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今シーズンのWSLのリーグ全体のトピックをざっくりと (WSL 23/24シーズン総括6) :: WSL Watch #080

"WSL Watch 073"と"WSL Watch #075"と"WSL Watch #076"と"WSL Watch 077"と"WSL Watch 078"に続くWSLの23/24シーズン総括の第6弾は、リーグ全体のことをざっくりと。例えば、入場者数の話とか。

WSLが発表した総括をチェック

まずは、WSLのウェブサイトに掲載された"Record-breaking 2023-24 Barclays WSL season concludes"ってタイトルのシーズン振り返り的な記事から気になったポイントを。

  • 得失点差で優勝が決まったのは2014シーズンにリヴァプールがチェルシーに競り勝ったシーズン以来史上2度目(シーズン移行時の2017年のスプリング・シリーズを含めて)。

  • 全132試合の内の73試合、全体の55%の試合で両チームが得点してて、この数字は過去最高。アストン・ヴィラのジョーダン・ノブス(Jordan Nobbs)が唯一過去14シーズンで得点を記録してる。

  • 23/24シーズンの総得点は437点。54点がボックス外からのゴールで383点がボックス内。全132試合の内、ホーム・チームの勝利が49試合、アウェイ・チームの勝利が59試合、引き分けが24試合。

  • 1試合平均のパス成功数が722本、パス成功率が78.9%、相手陣ボックス内でのタッチ数が50.5回、ファイナル・サードでのボール奪取数14.8回で、アメリカ、イタリア、スペイン、フランス、ドイツのリーグと比較してもトップの数字とのこと。

  • WSLとチャンピオンシップを合計した入場者数が100万人を突破。WSLだけで971,977人を記録してて、22/23シーズンの689,297人から41%増。

  • 1試合平均の入場者数は7,363人で昨シーズンの5,222人から41%増。アーセナルが今シーズンの間に最多記録を3回更新してて、最終的にマンチェスター・ユナイテッド戦で60,160人という最多記録を作った。

  • 中継の視聴者数に関しても過去最多を記録。3月にエティハド・スタジアムで行われたマンチェスター・ダービーのBBCの中継はWSL史上最多のピーク時997,000を記録。スカイ・スポーツでも3月に行われたレスター・シティ対チェルシーでピーク時で823,000を記録した。

入場者数に関しては16節終了時点で累計入場者数の最多記録を更新したってニュースを"WSL Watch #052"で紹介したけど、WSLだけで100万人に迫る勢いっていうのは率直にかなり凄いな、と。ちなみに、132試合で100万人を達成するのに必要なのは1試合平均7,575人。今シーズンが7,363人だから、来シーズンは十分実現できちゃいそう。あと、個人的にはホームとアウェイの勝利数とか、他国リーグとのスタッツの比較がけっこう興味深かったかな。

ちなみに、WSLとチャンピオンシップのCEOのニッキー・ドゥセ(Nikki Doucet)のコメントも載ってたりするけど、基本的には当たり障りがないっていうか、無難なコメントって印象だったかな、良くも悪くも。

入場者数の記録を大幅に更新

上で紹介したWSLオフィシャルの総括でも触れられてるし、今シーズンのアーセナルについて触れた"WSL Watch 075"でもアーセナルのホーム・ゲームの入場者数が桁違いだったって件について触れたけど、入場者数の面で今シーズンのWSLは大きく前進したシーズンだったって言えそう。

今シーズンの平均入場者数は以下の通り(小数点以下は切り捨て)。

  1. アーセナル: 29,998人
    14節のマンチェスター・ユナイテッド戦で史上最多の60,160人って記録を作ったのを筆頭に、全11試合で35,000人を超えたのが6試合、50,000人を超えたのが4試合っていう驚異的な入場者を記録。ちなみに、ホーム・スタジアムのメドウ・パークのキャパシティは4,500人(座席は1,700)だけど、上記の6試合はメンズ・チームが使ってるエミレーツ・スタジアムでの試合で、メドウ・パークで行った試合に関しては約3,500人って感じ。座席数1,700なのに3,500人とか入ってるってことは、それだけ立見席にも入ってるってことなんで、逆にけっこうビックリだったりもするけど。ちなみに、来シーズンは(UEFAウィメンズ・チャンピオンズリーグの試合も含めて)最低11試合をエミレーツ・スタジアムで開催することが発表されてる。エミレーツ・スタジアムでやればやるほど入場者数が増えるのか、エミレーツ・スタジアムでやる特別感が削がれるのか、どっちに転ぶんだろ? って感じだけど、前者のような気がする。

