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【阿佐谷ジャズストリート2023-1】山下洋輔のジャズ、やっと聴けた!


山下洋輔のホットな響きに、虫の音も合奏の夜

<阿佐谷ジャズストリート2023>(通称:阿佐谷ジャズ祭り)は1995年に始まり、今年で29年目を迎えた。

この祭りには、前々から行ってみたいと思っていて、昨年、義理の妹夫妻の誘いで、初めて出かけたが、山下洋輔のライブ・チケットは早々に売り切れてしまっていた。
 
今年は早めに義妹が手配してくれたおかげで、念願!悲願!の山下洋輔のピアノを聴くことができた。
 
ところは、阿佐ヶ谷駅北口の<神明宮>という大きな神社で、境内に造られたまだ新しい<能楽殿>が舞台。

<阿佐谷ジャズストリート2023>総合ガイドより

山下洋輔には“反骨の人”というイメージがあったから、神社とはそぐわない気がしたが、演奏が始まると、強烈な照明に照らし出され、そこは暗闇に浮かぶ異空間と化した。

★山下洋輔グラフィティ★NHK「山下洋輔 最後の講義」から

●反骨のミュージシャン

1969年、山下洋輔トリオはバリケード封鎖されていた早稲田大学の教室でハプニング演奏をした。この“乱入ライブ”の模様は、シリーズ『ドキュメンタリー青春』(東京12チャンネル・現テレビ東京/田原総一朗ディレクター)で放送されて話題になり、山下洋輔の著作『風雲ジャズ帖』(徳間文庫)に詳述されている。(画像はバリケード封鎖された早大キャンパス~NHKTV「山下洋輔 最後の講義」(テレビマンユニオン制作・2023/07/19放送)[以下、同]より

●上品な紳士然とした演奏スタイルに驚き

「山下洋輔 最後の講義」(NHK)では、クラシックを学んだ母校・国立音楽大学をステージ会場に、「大きな古時計」などの名曲を数曲演奏した。アレンジされた曲の数々があまりに美しくて涙が出たが、山下洋輔の代名詞でもある、鍵盤を全身で叩き鳴らす「肘打ち奏法」は、もうそこにはなかった。

●講義ノートの最後のことば

既成概念を打ち壊すことに情熱を燃やしてきた山下洋輔は、「最後の講義」の締めくくりに、
「乱入!」とノートに記した。60年代の青春が失われていないことに、また涙した。

ラストは幻の映画「幻燈辻馬車」のテーマ曲

山下洋輔のピアノに、サキソフォン&フルート奏者、ベーシスト、ドラマーの若いメンバーによるセッション(山下洋輔ニューカルテット)は、立て続けに6曲、およそ1時間のホットな演奏を続けた。
 
ときに心をやわらかく撫でつけるようなメロディラインもあって、「肉弾」(1968年)の岡本喜八監督の幻に終わった映画「幻燈辻馬車」山田風太郎原作)のテーマ曲がラストを飾ったとき、夜風のせいではなく、ほんとうに体が震えた。
 
聴衆はといえば、定員400人の席はすべて埋まっていて、ほとんどが団塊の世代とおぼしき人たち。
 
ライブが終わっても「アンコール!」の声がやまず、結局、2ステージ目と入れ替えのため、それきりで終了したが、みんな「青春してるな」と嬉しかった。
 
われら一行は、「予想より聴きやすくて感動した」「“レジェンド”が聴けてよかった」などと口々に言い合っていたら、連れ合いが「境内の虫たちもジャズの音に刺激されたのか、合奏するように鳴いていなかった?」と聞いてくるので、そう言われればそうかも、などと確かめ合いながら会場をあとにした。

音楽ライブが古城や由緒ある寺社で行なわれることが多くなったが、演奏会場となった<能楽殿>も、終わってみれば、<山下洋輔ニューカルテット>にとって、ふさわしい場所に思えた。
神社境内を出ると、次ステージ目の客が長蛇の列をなしていた。

(その2につづく)


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