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旧優生保護法問題・憲法の番人の答えは?#66

2024年7月3日(水)、旧優生保護法による被害を受けた方々が起こした訴訟に一つの区切りが付きました。原告側の主張がすべて受け入れられ、全面勝訴となりました。今日はその件についての話をしていきます。


Voicyで衆議院議員の細野豪志さんも語っておられました。


1か月前に最高裁判所に言った話を書きました。ぜひ読まれたうえで今日の記事もお読みいただけると理解が進むかと思います。

1948年~1996年まであった優生保護法という法律。その目的には「不良な子孫の出生防止」とあります。不良な子孫とは、遺伝性疾患が主でしたがその中に統合失調症(以前は精神分裂症)とか盲聾者も入っていたんですね。つまり、そういった疾患や障害を持っている人に対して不良という烙印を押してしまったんです。これは戦後の新憲法下で、さらに国会を通ったうえでできた法律です。

時代背景としては、第二次世界大戦に敗れた日本。経済的にも物理的にもどん底です。戦後復興に向かわなければならない。経済成長させなければ。とはいえ、この人口増加は食い止めなければ…国力として支え切れる限度を超えると判断され、人口抑制政策の側面もありました。

結局この法律に基づき、障害者がこれ以上増えないようにと(断種政策)、子どもを授かることができない状態にされた方が分かっているだけでもおよそ2.5万人います。実際には、法律の規制を乗り越えて対象としていない人にまでこの手術が及んでしまったという記録もあり、もっと数は多いんですね。そして、手術の多くは本人の同意なく行われており、時には騙してもよい(欺瞞)と法律の中にも書かれています。

その結果として、手術を受けた本人が何をされたかを知るすべもなく…手術を受けさせた家族などが墓場まで持っていく覚悟をもって事実を隠してしまうということが起こりました。手術を受けた方々は、生理が来ないとか、子を授からないとか、大人になってから異変に気づきますが、それでもまさかそんな手術をされていたなんて夢にも思いません。

転機が訪れたのは2018年。仙台地裁で被害者が原告として名乗りを上げて、国を相手取り国家賠償請求訴訟を起こします。そのことで優生保護法によって手術を受けさせられたという事実があることが広く知れ渡りました。そこでやっと…自分もこの被害者なのかもしれないとか、隠していた家族が本人に伝えたりとか。今までまったく動かなかったものが少しずつ動き始めて、全国に訴訟団が立ち上がり裁判が行われました。


〇立ちはだかる除斥期間

以前の記事でも触れていますが、何といっても今回の裁判の最大の争点は民法上の規定である除斥期間(民法724条)です。

(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
 不法行為の時から二十年間行使しないとき。

民法

もうちょっとわかりやすく説明したかったのでchatGPTにこんな風に投げてみました。「この裁判の最大の争点は国家賠償請求訴訟において民法の除斥期間を適用するかどうかだったんだけど、そもそもの除斥期間を適用するということについて中学生でもわかるように説明してもらえないかな。」
その答えがこちらです。

除斥期間とは、法律上、一定の期間が経過すると特定の権利や請求権を主張できなくなる制度のことです。これは、法律の秩序を守るために設けられています。
例えば、ある契約で相手方が不履行(約束を守らないこと)をした場合、その権利を主張するためには法的手続きを取らなければなりません。しかし、その手続きをする期間に限界があり、その期間内に主張しなければ、後で主張することができなくなるというのが除斥期間の要点です。

中学生向けに例えると、サッカーでゴールを決めたけれど審判が見逃した場合、その試合中に抗議しないと後で抗議しても認められない、というような感じです。期間が過ぎてしまうと、もう主張できないということですね。

裁判の争点が除斥期間を適用するかどうかというのは、その期間の長さや、その期間内に訴訟を起こさなかった理由がある場合に特例を認めるかどうか、などに関わる重要な問題です。

chatGPT

除斥期間のイメージだけは掴んでいただけたかと思います。そして、今回の判決ではこの除斥期間の適用を認めないという判断を最高裁判所の裁判官15名全員が行ったということです。

その理由は、被害を受けたことを本人が知ることができる状態になかったため(隠されていた事実)であり、その責任を被害者本人に押し付けるということは正義と公正の観点からは認めないとのことでした。

〇司法の次は立法府と行政府

今回の判決を受け、岸田首相は被害者に会って話を聞き、謝罪をすることを発表しています。

ここで重要なことは、あくまでも今回は司法府での一つの決着であり、その結果を受けて立法府(国会)と行政府も正しく動いていかなければいけません。

国会では2019年に一時金支給法を時限立法で制定しています。被害者に一律320万円の補償金を支払うというものです。が、これは被害者にとって傷つけられた尊厳、はく奪された子を授かる権利、人間関係とその後の人生などあらゆる点から見ても何の補償にもなってない。そもそも一時金です。保障でも救済でもない、単にお金を渡しますねというだけのもの。周知も不十分で申請件数も少なければ、受理件数はもっと少ないです。

国会としてできることは、国会としてやるべきことを当時やらなかった責任を認めて謝罪することと、被害者の権利回復に向けた救済法を当事者らとともにつくり運用していくことです。

そして、行政府においてはこれ以上尊厳を傷つけることがないように窓口対応の見直しや対面せずとも様々な手続きが簡素化するようにしていく必要があります。役所に出向いて手書きで手続きするなんてのは非現実的です。オンライン、アプリ導入、マイナンバー紐づけをしてオート化を図ってほしいもの。出向くということは一番のハードルです。救済を受ける対象である場合、もっとスムーズに本人確認と補償ができればいいと思います。


何はともあれですが、まず一つの区切りが付きました。今後の動きをよくよく見ていく必要があります。また、今回最高裁判所で取り扱った5つの事件以外の裁判は続いています。オール勝訴となるよう引き続き応援していきます。活動費の支援も受け付けているようです。ご協力いただけると嬉しいです。

ゆうせいれんHPより


最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた。ゆうちゃんでした。

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