  2. マンチェスター・ユナイテッド: 10,956人
    アーセナル以外で平均10,000人を超えたのがマンチェスター・ユナイテッド。普段はメンズ・チームが使ってるオールド・トラフォードで開催した7節のマンチェスター・ダービーで43,615人、最終節のチェルシー戦で28,737人を記録したのが平均を大きく押し上げた感じ。ただ、通常使ってるキャパシティ12,000人のレイ・スポーツ・ビレッジでの試合も常に5,000人弱は入ってて、多いと8,000人くらいは入ってるんで、基本的には安定した人気があるチームって言えそう。

  3. チェルシー: 9,266人
    平均10,000人をちょっと下回ったのはチェルシー。普段はキャパシティ4,850 (座席数は2,265)のキングスメドウを使ってて、ほとんどが3,000〜4,000人って感じなんだけど、アーセナルのメドウ・パークと同じように、座席数が2,265なのに3,000人以上入ってるってことになる。10,000人を超えたのは4試合で、全てメンズ・チームが使ってるスタンフォード・ブリッジでの開催。アーセナルとの大一番だった16節では金曜の夜だったにも関わらず32,970人って最多記録を更新した。

  4. マンチェスター・シティ: 7,108人
    リーグ全体の平均の7,363人にちょっと届かなかったのがマンチェスター・シティ。つまり、上位3チームの数字が平均を引き上げたってことになる。ホーム・スタジアムはアカデミーと共用してるキャパシティ7,000人(座席数は4,998)のアカデミー・スタジアムなんだけど、ウィメンズ・チームにネーミング・パートナーが付いててジョイー・スタジアムって呼ばれてる。ジョイー・スタジアムでの試合はだいたい2,000〜3,000人くらいで、たまに5,000人を超えることがある感じ。メンズ・チームが使ってるエティハド・スタジアムを使ったのはマンチェスター・ダービーだけで40,086人入ったんで、この数字が平均を押し上げた感じらしい。個人的には、キャパシティ7,000人くらいのスタジアムって適性サイズな気がするし、ロケーション的にもジョイー・スタジアムはエティハド・スタジアムと同じ敷地内にあったりするんで、けっこう環境は整ってるって言えそう。もうちょっとジョイー・スタジアムでの平均が増えつつ、エティハド・スタジアムを使う試合が増えるといいんだけど。

  5. ブリストル・シティ: 6,973人
    昇格チームで結果的に降格しちゃったブリストル・シティだけど、入場者数の面ではかなり健闘した感じ。もともと集客力があるのか、昇格ブースト的なモノだったのかはわかんないけど。通年でキャパシティ27,000人のアシュトン・ゲート・スタジアムをメンズ・チームと共用してることもプラスに作用したのかも? とも思ったり。10,000人を超えた試合も2試合あって、シーズン最多は8節のマンチェスター・ユナイテッド戦の14,138人。

  6. アストン・ヴィラ: 5,099人
    通常はキャパシティ11,000人っていうなかなか立派なベスコット・スタジアムを使ってるアストン・ヴィラだけど、ベスコット・スタジアムでの試合は5,000人を超えてなくて、5,000人を超えた3試合、12,533人入った開幕戦のマンチェスター・ユナイテッド戦、10,076人入った17節のアーセナル戦、8,912人入った最終節のマンチェスター・シティ戦は全てメンズ・チームが使ってるヴィラ・パークでの開催だったりする。

