチェスター・シティのイングランド代表GKのキアラ・キーティングが9試合で受賞。22試合フルタイム出場だし、チームとしてもリーグ最少の15失点だったし、シンプルに素晴らしいシーズンだったんじゃないかな、と。ちなみに、2位はマンチェスター・ユナイテッドのメアリー・アープス(Mary Earps)で7試合、3位がチェルシーのハンナ・ハンプトン(Hannah Hampton)で6試合。

ちなみに、マネージャー・オブ・ザ・シーズンとかベスト・ゴールとか、PFA(Professional Footballers' Association / プロ・サッカー選手協会)が選ぶプレイヤー・オブ・ジ・イヤーとヤング・プレイヤー・オブ・ジ・イヤーとチーム・オブ・ジ・イヤー、FWA(Football Writers' Association / フットボール・ライターズ協会)が選ぶフットボーラー・オブ・ジ・イヤーも今後発表されるらしい。

チェルシーがUWCLグループ・リーグにストレート・インすることに

今シーズンのWSLの順位が決まったんで、来シーズンのUWCLの出場権も優勝したチェルシーと2位のマンチェスター・シティと3位アーセナルに確定した。実はWSL優勝のチェルシーも予選ラウンドからの出場になるはずだったらしいんだけど、今シーズンのUWCLの決勝に進出してるリヨンとバルセロナがそれぞれ国内リーグで優勝したから、どっちかが今大会の優勝チーム枠で来シーズンも出場する(=1つ枠が空く)ために、チェルシーは今シーズンと同じようにグループ・リーグにストレート・インできるっぽい。UWCLはグループ・リーグにストレート・インできるのはUEFAランクの上位3カ国の優勝チームと前大会の優勝チームの計4チームだけっていう狭き門なんで(ちなみに、1位がフランス、2位がドイツ、3位がスペインで、イングランドは4位)。残り12チームは予選ラウンドを勝ち残ったチームってことになるんだけど、マンチェスター・シティは予選のラウンド2、アーセナルはラウンド1からの出場で、予選ラウンド自体は7月に始まる(アーセナルとマンチェスター・シティが出場するのは9月頃からだと思うけど)らしくて、グループ・リーグは10月初旬からの予定。ちなみに、今年の夏は7月25日〜8月10日にオリンピックがあって、WSLの24/25シーズンは9月21日・22日に開幕するらしい。

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