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理科系マインドは一日にして成らず

1 理科系マインドとは何でしょうか?

それは獣医学科・医学部・歯学部・工学部・理学部などの理科系大学に入学し、そこの勉強にちゃんとついていって、卒業し、専門の領域に就職する能力のことです。結構ハードルが高いです。大抵の理科系大学には、1年から2年、2年から3年に上がるときに理科系科目(生物・物理・化学・数学)の試験に合格しないと進級できない縛りがあります。
だから、有名校に入って喜ぶお母さんには、「先が長いですよ」と言いたいのです。

有名受験校だと、ある意味「無駄なこと」をさせてくれませんが、無駄なことにもちゃんと意味があるのです。
これをやってダメだった、という知見は、やってみないとわかりません。
それを他の人の体験や知識で補うのは時間の節約のようで、そうでないのです。自分でやらないとわからないことって案外多いのです。

無駄なことをする→学習する→次の無駄なことにそれを活かす
の繰り返しで生物の進化も進んでいます。有名進学校の子より、かえって田舎の二番手、三番手の高校で生物クラブの部長をやってたりする子の方が「伸びしろ」があります。
そして、勝負は大学・大学院に入ってからなのが理科系ですから、この「伸びしろ」は大切です。あまりレベルの高い学校に入ってしまうと、これがなくなるのですね。

2 まずは体力から

そして、もし学力向上のために、部活、特に運動部をやめさせようと思う御母さんがおられたら、「それはやめなさい」と言っておきます。
理系はとにかく体力です。私も修士のとき、実験が終わるのが深夜2時とか普通でした。
また、複雑な人間関係の中で仕事をすることもあるので、ある程度の理不尽さに耐える力がないと心が折れます。
更にブラックなことを言うと、理科系・技術系は景気の影響を受けやすいので、ある日突然 研究所閉鎖・営業に回ってくれ
というのもあります。
嘘ではないです。私の同期の人など、動物園に雇用されたとおもったらそこが閉鎖、その後系列会社のホテル支配人になりました。それでも給与は保証されますから、ありがたいことです。その時しっかり営業ができるためにも、今、炎天下で汗を流すことが必要なのです。
だから、理科系は一日にして成らず。

3 何もしないという選択

それでは、理科系マインド育成について、親御さんは何をすればよいのかというと、
まず、
何もしない
何もしないで、観察をします。
何が好きなのか、
どんな本を読もうとするか

などです。
ここで「お母さんは君に生物学者になって欲しい」とか「こんな本を読むと面白いよ!」
などと言わない。
はっきり言って厚かましいです。
自分が同じように理科系ができて、そのような仕事をしているのならまだ許せますが、自分の出来なかったことを子供に託すのは失礼です。
それならまず自分が数学の本でも買って、問題を解いてみることです。

私の友人の息子は、あるサッカーチームのGKです。
彼がユースにいるとき、何度か会いました。
お母さんに、
「早くからサッカー選手にしようとおもってたの?」と聞くと、
「野球とかだと、何でも親が行かなくてはいけないので、少しでも楽なサッカーにした」との返事でした。
伸びる人は何もしないでも伸びます。ひたすら子供を観察するのが、理科系マインド育成でまずやることです。

【トップの画像について】先日、近畿大学農学部で水産研修を受けたときの模様です。かなりハードな研究室ですが女子もたくさんいました。やはり体力勝負のようです。

似内惠子(獣医師・似内産業動物診療所院長))
(この原稿の著作権は筆者に帰属します。無断転載を禁じます。)
似内のプロフィール
https://editor.note.com/notes/n1278cf05c52d/publish/
ブログ「獣医学の視点から」

オールアバウト「動物病院」コラム
https://allabout.co.jp/gm/gt/3049/

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