  7. リヴァプール: 4,549人
    基本的にはキャパシティ16,587人のプレントン・パークを使ってるけど、5,000人を超えたのは6,085人入った12節のアーセナルのみ。普段はメンズが使ってるアンフィールドで開催した3節のエヴァートンとのマージーサイド・ダービーは23,088人入ったけど、10,000人を超えたのもアンフィールドを使ったのもこの試合だけ。基本的にはちょっとマンチェスター・シティと似てる感じなのかな? ただ、"WSL Watch #076"で触れた通り、来シーズンからはホームをセント・へレンズ・スタジアムに変更することが決まってるんで、入場者数がどれくらい変わるのか、注目かな。

  8. トッテナム・ホットスパー: 4,317人
    今シーズンのトッテナム・ホットスパーに関しては、やっぱりノース・ロンドン・ダービーでの19,480人ってことになるのかな、特筆すべきは。メンズ・チームが使ってるトッテナム・ホットスパー・スタジアムで開催したのは2試合で、最終節のウェスト・ハム・ユナイテッド戦は9,999人。普段使ってるブリスベン・ロードのキャパシティは9,271人だから決して小さいスタジアムじゃないんだけど、だいたい2,000人前後って感じなんで、トッテナム・ホットスパー・スタジアムを使える試合をどれだけ増やせるかが来シーズンの課題なのかな?

  9. ブライトン&ホーヴ・アルビオン: 3,552人
    普段はキャパシティ6,134人のブロードフィールド・スタジアムを使ってて、3節のトッテナム・ホットスパー戦と19節のエヴァートン戦はメンズ・チームが使ってるアメックス・スタジアムで開催したんだけど、10,000人を超えた試合はなくて今シーズンの最多はトッテナム・ホットスパー戦の6,951人。どういう基準でアメックス・スタジアムを使ってるのかちょっとナゾ? 5,000人弱の試合の何試合かあるけど、2,000人くらいの試合が多い感じかな。

  10. レスター・シティ: 2,665人
    キャパシティ6,912人(座席数は2,034 )のピレリ・スタジアムをメンズ・チームが使ってるキング・パワー・スタジアムと併用してるんだけど、ピレリ・スタジアムで5,000人を越えた試合はゼロ。今シーズン最多はキング・パワー・スタジアムでの20節のマンチェスター・ユナイテッド戦の5,211人。6節のアーセナル戦が4,179人だったけど、他は2,000人前後って感じ。

  11. エヴァートン: 2,070人
    エヴァートンのホーム・スタジアムはキャパシティ2,200人(座席数は500)のウォルトン・ホール・パークなんだけど、中継映像を観ててもわかるくらい小さいスタジアムだったりする。思わず、グーグル・マップとかで確認しちゃったくらい。座席数500ってことからもわかると思うけど、(中継のカメラとか両チームのベンチがある側をメイン・スタンド側って呼ぶなら)バック・スタンド側のタッチラインの7割くらいの幅で屋根付きの座席があるだけで、両ゴール裏は立見、メイン・スタンド側も両ベンチの間に中継用のカメラをセットする櫓みたいなモノがあるから端の辺りだけ立見って感じで、もはや'メイン・スタンド'なんて呼べるモノじゃなかったりして。個人的には「このくらいほのぼのしてるスタジアムで観るサッカーも案外悪くないんだよな」「ある意味、1回は行ってみたいな」「バックスタンド側の端にコーヒーを売ってるらしいキッチン・カーがあっていいな」とか思いながら中継を観てるんだけど、トップ・カテゴリのスタジアム、トップ・レベルのリーグの試合が行われるスタジアムとしては、さすがに貧弱すぎな気はしちゃうかな。ただ、4節のマンチェスター・ユナイテッド戦は1,990人入ってたりして、「ここに2,000人弱入ったって、逆にスゲエな」とか思ったけど。ちなみに、17節のマージーサイド・ダービーだけはメンズ・チームが使ってるグディソン・パークでやってて、9,457人入ってる。

  12. ウェスト・ハム・ユナイテッド: 1,830人
    ホーム・スタジアムはキャパシティ6,078人のヴィクトリア・ロードで、メンズ・チームのロンドン・スタジアムは使わずに全試合をヴィクトリア・ロードで開催。シーズン最多入場者数はアーセナルに見事に勝った13節で4,172人。2,000人入った試合もそれほどなくて、1,000人以下の試合もあったりして、かなり寂しい感じかな、正直なところ。

