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「夜」が意味するもの


みなさんにとって「夜」とはどんな時間でしょうか?
パッと思い浮かぶのは、家族や友人と食事をしたり、飲みに行ったり、ゆっくり読書をしたり、映画や好きな番組を見たり、勉強したり、お風呂に入ったり、遊びに行ったり、散歩したり、趣味に費やしたり、人によっては仕事に行ったり、家事をしたり、といったところでしょうか。もしくは何もしないという選択肢もありますね。楽しいことばかりではなくて、中には悲しくなる、寂しくなる、つらくなる人もいるかもしれません。

2022年8月5日、ガザ地区は再び激しい空爆に見舞われました。3日間続いた攻撃で16名の子ども含む45名が亡くなり、負傷者は360名にのぼります。3日後に停戦とはなったものの、これまでに何度も停戦は破られ、その度に罪のない一般市民が犠牲となってきたことから、人びとは常に大きな不安を抱えて暮らしています。空爆は主に夜に激しくなる傾向があり、多くの子どもたちが夜を怖がります

パレスチナのガザ地区というところに住むある14歳の男の子は、「夜」についてTikTokにこんな投稿をしました。
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「夜」がガザの人々にとって意味するものを皆さんは知っていますか

それは強い恐怖

不安

心を鎮めてくれるものは何もなく
人生のすべてともいえる誰かを失うことを恐れ
自分の魂の一部のような人のことを心配し
大切な人がいなくなってしまった世界を想像します

爆撃がどこで起こるのか
誰が逝ってしまい誰が残されるのかも僕には分からない
死者の中に愛する人の名前を見つけることを恐れ
爆撃が去り彼らを失わないことをひたすらに祈るのです

神さま
大切な人々を失うような試練で
僕たちの忍耐を試さないでください
ガザの人たちを守って
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2007年から、陸海空を封鎖され、人や物資の出入りが厳しく制限されているガザ地区の人々には逃げ場がありません。ガザ地区を出ることも許されず、シェルターなどもない中で、次は自分の番かもしれないと恐怖に怯えながら、祈るしかないのです。

そんなガザの人々から「自分たちのことなんてもう誰も気にしていない」「世界は自分たちのことを無視している」という言葉がよく聞かれます。

あるガザの病院の院長からはこんなメッセージが送られてきました。

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ある医学生は、ガザ外から留学に来てそのままガザに滞在していました。その学生は10年以上父に会うことを切望しながら、空爆の犠牲となりました。

ある花嫁はたった2カ月間の結婚生活の後、花婿を亡くしました。

ある花婿の母親は、花嫁を迎えに外に出た際に空爆に巻き込まれ、白い布に包まれた状態で帰宅しました。

何の罪もない5歳の女の子は、(空爆が開始されてから)48時間以内に18人目の犠牲者となりました。

お母さんが15年間待ち望んでようやくこの世に生を受けた男性は、18歳という若さでこの世に別れを告げることになりました。

1ヵ月前に結婚したばかりのある男性は、瓦礫の下で遺体となって見つかりました。

これらは実話です。作りものではなく、2022年8月に起こったガザ空爆の数日の間に起った痛ましい現実です。空爆によってパレスチナの若い命が失われました。私が最も心配しているのは、ガザの人々は死んで良くて、ウクライナの人々は死んではいけないかのように、世界が私たちから目を背けていることです。
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1948年にパレスチナの土地にイスラエルが建国を宣言してから77年、占領地となったパレスチナは、高く厚い壁に囲われ、わずかに残った土地すら日々侵食され、毎日のように人々が家や土地を奪われ、暴力によって押さえつけられています。ガザ地区は更に厳しく人や物資の出入りが制限され、経済状態が破綻しているうえに、逃げ場のない一般市民に対して度々空爆が行われています。

ところが、問題が長期化していることや、世界で次々に別の戦争や問題が勃発することで、パレスチナのことはだんだんと注目されなくなってきています。

この地の問題は、当事者間だけでなく、国際社会も大きな責任を負っています。世界には“テロリスト“と指定された武装グループによる事件や戦争が多発しています。言うまでもなく、私たちはいかなる暴力にも反対します。しかし、それらの人が危険な行動を起こす裏には何があるのか考えなければいけません。

あなたがパレスチナ人の立場だったら、どう感じるでしょうか?黙って理不尽な統治を受け入れるでしょうか?世界が自分たちが死んでいくのを黙認していることをどう受け止めるでしょうか?

※パレスチナの状況については、以下の記事をご覧ください。

JVCは他のNGOと共同で日本の外務省に対して、この停戦の継続と根本的な問題解決に向けて、他国と協力して取り組んでいくことを求める要請文を提出しました。

※要請文の詳細や全文などは以下のWebサイトからご覧ください。

これ以上、罪のない人々が犠牲にならないよう、世界が役割を果たすことを願うばかりです。

JVCのパレスチナ事業では、現地に暮らす人びとの意思を応援する形での支援を行なっています。また、パレスチナの問題を日本社会にも伝えることで、一人ひとりが取り組むための橋渡し役を担うことも試みています。 サポートしていただいた分は全額、JVCのパレスチナ事業に寄付いたします。