見出し画像

女性のエンパワメント事業@東エルサレム

JVCパレスチナ事業応援サポーターの新田朝子です。今日のnoteでは、JVCパレスチナ事業の新たな取り組み"女性のエンパワメント事業"をご紹介します。

1. 事業を始めた背景

パレスチナの女性は占領の抑圧だけでなく、「家父長制による男性優位のアラブ社会」がもたらす様々な制約のもとで暮らしています。また、大きな責任を負う男性たちもストレスを抱えているため、多くの女性たちがそのストレスを抱えた男性からの暴力、そして家庭外の活動に対する制約などの困難に直面しています。特に東エルサレムのシルワン地区およびアットゥーリ地区では地理的・歴史的背景や閉鎖的な部族社会という点から、女性たちはさらに厳しい状況に置かれています。

しかし、多くの女性たちは家庭内でのセクシャルハラスメントを含む暴力を公にできず、自らが持つ権利を認識したり、経済活動へ参加したりする機会もなかなかないのが現状です。

2. 事業の内容と目的は。

そこで、JVCパレスチナ事業では、女性たちが自らの権利を学ぶ研修を行うと同時に、自ら収入を手にする手段を得るための職業訓練を予定しています。

事業のゴールは ①自分たちの持つ権利を認識する 女性たちが実際に行動を起こして成功体験を得ることで、女性のエンパワメントを実現することです。

ゴールの実現に向け、JVCは女性支援を行う現地NGO「Al-Thouri Silwan Women's Center: AWC」とともに活動を実施しています。
AWCは2007年にパレスチナ女性たちによって設立され、女性と子どもを主な対象として、アットゥーリ地区(別名:アブ=トゥール)とシルワン地区を中心に活動をしています。代表を含めて5名のスタッフ(全員女性)、その他パートタイマーやボランティアにより支えられている地域に根付いた団体です。女性に対する一切の差別がない社会を実現するため、女性の権利と安全性の改善、女性の決定権とリーダーシップ、経済力の向上、女性の社会参画の推進などに取り組んでいるということです。

女性が、家庭にいることも含めて、自分の道を選択したり、チャレンジできるようになることを願って共に活動しています。

どんなワークショップ(研修)が行われているの?

3月の半ばごろから、毎日に近い形で主にアットゥーリ地区とシルワン地区に暮らす女性を対象にさまざまなテーマの研修が行われています。(例:クリティカルシンキング、リーダーシップ、ジェンダー、など)

今回は、3/16に行われた「セクシャルハラスメント」に関する研修についてご紹介します。この日は、大学で心理学と女性学を学んだヤッラさんが講師。

画像4

この研修は無料で開催され、現地NGOのAWCがFacebookなどのSNSを使って研修の告知を行っています。この日は20〜50代の女性10人が集まり、2時間にわたる研修に参加しました(本事業は、外務省の日本NGO連携無償資金協力にて実施しています。)

まずは講師のヤッラさんから順に参加者のみなさんも自己紹介。講師を含め初対面の人も多く、緊張をやわらげるためにまずはアイスブレークから。

*アイスブレークとは:研修やワークショップの冒頭でよく使われる技法。初対面の人同士や、研修の緊張をほぐすことでコミュニケーションを円滑にし、参加者が積極性に発言できる雰囲気をつくる。

お互い自分の名前をみんなに伝えた後、ヤッラさんが小さなボールを取り出し、ある参加者の名前を呼びつつ、その人に向かってボールを投げました。その人はまた別の人に向かって、、、という感じにボールを投げる際に相手の名前を呼び合うことでお互いの名前を覚えたり、箱の中から選んだ小さな紙に書かれたお題について、ひとりずつ自分の話をしました。(お題の例:好きな言葉、好きな家事、好きな色、好きな飲み物)

アイスブレークは、お互いの人となりを知る良いきっかけになりました。

折り紙とボール

またこのアイスブレークは自分の考え、気持ちを表現する練習にもなるため、この後の研修で行われるディスカッションの予行練習の意味合いも込められているんだとか。

いよいよ本題のセクシャルハラスメントのセッションへ。例えば、何が、どこからがセクハラなのかについて(身体・言葉・インターネット上のサイバーハラスメントなど)講師が解説したり、参加者の方々の体験談をシェアしたりすることで、セクハラへの理解を深めます。さらにはセクハラに遭ってトラウマを感じている人の対処法についての講義もありました。

画像3

車座のような形で参加者の皆さんが顔を合わせながら実体験を語ったり、意見交換をしたりすることで、セクハラに関して声をあげていくことの大切さなどを認識してもらおうという思いも込められています。

インタビューした女性

この研修に参加した49才の女性にお話を伺いしました。この方は5人のお子さんがいますが、子育ても一段落したこともあり「女性の意見や個性を活かすために学びたい」と研修の参加を決めたとか。夫や子どもたちも応援してくれているそうで、研修後の目標は「家でできる小さな事業を自分自身で始めたい」という意気込みを話してくれました。

研修に参加する女性たちの活躍を願い、私たちJVCは現地のNGOとともにこれからも東エルサレムで女性のエンパワメント事業を行います。こちらのnoteでも引き続き活動の様子を報告しますので、よろしければまたご覧ください。

★noteでは、100円よりJVCパレスチナ事業にサポートをしていただくことができます。(全額をJVCパレスチナ事業に寄付いたします)活動にご賛同いただける方はぜひ、下記よりサポートいただけたら幸いです。


JVCのパレスチナ事業では、現地に暮らす人びとの意思を応援する形での支援を行なっています。また、パレスチナの問題を日本社会にも伝えることで、一人ひとりが取り組むための橋渡し役を担うことも試みています。 サポートしていただいた分は全額、JVCのパレスチナ事業に寄付いたします。