もちろん、スタジアム自体のこととかチケットの価格設定とかアクセスとか、現地の事情はわかんないから、各チームの比較は難しいんだけど、実際には上位3チームが全体を引っ張ってるって感じなのかな。理想を言うと、平均値の前後辺りのチームが増えるのが望ましいんだと思うけど。あと、やっぱりダービーって大事なんだなって思ったり。

海外メディアの総括記事をチェック

最後にいろんなメディアのシーズン総括的な記事から面白かったポイントをピックアップ。今後も見つけたら追加するかもしれないけど。

現地でWSLを毎節中継してる『スカイ・スポーツ』は、複数の専門家がいろんなベストを挙げる形式で、例えば、ベスト・プレイヤーとしてはマンチェスター・シティのカディジャ・ショウ(Khadija Shaw)を挙げる人が多いけど、長谷川唯を挙げてる人もいたりして。ブレイクスルー・スター('ブレイクした選手'って感じかな?)としては"WSL Watch #051"で取り上げたトッテナム・ホットスパーのグレイス・クリントン(Grace Clinton)とか"WSL Watch #053"で取り上げたマンチェスター・シティのジェス・パーク(Jess Park)とか"WSL Watch #072"で取り上げたチェルシーのABJことアギー・ビーヴァー・ジョーンズ(Aggie Beever-Jones)とかの名前が挙げられてる。ベスト・ゲームはやっぱりリヴァプール対チェルシーが多いかな。あと、複数人が挙げてるのは、ベスト・サイニング('ベスト新加入選手'って感じ?)でチェルシーのシェーケ・ニュスケン(Sjoeke Nüsken)だったり。他にも、ベスト・ゴールとかベスト・モーメントとかベストGKとかベスト・マネージャーとかって項目があって、基本的にはわりと納得感はある感じ。

『ザ・ガーディアン』は複数の専門家がいろんな項目のベストとワーストを選ぶ形式。やっぱりベスト・プレイヤーは圧倒的にカディジャ・ショウで、ベスト・マネージャーにはリヴァプールのマット・ビアード(Matt Beard)監督を挙げる人が多かったりして。あと、ベスト・サイニングではグレイス・クリントンって意見が多い中でレスター・シティの籾木結花を挙げてる人もいたりする。ちょっとイジワルだけど、ワースト・フロップ('flop'だから'ヘマ'みたいなニュアンスかな?)なんて項目もあって、例えばアストン・ヴィラが期待外れだったとか、マンチェスター・ユナイテッドのマーク・スキナー(Marc Skinner)監督とかジェイゼ(Geyse)とかの名前が挙がってたり、アーセナルがフィフィアネ・ミデマー(Vivianne Miedema)との契約を延長しなかったことなんかも取り上げられてる。他にも、ビッゲスト・グライプ('gripe'だから'文句'って感じかな?)として、The FA Playerの配信のクオリティの低さ(特に10月のチェルシー対ブライトン&ホーヴ・アルビオンとか)だったり、WSLのチーム数を増やさないことだったり、リーグ全体で見たときのメンズ・チームのスタジアムを使う回数の少なさみたいな問題点の指摘もあったりしてなかなか興味深かったりする。

『ゴール』はポジションとか関係なしで選んだトップ・プレイヤー・ベスト15って感じで、けっこう豪華な選手の中で長谷川唯が4位に選出されてる。しかも、'interception machine'なんて言葉が使われてたりしてちょっと面白い。ちなみに、3位は"WSL Watch #048"で取り上げたチェルシーのスコットランド代表MFのエリン・カスバート(Erin Cuthbert)、2位は"WSL Watch #059"で取り上げたブライトン&ホーヴ・アルビオンのエリザベス・ターランド(Elisabeth Terland)、1位はやっぱりカディジャ・ショウ。

『ジ・アスレティック』はオーソドックスにプレイヤー・オブ・シーズンとヤング・プレイヤー・オブ・ザ・シーズンといわゆるベスト11のチーム・オブ・ザ・シーズンで、ここでもベスト11には長谷川唯が選ばれてる。

『90min』はわりとオーソドックスなベスト11だけって感じで。



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