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京都の筍はなぜ美味しい

このところ地元農家さんとの繋がりが増え、美味しい野菜の見分けかた、食べかた、いろいろ教えていただきました。そのうちの一つ、150年以上前から続く筍農家さんに教えてもらった美味しい筍の見分けかたと、京都の筍が美味しい理由をまとめました。

美味しい筍どこで見分ける?

日本全国筍の産地はたくさんあって価格もバラバラ。
スーパーやデパ地下に並んでいても、どこを見て選べいいかわからない。
高くて旨いはあたりまえとよく言いますが実は筍は少し違っていて、安くても美味しい、高くても美味しくないものがあります。ここ数年はwebでも買える各地の筍、失敗しないための簡単な見分けかた知りたくないですか。


スーパー、デパ地下編

まずは目で見て手に取って選べるリアル店舗での見分けかた。
筍農家さん直伝で、教えていただいて以降失敗することがなくなりました。


筍は空気に触れ光に当たると乾燥して硬くなる
掘って地表にでた瞬間からジワジワと水分が抜けはじめ、乾燥してだんだん硬くなります。ということは、店頭に並ぶまでにすでに一日は経過していることを考えると、当然のことながら掘ってすぐよりは水分が少し抜け、硬くなっているということになりますが、収穫から二日くらいはまだ大丈夫。
いい竹林でちゃんと育てられたものなら十分美味しい。


ではどこを見ればいい?

●●●まずは根元
いかにも乾燥して叩くとコツコツ乾いた音がしそうなものは、収穫から二日以上経過している可能性あり。だから恐らく、お値段もかなり手頃なのではないでしょうか。

もう一点、根元のブツブツというか小さく突起した部分。
ここは時間の経過とともに色が濃く変化していきます。深い紫や濃い赤紫のものは、灰汁が強くなっているかもしれません。


●●●全体の大きさと皮の表面
同じ値段なら大きいほうが得って思っていませんか。
これも筍の場合はちょっと違う。大きいものは皮が何層にも重なり硬かったり、皮一枚一枚の先が若芽のように緑だったりします。

これは、土の表面から頭がメキメキでているところを収穫された可能性が高いので、根元も穂先もたぶん硬め。だから美味しくない、買わないほうがいいということではありません。料理によっては硬めがいい場合もあり、硬めの食感が好きな方もいるので、料理と好みによって使い分けるのが理想。

朝掘ったばかりの大原野たけの子。画像加工していない自然の色です。


筍はどうして朝掘るの

ところで、「朝掘り」という言葉よく耳にしませんか。
他の野菜でも同じく朝採れなどと言いますが、冒頭にも書いたように筍は空気に触れ光にあたると硬くなります。これは掘る前、地中に埋もれている時も実は同じ。土の表面から緑の小さな芽をチョン、と出し始めたところを掘り起こすほうが柔らかい。だから多くの筍農家は「朝掘り」、朝収穫をするわけです。

京都では、多くの筍農家さんは陽がまだ昇らないうちから竹林に入ります。薄暗いなかでチョンと出た芽を見つけ、土の中でどういう状態かわからない筍を傷つけないよう周囲から掘り進め収穫します。これはまさに経験を重ねてこその職人技。とても神経を遣う作業だそうです。


ECサイト編

さて話を戻して、次はECサイトで筍を購入する時の見分けかたです。
サイト数が多く、どのサイトでどの筍を買うかものすごく迷いませんか?
実物を見て買うより不安。何を基準に決めればいいかわからなくなり結局買うの諦める、よくあるパターンですね。


ではどこを見ればいい?

●●●外せないのは竹林の画像
生産者も気になるところですが、何より大事なのはやはり土壌。
これは筍に限らずですね。私は農家でもなく専門的な勉強や経験をしたわけではありませんが、仕事の関係で多少の知識と味の違いを実感しています。
美味しい野菜が育つ土壌は見てわかるほど土壌が違う!

京都市西京区大原野、大枝といった老舗料亭や日本料理店から長年愛されている筍農家さん達は、傘を広げて歩ける程度の間隔をあけて青々と伸びた竹と、雑草のない黄金色のフワフワな土壌の竹林をずっと維持されています。まんべんなく射し込む陽と適度な風、ほどよく空気と水分を含んだ赤土が美味しい筍を育ててくれるのだそうです。

京都では江戸時代あたりから筍の栽培がはじまったそうで、私がいろいろ教えていただいた農家さんも慶応年間(1865-1868)から続く筍農家。150年以上何代にも渡って受継がれてきた知識と技術が詰まっているから、京都の筍は老舗料亭などの料理長や著名な食通から認められ、愛されているのです。

雑草すらないフカフカで黄金色の土壌と青々とした竹が美しい


いつかなくなるかもしれない

そんな京都の筍も、多くの産業と同じように後継者がいない農家さんが多い現実。それだけでなくコロナとウクライナ危機の影響で、いろんなものの価格が高騰するとすれば、竹林の維持が難しくなるかもしれません。

土壌のいい竹林維持には体力だけでなく、かなりの費用がかかります。
多くの農家さんが山そのものを所有しているので、整備する竹林もかなり広大。しかも全てが平坦なではないので、軽トラックと小型のユンボを使って土や有機肥料を入れていきます。そのためのユンボのメンテナンス、ガソリン、土や肥料、他にも諸々上がってしまうと、経営はさらに厳しくなるかもしれない。

こんなに長く受継がれてきた知識と技術、先人が積みあげた知恵の結晶も、消費される機会が減れば途絶えていく。この知恵が、なるべく長く続くよう、一人でも多くの人に150年の価値と重み、えぐみがほぼない大原野たけの子の美味しさを、知ってほしいなと思います。

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