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ジュウ・ショのサブカルマンガマガジン

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マンガについてサブカルチャー的な視点から紹介・解説。 学術書とか解説本みたいに小難しくなく、 極めてやさしく、おもしろく、深ーく書きまーす。
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#カルチャー

記事が出ました!1970年代のマンガについてです

主婦と生活社さまのメディア「fumufumu news」にて記事が出ました〜。1970年代のマンガの変遷について書いています。 おもしろいんですよね。1970年代のマンガは。男性マンガ史ではジャンプとチャンピオンが出てきて「マガジン・サンデー・キング・ジャンプ・チャンピオン」の五代誌が揃います。 チャンピオンは創刊当初から強いんですよ。メンツエグくないか。手塚治虫、さいとう・たかを、永井豪、赤塚不二夫、ジョージ秋山、梶原一騎……いやもうこんなん絶対買うだろ。 ただジャン

なぜ「スポ根漫画」は滅びた? 1960年代〜70年代の価値観の変化を紐とく

マンガは世につれ、世はマンガにつれ……。マンガというのは、それぞれの時代で特有のブームが起こる。で、マンガのおもしろいのは、小説や映画といったエンタメ創作物に比べて「社会トレンド」とリンクしやすいのである。めちゃくちゃタイムリーなメディアなのだ。 なぜか。シンプルに「1本の話を作る時間が短いから」だ。例えば映画、長編小説、音楽、演劇といった総合芸術は、一作をつくるのに早くても数カ月、長いと数年かかる。最近は技術の発達、ナレッジの蓄積もあって、高速化している気がするが、それで

天才・田村由美のマンガの魅力についてオタクに熱く語らせてくれ

20年代前半のころに「禅」に関する本を書いていたんです。ブックライターとしては初めての仕事で、6時間くらい禅寺で取材をして、文字起こしして300ページくらいにまとめるっていう仕事でした。 当時は私自身が仕事やら人間関係やらにものすごく悩んでいた暗黒期で……。もうなんか「全裸で下向いて大殺界を歩き回る」みたいな。しかも出口の鍵がないんですよね。そんなときに「禅」に触れたわけですから、そりゃもうむちゃくちゃ食らった。で、だんだん「人の生き方」について深ぼって考えるようになる。

丸尾末広とは|経歴から「美しさ」と「エログロ」の源泉を探してみる

江戸川乱歩が好きな人は、おそらく夢野久作が好きだろう。そして夢野久作が好きな人は、ほぼ100%丸尾末広にハマる。「芋虫」と「瓶詰めの地獄」が並ぶ本棚には「少女椿」もあるはずだ。 きゃりーぱみゅぱみゅが5年ほど前に、お目目モチーフのアクセサリーを流行らせた。のを見て「眼球はかわいいよね〜(にっこり)」とプラスチックのおもちゃじゃ我慢できなくなる系の人種が、この方程式に当てはまる。ポップなエログロより本物のエログロのほうが好きなのだからしょうがない。 平成〜令和の今観ると、彼

「うる星やつらが萌えの元祖」といわれる理由を語らせてくれ

「高橋留美子の『うる星やつら』が、萌えの元祖らしい」と聞いたとき、正直ピンとこなかった。「うる星やつら」の発表は1978〜1987年。しかしそれ以前にもいわゆる「萌えキャラ」は生まれている。 例えば日本初の少女マンガ・リボンの騎士は1953年に出ている。主人公のサファイアは両性具有であるがゆえに、かなりツンデレ。しかも女性兵士というコスプレ感も、今の萌えに近い。 セクシー系ドタバタコメディでは、1968年の永井豪「ハレンチ学園」がすでに存在し、PTAのおばさま方をめちゃめ

サブカルとアングラの違いとは|ヤバい世界について本気で考えてみる

「アングラとサブカルの違い」は一般のメインカルチャーで生きている人には理解し難いものがある。「いやいや、どっちも絡みにくいでしょ」とまとめてしまいがちだ。 しかし気をつけてほしい。アングラ畑で"毒"を撒布している人と、サブカル畑で"無駄"を耕している人は違う生き物だ。当人からすると「一緒にしないでくれ」と思っているパターンは結構ある。 アングラの人に「お前、ほんっとにサブカルだな」と安易に声をかけるのはマズい。「ちげぇよ。俺はアングラだよ」と血走った眼で返されるだろう。な

24年組とは|少女マンガの歴史を塗り替えた天才女性漫画家たち

少女マンガが、長年にわたって日本の少女たちの人生観、恋愛観に大きな影響を与えているのは間違いない。ちゃお、りぼん、なかよしに育てられ、なんとなく大人の世界に触れて成長していく。うっかりそのまんま大人になって、いつの間にか黒歴史にまみれた人もいるだろう。我々はあのキラッキラで巨大なお目目から大人の世界を学び、憧れを抱いてきた。 そんな少女向けのストーリーコミックは1953年、手塚治虫の「リボンの騎士」から始まる。それからトキワ荘の紅一点、水野英子が、現代少女マンガに通ずる、ロ

