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【東エルサレム・研修レポート②】  研修プログラムにかける講師の思い

こんにちは、JVCエルサレム事務所の木村です。前回に続き、今日は「ビジネススキル研修のレポート第2弾」をお届けしたいと思います。昨年に続いてビジネススキル研修の一部を引き受けていただいたサウサン講師を紹介します。

サウサン講師は、JICAが行っている現地での研修の講師や「ビジネスウィメンズフォーラム」という女性の起業を応援するネットワークでも、長年ビジネス関連の講師として活躍されている方です。

パワーポイントのスライドを使っての講義

サウサン講師の研修では講義だけでなく、たくさんのアクティビティが取り入れられています。頭を使うものだけでなく、身体を使って動くものも多く研修中は女性たちの楽しそうな声も聞こえてきます。

遊んでいるのではなく、楽しみながら学んでいるのです!

アラビア語のわからない私は、女性たちの笑顔や楽しそうな様子を見ていると「女性たちがこれらのアクティビティから、いったいどんなことを学んでいるのだろうか」ということが気になり、休憩時間にサウサン講師にいろいろ聞いてみました。

研修の邪魔にならないように見学しています(手前左:木村、右:現地スタッフ・アヤット)

サウサン講師は、女性たちがビジネスを起こすために必要な最低限の知識やビジネスに臨む姿勢を習得できるように、全6回の研修プログラムを緻密に組み立ててくれました。
そして、「自己分析」「プロジェクト立案」「予算建てや予算管理」など各トピックにおいて、豊富な経験という引出の中から適切なアクティビティをひっぱりだして、本研修を実施しています。

2つのチームに分かれて、何をするのかな?

例えば、研修に参加している女性たちが2チームに分かれて、「お菓子とデザート」のビジネスを立ち上げるという設定で、「やることをリストアップして付箋に書きましょう」というアクティビティを行ったときのこと。

テーブルの上にはたくさんの付箋が、、、

「アマル(アラビア語で希望)チーム」は28枚の付箋を書いたのに対し、「アットゥーリ(研修場所のある地域名)チーム」は86枚の付箋を書きあげました。同じ時間を要したのにこれほどの枚数の差ができたのは何故でしょう?

よくよくみると、「アマルチーム」が「ケーキを焼くために必要な材料を用意する」と書いたのに対し、「アットゥーリチーム」は「小麦粉を用意」「砂糖を用意」というように細かくひとつひとつの材料を書き込んでいたようでした。

アクティビティの終わったあとに、その意図を解説するサウサン講師

この点をサウサン講師も指摘されました。

「何事も始める前に、なるべく具体的に詳細を書き出すと忘れず、抜け漏れがなくて良いですね。みなさんも買い物に行っても肝心なものを買い忘れた、ってことが良くあるでしょう?買い物に行くときには、買いたいものを予めリストアップしたメモを持参すると買い忘れがなくなりますよね。ビジネスでもそういった準備がとても大事ですよ」

といったように、ひとつひとつのアクティビティをビジネスに結びつけてわかりやすく解説してくれました。

研修の最初は、「前回学んだことを思い出してみましょう」から始まります

また、講義では毎回、最初に「前回学んだことを思い出したり、実践報告をしたり、質疑応答などのフィードバック」を行っています。
私もさまざまな研修に自身が参加する機会がありますが、研修中に新たな知識や気づきを得ただけで満足してしまい、その後に振返ったり、復習したり、学んだことを実践したりしてないなあ、、、と反省しきりでした。
「振り返り」は学んだことの確認や知識の定着のほか、新たな発見もありそうです。

「ビジネスにおける80:20の法則」について説明するサウサン講師

穏やかな表情ながらも芯の強さが垣間見え、とても熱心に講義をしてくれるサウサン講師。この熱意はどこからくるのか、何故講師という職業を選んだのか聞いてみたところ、こんなふうに答えてくれました。

「ムスリムの女性がビジネスを起こすというと、刺繍やアラブの伝統菓子をつくって売るんでしょといったステレオタイプな意見や、ビジネスって言ったってしょせんお小遣い稼ぎでしょといった女性の可能性を認めないような意見が多く、つねづね何とかならないのかなと思っていました。

幸い私は学ぶことができる環境にいたし、学ぶことが好きだったし、ビジネスを起こす女性たちを応援したかったから今の仕事に満足しています。

研修をする際に心がけているのは、make it simple ものごとをシンプルに考えるということね。ビジネスを軌道に乗せるためには、ビジネスに関する知識を得るだけでは不十分で、実践を通じて知識を自分のものにしていくこと、自分の人生の責任は自分でとるという意識をもつことが大事だと思っていて、これからも女性たちが活躍するためのサポートをしていきたいと思っています」

サウサン講師の話を熱心に聞き入る女性たち

まさしく私たちがこの研修で目指すことと同じ思いを持ってくれていることがわかり、とても嬉しく感じました。このような講師にも恵まれ、ビジネススキル研修は順調に進んでいます。次回は、研修に参加している女性の声をお届けしたいと思います。

※本事業は、外務省の日本NGO連携無償資金協力にて実施しています。

JVCのパレスチナ事業では、現地に暮らす人びとの意思を応援する形での支援を行なっています。また、パレスチナの問題を日本社会にも伝えることで、一人ひとりが取り組むための橋渡し役を担うことも試みています。 サポートしていただいた分は全額、JVCのパレスチナ事業に寄付いたします。