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カレーのうた

じゃがいもの皮をむく
友だちのあっちゃんの顔は
にきびがたくさんで
昔あだ名がじゃがいもだった

にんじんを手に取る
ちんちん
と聞き間違えて
ひどく恥をかいたのを思い出す

玉ねぎを刻む
涙がでたのを
玉ねぎのせいにしたけれど
実は昨日
あの人にふられた

ばらでもブロックでもなく
みんち肉を使う
あの人が好きだったから
これで最後に

ニンニクをたくさん擦って
野菜を炒める
明日は家から出るつもりはないから
なんにも気にしない
夜中に吸血鬼がやってきたら
ふーって息をふきかけてやろう
と思ったけれど
せっかくきてくれるのだから 
トマトジュースででももてなしてあげようか

沸騰するお湯をながめる
ぶくぶくぶくぶくぶく
泡は出てきては消え 
出てきては消える
ぶくぶくぶくぶくぶくぶく
野菜と肉を入れる

おたまであくをすくう すてる
すてる
すてる
あくの強い性格だった昔の同級生の顔を思い出す
今どうしているだろうか

火を止めて
ルーを割りいれるつもりが
ルールを無視したくなって
火をつけたまま
ほうりこむ
ちゃぽんっ と
はねた汁がエプロンにとぶ
白い生地にカレーの色が滲む
爪でこすってみるけれど
とれない

かくし味いち
ヨーグルト


チキンのコンソメ

さん
少量のココア

よん
はちみつ
あの子の結婚式でもらったはちみつ
幸福そうだったな
あの子
幸福そうだった


少量の赤ワイン
は いれるのをよそう
あの人のことを思い出し過ぎる
下戸のわたしでも飲める
自然発酵のワインだよって
教えてくれた
教えてくれた
教えてくれたのに
どこかにいってしまった

煮込む
こげつかせないように
煮込む
何度も何度もまぜながら
こげつかせないように
煮込む
野菜がとけこんでなくなってしまうくらいに煮込む
なくなってしまっても
きちんと存在しているあなたたちを
わたしは知っている 知っているから

カレーができた
味見をする
何かが足りないカレー
足りることなどないカレー
これが今のカレー

大盛りのご飯に
カレーをいーっぱいかけて食べる
二杯食べた
サラダも何もなしで
食べた
おなかがいっぱいになっても
食べた

缶ビールをひらける
缶さら飲んだ
下戸だけど飲んだ
そんなの
関係ない

カレーはまだ
お鍋にいっぱいある

神様に
あやまりながら
ひっくりかえして  

ぜんぶながしにながしこんだ

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