今敏について|46年の生涯、パプリカ・パーフェクトブルーなどの作品解説

今敏(こん さとし)の作品は、アニメ史のなかでも明らかに異質なものだ。ジャパニメーションブームが去った後に颯爽と現れて、海外に日本アニメの価値を再認識させたのは、今敏の功績が大きいでしょう。 このメディアでも何度か記事を書いてきました。 そんな今敏の作品には、いまだに熱狂的なファンが多いんです。サブカルオタクのなかで勝手に神格化され、崇め奉られているんですね。「パプリカしか観ていない」けど「今敏はすごい」と言いたくなるサブカル諸君もいるだろう。アレは「NEVER MIND

AKIRAとは|漫画・アニメ映画の両方について「何がすごいのか」を徹底解説

「ジャパン・カルチャー」といえば、今やフジヤマ、サムライ、スモウレスラーよりも先に「アニメ」「マンガ」がくる。 しかしもともとは、アニメもマンガも海外で生まれたメディアである。以下の記事でアニメやマンガの起こりを書いています。 ただ、今やマンガ・アニメといえば日本を代表するカルチャーであり、最近は「日本アニメを楽しむ海外オタク」の動画をYouTubeで観ることも増えた。 では、なぜ日本のアニメ文化がこんなにも海外でヒットしたのか……。その立役者は間違いなく「AKIRA」

カリカチュアとは|日本漫画の原点となった「いじり」の芸術

旅行先で似顔絵を描いてもらったことがある方は多いだろう。そして「できました〜♪」と化け物のような絵を手渡された人もいるでしょう。「おいできたじゃねえよ」と怒っちゃった方もいるかもしれない。 似顔絵屋は基本的に写実では描かない。デッサンではなくエンタメである。なので忠実に似せる気なんてさらさらなく、超笑わせる気でふざけて描くのが彼らの仕事だ。 こうした表現を「カリカチュア」という。つまり対象の容姿の特徴や性格などを、これでもかと誇張して描いた表現のことだ。 カリカチュアは

トキワ荘とは|天才漫画家が一緒に暮らした伝説のアパートについて

日本マンガの基盤は、東京都豊島区椎名町のあるアパートで作られた。それがトキワ荘だ。手塚治虫が居住を始めてから、藤子不二雄、赤塚不二夫、石ノ森章太郎、水野英子、寺田ヒロオなど、とんでもないメンツが手塚に憧れて入居。切磋琢磨しながら、作品を作っていた。 トキワ荘はまさに「マンガ家の梁山泊」としていち時代を築いた聖地中の聖地である。 日本のマンガカルチャーはまさにこの場所で生まれた。こんなスターたちが、この一箇所に集まってマンガを描いていたのは信じられない。レアル・マドリードば

ファム・ファタールとは|起源や言葉の意味、キャラクター紹介など

ファム・ファタール……それは美術、マンガ、アニメなどの世界で「男を惑わせる魅惑の女性」を指す言葉だ。本来の意味は「赤い糸で結ばれた運命の女性」となる。 「赤い糸」と書くとロマンチックに聞こえるが、いやいや、そんなに良いものでもない。もっと妖しくてキケンな存在であり、男はいつだってファム・ファタールの虜になって破滅してしまうものだ。 ではファム・ファタールとは具体的にどんな女性を指すのか。そしてなぜ長い間、クリエイターから愛され続けているテーマとなったのだろうか。 今回は

つげ義春をまとめ|ねじ式などの作品紹介・波乱に満ちた人生など

以前、好きな漫画ベスト5を書いた。 このときにパッと出てきたのが、つげ義春の「ねじ式」。パッと出てくる理由は「ねじ式」を読んだときの衝撃を今でも覚えているからだ。「メメクラゲ」に腕を噛まれて治療したいけど目医者しかなく、最終的に産婦人科医に嘘みたいな治療をされる、みたいな話だった。おもろすぎる。 完全にツボなのである。珍しいかもしれないが、個人的にこの話は涙出るくらい笑える。どんな思考をしてたら、このわっけわかんない話を描けるのだろうと、あれこれ想像した。つげ義春ってどん

しあわせアフロ田中9巻、10巻から学ぶ「好きを仕事にすること」の真実

「マンガ家を描いたマンガ」というのは、めちゃめちゃたくさんある。「ブラックジャック創世秘話」「薔薇はシュラバで生まれる」などの、コミックエッセイが基本だろう。 ただし、この前紹介した「OPUS」をはじめ「かくしごと」など、あくまでストーリーのなかにマンガ家が出てくるマンガもめっちゃある。 ストーリー漫画において、作中にマンガ家を出すと、どうしてもメタが絡まってくるものだ。作者が意図していなくても、読者としては「コレ作者自身のこと描いてんのかな」という目線で見てしまう。なの